目次
第12章 藻類加工品 第6節 その他藻類加工品

冷凍生わかめ

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主原料

主生産地

保存方法

冷凍保存

キーワード

水酸化カルシウム/生ワカメ/アルカリ性/緑色保持/ワカメ加工品/早採りワカメ/間引きワカメ/真空包装/湯通し加熱

備考

Reito-nama-wakame/都道府県開発製品

冷凍生わかめとは

 冷凍生わかめは、アルカリ性で緑色色素(クロロフィル)を安定化させ、カルシウムの作用で食感を維持するという伝統的な灰干しワカメの製法を応用し、冷凍による長期保管を可能とした、岩手県水産技術センターの開発技術(水酸化カルシウム浸漬冷凍法)に基づく製品である。三陸地域の複数の民間企業に技術指導を行い、実際の生産現場の状況等を加味した製造マニュアルを当センターホームページで2005(平成17)年12月に公開した。食品業界からは風味と食感に優れているとの評価が得られており、民間企業の製造・販売開始から20年が経過しても業務用食材として利用されている。 
 養殖ロープに生育するワカメの密度の違いにより、収穫量や葉状体の形状は大きく影響を受けることから、岩手県では1~2月初旬頃に育成密度を調整するため、全長1m未満の生長の遅いものや形状の良くないワカメを間引く作業が行われる。この間引きワカメは、「早採りワカメ」や「新芽ワカメ」の名称で親しまれ、軽く湯通しすると茎も丸ごと食べられ、風味、食感、香りが良く、地元でしか味わうことのできない旬限定の人気食材となっている。
 一方、「早採りワカメ」は生のままポリ袋に入れた状態またはトレー包装された状態で冷蔵販売されることが多く、賞味期限は冷蔵で3~4日間程度と短く、湯通し後の色は鮮度の劣化とともに鮮やかで濃い緑色から次第に明るく淡い黄緑色部が混じるようになり、次第に風味も悪くなる。早採りワカメを原料とした湯通し塩蔵品、湯通し冷凍品、生冷凍品等が販売されているが、生原藻をそのまま真空包装して冷凍した製品は、湯通し加熱しても鮮やかな緑色にならず、黄褐色等の変色部が発生しやすいという品質上の問題点があるため生産量は伸びなかった。
 そこで、旬限定の人気食材である原藻サイズの小さい早採り(間引き)ワカメの有効活用や消費拡大を図るため、生ワカメを0.1%水酸化カルシウム添加海水(または3%食塩水)に浸漬して真空包装後に冷凍する『冷凍生わかめ』を開発した(2002(平成14)年1月)。半解凍後の湯通し加熱により鮮やかな緑色となり、湯通し塩蔵わかめやその二次加工品であるカットわかめと比べて風味と食感が良いため、三陸地域の複数の企業により商品化され、サラダ、加工米飯(おにぎり等)、麺類等の具材としての利用が定着化している。

主な生産地

 養殖が盛んな岩手県と宮城県の三陸地域が主体である。

生産の動向

 開発当初は三陸地域の民間企業の3社で生産されてきたが、東日本大震災以降は2社となり、令和元年以降は新たに参入した企業を含む2~3社程度で生産されている(当センターで把握している生産量のみ、図1)。業務用製品が主体であるため、スーパー等における店頭販売は行われていない。また、近年、漁業者の高齢化や後継者不足等の影響により養殖ワカメの生産量が減少していることと、さらに、近年の海水温の上昇等に伴うタレストリス(ワカメに寄生する小型甲殻類)の寄生痕(穴あき)やヒラハコケムシ(葉体表面に白いレース状の石灰質壁を形成して張り付く)等の異物の付着が増加しており、原料の確保が困難になってきていることから本冷凍生わかめの生産量も減少している。

図1 冷凍生わかめ(水酸化カルシウム浸漬冷凍法)の生産量の推移
 (出荷額:400円/kgとして生産量より推定)
(統計元:岩手県水産技術センター調べ)

原料選択のポイント

 加熱前の生ワカメは褐色であるが、加熱によりタンパク質と結合した赤色のフコキサンチンは黄色に変化し、クロロフィルの緑色が現れて、加熱後のワカメは鮮やかな緑色となる。しかし、クロロフィルの分解が生じると、半解凍後に湯通しを行っても鮮やかな緑色にならない。このため、原料のワカメは、生育、形状、身入り及び色調が良好で異物の付着がなく、原藻pHが6.0以上の鮮度の良いものを使用する。本冷凍技術は、全長1m未満の早採り(間引き)ワカメの活用を想定して開発したものであるが、民間企業では小~大サイズのワカメ(原藻pHが高い、前半~中盤の時期の中芯の太さが1~5cm程度の原藻)で本冷凍生わかめを製造している。漁期後半の特大サイズの原藻は、葉体が厚くて中芯が太く、原藻pHが6.0未満である場合が多く、製品の色調不良の発生リスクが高くなるため、本冷凍生わかめの原料には使用されていない。また、冷水の長期接岸(5℃以下の状態が2~3週間以上継続した場合など)の影響を受けて生育不良の発生したワカメの原藻pHも6.0未満である場合が多く、色調不良の発生リスクが高いため、本製品の原料には適していない。

加工技術

 0.1%の水酸化カルシウムを添加したろ過(殺菌)海水はpH11程度のアルカリ性を示してクロロフィルを安定化させ、さらに、藻体中のアルギン酸とカルシウムは結合して不溶性のアルギン酸が生じるので、藻体組織を安定化させて食感を保持すると考えられる。
 冷凍生わかめの加工技術は、生ワカメを脱水後に草木灰をまぶして数日間天日干しした伝統的な灰干しわかめの加工技術を応用したものである。灰干しわかめでは、草木灰中のカルシウムの作用で藻体組織を安定化させて、常温で約1年間保存しても鮮緑色を保持しながら良好な弾力性と歯切れの良い物性を示し、加えて、草木灰中のアルカリ成分により藻体中のアルギン酸リアーゼ(分解酵素)が不活性化するので、保存中の藻体組織の軟化を防止することが報告されている。
 水酸化カルシウムは食品の製造又は加工上必要不可欠な場合(製造用剤)や栄養目的(強化剤)のみに使用できる食品添加物であり、最大使用濃度はカルシウム濃度として1%と規定されている。アルカリ成分によるクロロフィルの安定化及びアルギン酸リアーゼ(分解酵素)の不活化、カルシウムとアルギン酸の結合による藻体組織の保持(軟化防止)という3つの作用が本冷凍生わかめの製造上で必要不可欠である。また、真空包装を行うことで、冷凍保管中のクロロフィル等の藻体成分の酸化を防止していると考えられる。

製造工程の概略

加工の実際

  • 原料 収穫後の原藻は新鮮なうちになるべく早く加工する必要があり、採取した原藻は直射日光に当てないことと、温度を低く保つように注意する(写真1)

  • 切除 原藻から先端の先枯れ(末枯れ)部・元茎・胞子様(メカブ)・加工に適さない部分・異物等を切除する。

  • 洗浄 原藻を殺菌海水や3%食塩水で洗浄し、藻体に付着しているヨコエビ・ワレカラ類等の異物を除去する。

  • 浸漬処理 0.1%の水酸化カルシウムを添加した殺菌海水または3%食塩水に洗浄したワカメを10~30分間程度浸漬する(写真2)。水酸化カルシウムは海水や3%食塩水には完全に溶解しないことから、なるべく均一に処理するため、浸漬中はワカメや浸漬液の攪拌を適宜行う。
    浸漬時間は、原藻サイズや形状、葉体の厚さ、浸漬液と原藻投入量の比率等を考慮して決定する必要がある。例えば、早採りワカメの浸漬時間が8~15分間程度だとすると、中~大サイズの原藻では18~30分間程度と長く設定するが、1時間以上の長時間の浸漬処理を行うと葉体が著しく硬くなるので、注意が必要である。
    また、高品質な製品を製造するためには浸漬液と原藻投入量との比率も重要である。例えば、5~10:1(浸漬液の重量:ワカメの重量)で2回の早採りワカメの浸漬処理を行うと、浸漬液のpHは11から9程度に低下する。この場合、2回目に加工したワカメにアルカリ成分が十分に浸透しておらず、湯通し後の色調が悪くなる可能性もある。ゆえに、浸漬液は毎回新しく交換するのが良い(この場合には浸漬液のpH管理は不要)。ただし、どうしても浸漬液を2回程度使用したい場合には、20~30(浸漬液):1(ワカメ)程度と余裕を持たせて設定し、pH試験紙等を用いて浸漬液の状態を管理しながら製造する必要がある。

  • 計量・袋詰め 浸漬液から引き上げた後、速やかに透明のプラスチックフィルムの包装容器(平袋)に詰めて計量・袋詰めを行う(写真3)。浸漬液の効果を保持するため、完全に水切りせずに迅速に容器に詰める必要がある。そのためワカメをトレーに乗せた状態で包装容器に詰める場合もある。

  • 真空包装 軽量・袋詰め後は速やかに真空包装する(写真4)。真空包装するまでに時間を要する場合には、袋詰めしたワカメは低温(0~5℃程度)で一時保管する必要がある。

  • 冷凍 真空包装後のワカメは薄く広く伸ばしてからトンネルフリーザーや冷凍庫等で冷凍する(写真5)。ワカメを詰めすぎると包装容器は厚くなり、冷凍・解凍処理に時間を要する。その間にクロロフィルの酸化が進行して湯通し後の色調が悪くなるため、包装後の厚さは5cm以下(好ましくは3cm以下)が望ましい。トンネルフリーザー等による急速凍結は必ずしも必要としないが、冷凍庫内で凍結する場合には-30℃以下が望ましい。

  • 製品(保管) 冷凍生わかめ(製品、写真6)は、クロロフィルの酸化を抑制するため暗室で-20℃以下(好ましくは-30℃以下)で保管する。-20℃では0.5~1年間程度、-30℃以下では1~2年間程度(-45℃では2年間程度)の品質保持が可能である。

加工に用いる機器等

 台秤、真空包装機、トンネルフリーザー、冷凍保管庫 等

品質管理のポイント

 冷凍生わかめを半解凍後に湯通し加熱しても鮮やかな緑色にならない場合には、原藻の品質、加工工程、包装、保管温度等の何れかに管理ミスがあったと考えられる。最も重要なのは生ワカメの鮮度と加工前の取扱いである。鮮度の悪い生ワカメでは、既に藻体は酸性化してクロロフィルの分解が進行しているので、原料には鮮度が良好な原藻を用いる必要がある。また、加工前の原藻の低温管理(0~5℃程度)や日光照射の防止など、取扱いには注意を要する。
 また、一度に500kgのワカメの水酸化カルシウム浸漬処理を行った際、その後のワカメの計量・袋詰めが完了するまでに1時間以上を要した結果、浸漬液が抜けすぎてアルカリ成分の影響力が低下し、漁期の中盤以降に製造された製品の色調不良が認められた。よって、品質の良い冷凍生わかめを製造するには、浸漬液を完全に水切りせずに迅速に容器に詰めて真空包装することが重要であり、浸漬処理は100~200kgに小分けして迅速に加工するのが良い。
 このように冷凍生わかめの製法は簡易かつ単純であるが、製造には細かい管理が必要で難しい面もあるため、試作段階で失敗して販売まで至らない事例も認められた。数年間かけて試作・開発を行った水産加工業者のみが現在でも製造を継続している。

安全衛生管理のポイント

 本製品は半解凍後に加熱(湯通し)工程があるものの、ヨコエビ・ワレカラ類等の異物が混入すると甲殻類アレルギーを引き起こす可能性があるため、洗浄・浸漬段階で異物を除去することが必要である。

特徴的な成分

 灰干しわかめは、草木灰中のカルシウムやマグネシウムと藻体中のアルギン酸との結合により、素干しわかめよりも良好な弾力性と歯切れの良い物性を示すことが報告されている。また、湯通し塩蔵わかめ(塩抜き後)を5%乳酸カルシウム溶液に1~5時間浸漬すると破断強度が増加することが報告されており、冷凍生わかめの食感もカルシウムの影響を受けていると考えられる。ゆえに、原藻サイズの小さい早採りワカメを用いた冷凍生わかめの破断強度は、中国産湯通し塩蔵わかめ(塩抜き後)よりも高く、岩手産の湯通し塩蔵わかめ(塩抜き品)とほぼ同等であるため、独特のシャキシャキとした食感が楽しめる(図2左)
 表1には湯通し後の冷凍生わかめ(葉)・生ワカメ(葉)・湯通しわかめ・各種わかめ加工品(葉、水戻し後または塩抜き後)の遊離アミノ酸総量を示したが、冷凍生わかめ(湯通し後)の遊離アミノ酸は茎に多く残存しており、湯通し塩蔵わかめ(塩抜き後)やカットわかめ(水戻し後)よりも風味が良いとの食品業界の評価を裏付けるものである(表1)。また、カルシウム量は湯通し塩蔵わかめ(塩抜き後)よりも多い傾向が認められた(図2右)

図2 冷凍生わかめ(葉)の破断強度(左)およびミネラル含量(右)
表1 冷凍生わかめ及び各種わかめ(生、湯通し後、加工品)の遊離アミノ酸総量

製品の形態

 販売当初は早採りワカメの300g入りの民間企業の試作品(写真7)も見られたが、実際に販売されたのは1~2kg入りの業務用製品(写真5~6)が主流となっている。

写真7 企業の試作品(300g、トレー入り)
(撮影:岩手県水産技術センター)

包装および保管方法

 2年間程度の冷凍保管が行われる場合があるため、ガスバリア性の高いプラスチックフィルムを多層に合わせた袋状の容器を使用する。また、薄く広げた状態で凍結するため、包装容器(平袋等)はゆとりのあるサイズを使用する。解凍中の品質劣化を防止するため、製品重量は0.2~2kg程度と少ない方が良い。
 さらに、藻体中の内在性酵素や光照射等の影響により、凍結状態でもクロロフィルの酸化が徐々に進行する可能性があるため、製品の保管時には段ボール箱に梱包して暗室下で保管する。なお、製品を出荷前に完全解凍や半解凍状態にすると(小分け再包装を含む)、再凍結後の製品では加熱後に鮮やかな緑色にはならないので取扱いには注意が必要である。

調理方法および食べ方

 開封せずに包装容器のままで短時間の流水解凍を行うのが基本である(写真8~9)。200~300g程度の製品では薄く平らな状態で冷凍されているので3~5分間程度で半解凍状態となる。1~2kgの業務用製品を解凍する場合でも緩慢解凍は好ましくなく、流水中で迅速に半解凍状態にする必要がある。さらに、湯に浸漬する急速解凍や1時間以上の緩慢解凍、あるいは完全解凍後に長時間放置すると、クロロフィルの酸化が進行して、加熱後に鮮やかな緑色にならないので注意が必要である。
 鮮やかな緑色を発現するには加熱処理時にも注意点がある。多めの沸騰水中に、容器から取り出した半解凍状態のワカメを一気に投入し、素早く攪拌しながら30~60秒間(原藻の大きさにより加減する)の湯通し加熱を行う(写真10)。その後、直ぐに流水(または冷水)中で攪拌しながら十分に冷却する(写真11)。加熱しすぎるとクロロフィルの分解が進行して緑色が弱くなる。また、しゃぶしゃぶのように湯通し加熱を行って直ぐにタレ等を付けて食べる場合には、半解凍状態の冷凍生わかめを氷や保冷剤の上に乗せて提供することも有効である。本冷凍生わかめ(写真12)は緑色が鮮やかで風味が良く、カルシウムの作用で食感が良くて軟化しにくいため、サラダ(写真13)、加工米飯(おにぎり等)、麺類等の業務用の具材としての利用が定着している。

写真12 冷凍生わかめ(水切り後)
(撮影:岩手県水産技術センター)
写真13 冷凍生わかめを用いたサラダ(開発当初の試験販売品)
(撮影:岩手県水産技術センター)

同類製品例

 冷凍わかめの主要な製品は、生の状態でそのまま冷凍した製品(生冷凍品)、湯通し加熱・冷却後に急速凍結した製品(湯通し冷凍品)および湯通し塩蔵わかめを塩抜き(水戻し)後に冷凍した製品(塩抜き冷凍品)が見られる。色調を良好に保持するため、0.4%程度の炭酸水素ナトリウムを海水に添加してアルカリ性の状態で湯通し加熱を行った湯通し冷凍わかめ製品も販売されている。

参考文献

・Sato,S.et al. Physical properties of“Narutowakame”and its alginate and metal content. Nippon Suisan Gakkaishi 1976; 42(3):337-341.
・渡辺忠美他.灰干しおよび素干しワカメにおけるアルギン酸リアーゼ活性の比較研究.日本水産学会誌1982; 48(2):237-241.
・渡辺忠美他.灰干し処理による藻体軟化防止に関連したワカメアルギン酸リアーゼの酵素的研究.日本水産学会誌1982; 48(2):243-249.
・佐藤純一.「改訂3版わかめ入門」日本食糧新聞社.2015.
・小野寺宗仲.ワカメの加工技術および新しい食品の開発.「地域特産海藻類を用いた高付加価値化技術の開発(総括報告書)」水産庁・独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所.2003;15-29.
・小野寺宗仲.冷凍生ワカメの開発と商品化について.冷凍2010; 85(11):53-59.
・小野寺宗仲.冷凍生ワカメの開発および業務用食材としての定着化.水研研究成果情報(国立研究開発法人水産研究・教育機構).2023.
・小野寺宗仲.「冷凍生ワカメの開発と商品化について(製法マニュアル)」.岩手県水産技術センター.2005.
・厚生労働省.第10版食品添加物公定書(F使用基準).2024.
・Munenaka O.et al. Changes in texture and dietary fiber of the brown alga Undaria Pinnatifida by various processing methods. Food Sci. Technol. Res., 2008; 14(1):89–94.
・野田尚敬他.湯通し冷凍ワカメの製造方法.特許公報(特許第4362312号)2009:1-7.

(著者:岩手県水産技術センター 小野寺 宗仲)


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