板わかめとは
板わかめは、ワカメを干し簀の上に板状に広げて乾燥させたもので、山陰地方ではなじみのある製品であり、島根県では「めのは」とも呼ばれている。一般的に、ワカメの乾燥品は水戻しして酢の物や味噌汁の具として用いられるが、板わかめは軽く火で焙り、パリッとした食感とほのかな磯の香りを楽しみながら賞味する。県内消費が大部分を占めるが、近県をはじめ、東京や大阪などの大消費地にも出荷されている。
(本文末尾のコラム「ワカメにまつわる歴史」もご参照ください。)
主な生産地
島根県、鳥取県など
生産の動向・消費の動向
島根県では、板わかめの原料の多くが養殖ワカメである。養殖ワカメの収穫量は、生産者の高齢化等による経営体数の減少と、海水温の上昇等の影響により年々減少している。ワカメ養殖は隠岐地域と島根半島沿岸で盛んに行なわれているが、県西部にはワカメ養殖が可能な静穏な海域がほとんどないことから、県西部における板わかめの原料となる藻体は天然物に限られる。
原料選択のポイント
原料となる藻体には、成長しすぎて硬くなったものや、末枯れ(葉先が枯れること)したものは、塩抜きがうまくいかないうえ、完成品の見た目が悪くなるので用いない。そのため、原料入手可能時期が養殖ワカメでは1~4月、天然ワカメでは2~5月頃に限られる。品質はワカメの成長に従って低下するので、成長途上の若いワカメが主体となる漁期の初めが最も良好といえる。
加工技術
収穫したワカメを、淡水を用いて塩抜きしたのち、干し簀に並べて天日もしくは乾燥機で乾燥し、裁断して成型、包装したものである。塩抜きの時間、乾燥時間、温度等により、製品の質が大きく変化する。
製造工程の概略

加工の実際
- 原藻 地元で養殖または採取され、成長しすぎて硬くなったり、末枯れしたりしていない、品質の良好な若い藻体を使用する。
- 選別 茎部および先端部などの傷みが見られる部分を包丁等で除去する。
- 淡水洗浄 完成品が塩辛くなりすぎないよう、十分に行う必要がある。ただし長時間漬け過ぎるとワカメが柔らかくなってしまい、品質が低下するので注意が必要である。淡水に浸漬する時間は個々人で異なる。目安として淡水への浸潰時間は 15~60分間、淡水の交換回数は1~3回、止水もしくは流水で行う。
- 脱水 一般的には洗濯機の脱水機能を用いて3~7分間程度脱水する。質の悪いワカメは脱水時にちぎれたり、傷んだりすることがある。
- 簀上張付け 完成品の乾燥状態が均一で、かつ隙間が少なくなるよう、まんべんなく簀上に並べる(写真1)。機械乾燥で用いられる簀はトリカルネット(プラスチック製のネット)等と角材を組み合わせて作ったものが主で、台車の上に何段かに積み上げた状態で乾燥機内に入れる(写真2)。天日乾燥ではカヤ製のものが用いられることが多い。
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- 乾燥 乾燥時間は、機械乾燥では50~60℃の温風で6時間程度、天日乾燥では晴天時で6~8時間を要する。乾燥歩留りは7~10%程度である。製品の乾燥状態を均質にするため、乾燥状況により台車の位置を入れ替えるなど工夫する(写真3)。
- 包装 乾燥完了後に板わかめを簀から剥がし(写真4)、商品サイズに包丁等で裁断したのち袋詰めする(写真5、写真6)。袋の内容量は10~100gと商品の種類に応じて様々である。
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加工に用いる機器等
乾燥機の燃料には灯油やガスが用いられる。乾燥室部分は木製の手作りで、各生産者が使いやすいよう、各所に工夫がなされている。
品質管理のポイント
島根県では、「しまねふるさと食品認証制度(通称Eマーク)」を制定しており、板わかめが認証食品に認証されている。認証基準は以下のとおりである。
品質: 香味、色沢および食感が良好で夾雑物がなく、かつ異味異臭がないこと。形状が良好で、著しい欠損、損傷がないこと。
使用原材料: 使用するワカメは、島根沿岸で採取または養殖したものであること。ただし、養殖したものについては、種苗が国産であること。食品添加物は使用しないこと。
製造方法等: 洗浄に使用する水は、飲用に適したものであること。
容器または包装形態: 防湿性および十分な強度を有する包装資材を用いて密封されていること。
特徴的な成分
乾燥重量当たりの塩分が10~15%程度と比較的高く、特に茎部に多く含まれる。葉部に含まれる塩分は茎部の半分程度である。湯通しや加熱をしていないため、生ワカメのビタミンやミネラルをほぼそのまま保有している。
製品の形態
商品サイズは30cm×20cm前後が主流で、一袋に数枚入れられている。近年の消費動向の変化で、土産用に内容量の少ないものや、ふりかけ状に加工した製品も見受けられる。
包装および保管方法
一般的には防湿フィルムやナイロン袋で包装する。品質保持のため、乾燥剤や脱酸素剤が封入されているものもある。
調理方法および食べ方
食べやすい大きさにちぎってそのままお茶請けや酒の肴としたり、手でもんで温かいご飯にふりかける。また、遠火で軽く焙り、パリッとした食感とほのかな磯の香りを楽しむ。酢の物にして、他のものと和えてもおいしい。
コラム
「ワカメにまつわる歴史」
島根半島の最西端、日御碕の海岸で、ワカメ漁の解禁に先立って行われる伝統行事に和布刈神事がある。この神事は、成務天皇の6年(西暦136年)正月5日の早朝、一羽のウミネコがワカメをついばんで日御碕神社の欄干に掛けること三度に及んだので、社人がこれを神膳に供え奉ったという故事にちなんだものである。島根県において、ワカメがずっと以前から重要な産品であったことを示す勇壮な行事で、日御碕神社での祈祷の後、宮司は、宇竜港から海を渡って権現島にある末社で神事(ワカメ刈りと神供)を行う。ワカメ刈りが神事になっているのは全国でもここ島根県と北九州くらいである。
(著者:島根県水産技術センター 吉村 真理、清川 智之)
