あかもく加工品(ぎばさ)とは
アカモクは日本沿岸の浅海に広く分布する、体長3~5mにまで達する雌雄異株のホンダワラ科の一年生褐藻である。秋田県では最も好まれている海藻でギバサと呼ばれ、ボイル・裁断加工のみをして味付けしていないものが冷凍/冷蔵品として通年販売されているが、旬の時期にスーパー等に並ぶ原藻を湯通しして包丁でたたき(細かく刻み)、粘らせたものを醤油等で味付けして食す一般家庭もある。麺に練り込んだ冷やし麺や佃煮等の二次加工品もある。また、乾燥させた常温流通品もあるが、乾燥前のものに比べ粘りが弱くなる。なお、ギバサとよく似た名称のジバサと呼ばれる海藻があるが、これはホンダワラの地方名である。アカモク(ギバサ)とは異なり、粘りは少なく、磯の香りと食感を愉しむホンダワラ(ジバサ)は秋田県では資源量が少なく、食利用も一部地域に限られており、アカモクに比べると高価である。
アカモクを始めホンダワラ科の海藻を中心とした藻場は、水中に緻密な藪状の茂みを形成することから、魚の産卵場所や稚仔魚の生育場所としての役割を果たしているが、近年では地球温暖化の原因となっている大気中の二酸化炭素を吸収し、海中に隔離・貯蔵するブルーカーボン生態系としての役割も大いに期待されている。
ここでは、湯通ししたアカモクを刻んで粘りを出し、そのまま食せるようパック詰めした製品について紹介する。
主な生産地
古くから食用としていたのは秋田県から島根県までの日本海沿岸の地域であったが、数年前からはテレビや新聞等でアカモクの健康機能が取り上げられるようになり、太平洋沿岸を始め全国各地で収穫、製造されている。
生産の動向・消費の動向
近秋田県内ではよく粘ることが品質の最重要点であるが、近年食すようになった地域では粘りよりも食感を重視するようである。資源量は減少傾向にあるため、養殖や増殖に取り組むところが増えてきており、秋田県ではアカモクが生える岩盤を清掃することでアカモク漁場造成を目指している。
原料選択のポイント
よく粘るあかもく加工品(写真1)をつくるには、アルギン酸、フコイダン等の粘性の酸性多糖類の含有量が多い時期のアカモク(写真2)を選択することが重要である。枝葉先端部にあり、枝茎よりやや褐色が濃く太い生殖器床が形成される繁殖期の少し前がよく粘るとされる。繁殖期は、島根県沿岸を2月頃から北上し、能登や佐渡では2~3月頃、秋田では5月頃である。
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(提供:戸松 誠)
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(提供:戸松 誠)
加工技術
熱湯をかけて細かく刻むことで、粘質多糖類が抽出され、よく粘るものができる。さらに褐色から鮮やかな緑色へ変化する。褐藻類は、光合成色素としてクロロフィル(緑色)とフコキサンチン(橙黄色)をもつが、後者はタンパク質と結合して赤色になっているので、両者が混じって褐色に見える。加熱によって、タンパク質がフコキサンチンから離れて本来の橙黄色となる一方、クロロフィルは色の変化を受けないので、緑色が勝って、緑色に変わる。産地や時期によって加熱後の緑色の程度が異なるので、緑色を出すため着色料を使用する事業者もいるが、事業者独自に原料をブレンドすることで解決している場合も多い。湯通しはまた、製品の保存性をよくするための、ブランチング(自己消化酵素の働きを止める)をも兼ねるほか、ヒ素の除去にも効果的との報告がある。
製造工程の概略

加工の実際
- 原料 メーカーの地元産原料を使用する場合が多いが、不足する場合は他県産あるいは韓国等海外産等を使用する例もある。
- 原料洗浄 水中で冷凍ブロックを解凍する。その際、小魚、エビ、カニ等が混ざっていないか目視で確認し、それらの除去を十分に行う。
- 茎の除去 多くは茎も含めて使用するが、事業者によっては、硬い茎から葉や気泡、生殖器床を手でしごき落として集めて使用することがある。
- 湯通し 85℃以上の熱水に、20~60秒浸漬するが、投入した時点で80℃以下にならないように注意する。色良く仕上げるために、塩水を用いる場合もある。
- 冷却 煮過ぎの状態にならないように、冷却槽で攪拌しながら、短時間で冷却水の温度まで冷やす。
- 水切り 水切りかごに入れて、付着した水分をできるだけ除去する。
- 裁断 ミキサーで3~5㎜程度に刻む。
- 充填包装 計量充填機にて計量充填し包装する。
- 検査 金属探知機等にて異物等を検査する。
加工に用いる機器等
湯通しする釜、冷却槽、ミキサー、計量充填機、金属探知機
品質管理のポイント
着色料無添加製品は、製造直後の緑色が徐々に退色し褐色になっていくので、暗所での保存が良い。小売店での販売時もできるだけ光の当たらない条件が望ましい。保存料は入っていないので、解凍後のものや冷蔵流通品は、賞味期限一週間程度である。
健康機能性成分
動物実験では、アカモク成分の骨粗鬆症作用、および高血糖症等の糖尿病態改善作用等が報告されている。また、硫酸化多糖の「フコイダン」が、コレステロール値を下げる、腸管の免疫細胞を活性化させる、インフルエンザ感染を予防するなどの研究例がある。また、赤い色素「フコキサンチン」は、抗酸化作用や肥満抑制の効果が研究されており、ワカメやコンブの数倍の含有量があるとの報告がある。
また、あかもく加工品にはビタミンKが他の海藻加工品等と同程度以上含まれている(表1)。
(水産物に含まれる各種成分の効能については、「この図鑑の使い方」末尾の【参考情報】をご参照ください)

製品の形態・包装及び保管方法
小売向けには、200g入りのパウチ包装で冷凍、または80~100gをトレーに入れラップ包装して冷蔵で販売しているものが多い。タレを添付する製品もある。
調理方法および食べ方
醤油、酢醤油、生姜醤油、めんつゆ等で和えて、温かいご飯とともに食べるのが一般的である。味噌汁やラーメン、そば、うどんのトッピングにしたり、オクラや納豆など他の粘るものと混ぜたり、天ぷらにするのもお薦めである。卵と混ぜて焼くと、ふんわり卵焼きを作ることができる。
(著者:秋田県総合食品研究センター 戸松 誠)
