目次
第11章 節類 第3節 その他節類

さけ節

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主原料

主生産地

保存方法

常温保存

キーワード

シロザケ/鮭節/さけ節/北海道/ブナザケ/アキサケ

備考

Sake-bushi/伝統的加工品

さけ節とは

 さけ節とは、主にシロザケ(標準和名サケ)を原料として製造される節類加工食品であり、鰹節の製法を応用して作られる天然だし素材である。北海道では秋に産卵のために河川に遡上するシロザケ(アキサケとも呼ばれる)を利用した地域特産加工品として定着しており、現在では削り節、粉末だし、ふりかけ、ラーメンスープ、加工調味料などに幅広く利用されている。特に北海道では、「オール北海道産のだし素材」を実現する重要な食品素材として注目されている。

主な生産地

 さけ節は北海道内の数カ所で製造している。

生産の動向

 北海道におけるサケ生産量は10~20万トン程度であったが、2003年以降急激に減少し、2024年では5万トン以下となっている(北海道水産現勢(1975~2024))。このため、近年では原料となる採卵後のサケの確保が困難になってきており、さけ節の生産も減少傾向である。

原料選択のポイント

 一般的に節類は油分が多いと出し汁が濁り、生臭くなることから、原料の油分は少ない方が最終製品の品質が良いとされる。北海道では産卵のために河川に遡上したサケが水揚げされるが、産卵期が近づくと筋肉中の油分が卵巣や精巣へ移行し、筋肉の油分が減少するとともに、表皮に色素が移行して外観が赤っぽい色調(「婚姻色」と呼ばれる)を呈するようになる。このようなサケは「ブナサケ」と呼ばれ、一般的には食味が低下し鮮魚としての商品価値は低いが、節類加工では油分が少ない原料の方が酸化しにくく保存性に優れるため、むしろ加工に適している。このため、原料は河川に遡上したブナサケだけでなく、沿岸の定置網で漁獲されたサケ(多くは未成熟)のうち、成熟し婚姻色が強く発現したブナサケを選別して用いる場合もある。
 (「ブナザケ」については、「第9章 第1節 ぶなざけ魚醤油」もご参照ください)

加工技術

 原料のサケを三枚おろしにした後、煮熟を行い、タンパク質を凝固させることで腐敗防止や身崩れ防止を図る。次に、「焙乾」と呼ばれる燻煙乾燥工程を行う。これは薪やチップの煙で燻しながら乾燥させる工程であり、水分除去とともに独特の燻香を形成する。焙乾と休止工程を繰り返す「あんじょう」によって、内部まで均一に乾燥した硬質な節となる。さけ節は大部分が荒節であり、カビ付けは行っていない。

製造工程の概略

加工の実際

  • 原料 主に、河川に遡上したサケを捕獲する孵化放流事業で発生する採卵後のブナザケを原料として用いる。原料は、油分の少ない原料が適しているため、河川に遡上したサケだけでなく、沿岸の定置網で漁獲されたサケ(多くは未成熟)のうち、成熟し婚姻色が強く発現したサケを選別して用いる場合もある。内臓除去後は凍結保存を行う。(写真1)

  • 解凍・前処理 凍結原料を一晩かけて流水解凍する。解凍後は5枚におろし、かごに並べる。(写真2,3,4
写真1 原料に用いるシロザケ(撮影:阿部茂)
写真2 原料の流水解凍(撮影:阿部茂)
写真3 原料の生切り(撮影:阿部茂)
写真4 籠立て(撮影:阿部茂)

  • 煮熟 ボイル槽の温度を調節しながら十分に加熱処理を行う。熱水に直接投入すると身割れが起こることから、ボイル槽の温度は段階的に上昇させる必要がある。(写真5)

  • 放冷 ボイル後は放冷して室温まで冷却する。放冷後は焙乾用のラックに移動する。(写真6,7)

  • 水抜き焙乾(1回目) 複数の籠を入れたラックをスモーク庫に移動し、水抜き焙乾を行う。スモークジェネレーター(燻煙発生機)から発生した煙をスモーク庫に導入し、焙乾工程を行う。スモークチップにはサクラを用いる。焙乾後はスモーク庫内で一晩あん蒸工程を行う。あん蒸工程とは焙乾処理により表面が乾燥し、乾燥効率が悪くなるため、時間をおくことで内部の水分を表面に移行させて乾燥しやすくする工程である。(写真8)

写真5 煮熟工程(撮影:阿部茂)
写真6 焙乾庫(撮影:阿部茂)
写真7 放冷後(撮影:阿部茂)
写真8 水抜き焙乾後(1回目)(撮影:阿部茂)

  • 焙乾(2~5回目) 焙乾の繰り返しにより水分が減少して内部の水分が抜けづらくなるため、焙乾回数を重ねるごとに温度を低下させ、焙乾時間を長くし、あん蒸時間を長くする。製造期間は3週間~1ヶ月を要する。さけ節は荒節で完成であり、本枯節となるカビ付けは行わない。(写真9,10

写真9 3番火後(撮影:阿部茂)
写真10 5番火後(撮影:阿部茂)

  • 出荷 完成した製品はダンボールに箱詰めされて出荷される他、削り節に加工され、窒素充填を行った密封袋で出荷される。(写真11)

写真11 さけ節製品(撮影:阿部茂)

加工に用いる機器等

 ボイル槽、焙乾庫、切削機

品質管理のポイント

・油分の少ない原料を用いる。油分が多いと酸化に係る品質劣化を引き起こし、出し汁が濁る、生臭くなるなどの問題が起こる。また、削ったときに粉になりやすく歩留まりが低下する。
・採卵後のサケはジェリーミート(筋肉がタンパク質分解酵素により自己消化しゼリー状になる)になる個体も見られ、節に加工することが困難な原料もあるので、過度に成熟した原料を避けるなど、原料選別は重要である。
・カビが発生する可能性や油分の酸化が起こる可能性があるので、密封時は窒素充填や脱酸素剤を使用した方が良い。

製品の形態 包装等

・節の形で消費者の手元にわたることはほとんどない。基本的に削り節原料として業者に送るため、10㎏程度の箱に詰めて出荷されるか、500gの業務用削り節として出荷される。
・小売り用では30gの削り節や細削りが市販されている。
・鮭節を用いた製品には醤油、珍味、ふりかけ、おかき、納豆、ラーメン、そば等がある。

調理方法および食べ方

 削り節の形で流通され、鰹節の削り節と同様に用いられることが多い。(写真12,13)
 甘みやうま味が強いため、卵製品や大豆製品との相性が良いといわれている。(写真14)

写真12 さけ節ロール(撮影:阿部茂)
写真13 さけ節ふりかけ(撮影:阿部茂)
写真14 さけ節だし巻き卵(撮影:阿部茂)

(著者:酪農学園大学農食環境学群 阿部 茂)


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