目次
第7章 水産漬け物 第5節 酢漬け

しらえび酢漬け

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主原料

主生産地

保存方法

冷凍保存

キーワード

浅炊き/深炊き/シロエビ/ベッコウエビ/一艘かけまわし漁法/脱殻

備考

Shiraebi-suzuke/伝統的加工品

しらえび酢漬けとは

 富山湾で漁獲されたシラエビを塩茄でし、酢を主体とした調味液に漬け込んだものである。
(本文末のコラム「シラエビ脱殻装置の開発によるむき身の普及」もご参照ください。)

主な生産地

  富山県

生産の動向・消費の動向

 シラエビは富山県を代表する水産物の一つで、ブリやホタルイカとともに「富山のさかな」にも選定されている。体長6~7cmで生きている時は、体が透明(写真1)で、その美しい姿から富山湾の宝石とも言われ、地元ではシロエビ、ベッコウエビとの呼び名もある。年間の平均水揚げ量(過去10年)は517tである(図1)。水揚げされたシラエビの大半は加工用に利用される。加工用の製品内訳は、50%以上がむき身であり、刺身、昆布締め、寿司ねた等の生食用として利用され、その他が、酢漬け、素干し、釜揚げなどである。
 2024年1月1日に能登半島地震が発災し、その後、シラエビの漁獲量が激減した。その原因としては、地震による富山湾の海底地すべり等が発生したことにより、シラエビの生息環境を悪化させ、その分布等に影響を及ぼしたことが考えられている。現在、漁獲量は徐々に回復傾向にあるが、今後の動向が注視されている。

写真1 透き通るシラエビ (富山県水産研究所提供)
図1 富山県沿岸におけるシラエビの漁獲量(資料:富山県水産情報システム)

原料選択のポイント

 シラエビ漁を専業とした漁業は富山湾のみで行われている。富山湾のシラエビは、富山県沿岸(距岸数キロ程度)の海底谷が存在する河口周辺海域で漁獲される。漁期は4~11月であり、10t程度の小型漁船により底曳網に似た中層用の網を使用した一艘かけまわし漁法(写真2~5)により1日数回の操業が行われるが、漁獲物の鮮度を保つため、漁獲毎に帰港して水揚げ(写真6)され、選別(写真7,8)後に競り(写真9)にかけられる。シラエビは鮮度低下が速く、黒変を生じやすい。このため水揚げから数時間以内の鮮度の良いものが用いられる。

写真2 一艘かけまわし漁法 (富山県水産研究所提供)
写真3 投網の様子 (富山県水産研究所提供)
写真4 揚網の様子 (富山県水産研究所提供)
写真5 シラエビの漁獲 (富山県水産研究所提供)
写真6 シラエビの水揚げ (富山県水産研究所提供)
写真7 シラエビの選別 (富山県水産研究所提供)
写真8 選別後のシラエビ (富山県水産研究所提供)
写真9 シラエビの競り(富山県水産研究所提供)

加工技術

 塩茄で(煮熟)を短時間(2分程度)とすることにより、シラエビ独特の風味を残している。さらに甘酢とうま味調味料を主体とした調味液に漬け込むことで、調味材料に含まれるうま味成分等を浸透・付与している。

製造工程の概略

加工の実際

  • 原料 水揚げ・選別後(写真7,8)、真水氷を入れた冷海水に漬け、数時間以内に加工場に搬送し、直ちに煮熟工程に入る。煮熟(釜揚げ)したシラエビを冷凍したものを原料として使用する場合もある。

  • 煮熟 煮熟は、3%食塩水で2分間程度行う。

  • 酢漬け 酢漬け調味液は酢、水、砂糖、トレハロース、有機酸等を混合し、シラエビ:調味液=1:1~2の割合で1~3日間漬け込み、調味液の味を浸透させる。

  • 調味液切り 漬け込みに用いた調味液は懸濁するため液切りを行う。その後、凍結保存(-35℃)する場合もある。

  • 調味液添加 瓶または袋詰めにし、清浄な酢漬け調味液をシラエビが浸る程度(シラエビ:調味液=1:1)に加え、24時間程度漬け込み出荷する。

  • 製品 基本的にシラエビを丸ごと使うため歩留まりはほぼ100%である。

加工に用いる機器等

 茹で釜

品質管理のポイント

 茄で(煮熟)時間により浅炊き(1~2分)、深炊き(5~10分)がある。浅炊きはすぐに酢漬けを行うか、または冷凍しないと黒変を起こす。深炊きは十分な加熱により酵素が失活し、黒変が抑制されることから、処理する量が多い場合は深炊きを行う。また、深炊きは、燻製品(浜焼き)や、鼈甲べっこうえび(釜揚げしたシラエビを着色し乾燥したもの)の加工原料になる。浅炊き、深炊き共に冷凍期間が長引くと表面が乾き、冷凍焼けによる異臭が発生する。

包装および保管方法

  ポリエチレン/ナイロンの複合包材(熱密封性、防湿性と、酸素バリヤー性、強度を確保)に入れた後に入れた後、真空包装する場合が多い(写真10)。冷蔵(賞味期限50日程度)叉は冷凍(消費期限半年から1年程度)で保存する。

写真10 しらえび酢漬け (㈱あいば食品提供)

調理方法および食べ方

 お酒のおつまみとして、そのまま食べる(写真11)。また、サラダにトッピングしたり、クラッカーにのせたりして食べる。さらには、ご飯に混ぜるなど、多様な食べ方がある。野菜と混ぜて即席マリネや、ご飯と合わせて押し寿司にするなど、料理に活用することも可能である。

写真11 しらえび酢漬けの盛り付け例 (㈱あいば食品提供) 

コラム

「シラエビ脱殻装置の開発によるむき身の普及」 

 シラエビは体長6~7cmと小さく、脱殻(手剥き)に手間が掛かるため、むき身は、昭和50年代(~1984年)まで一部の鮮魚店でのみ販売されていた。しかし、昭和60年(1985年)頃に富山県水産試験場と富山県食品研究所が専用の脱殻装置を開発したことによりシラエビむき身の製造量は飛躍的に伸び、水揚げ量の半数近くがむき身として流通するようになった。
 この装置はオキアミの脱殻装置のロール間隔、角度、流水量等を改良したものである。しかし、脱殻装置を用いると、ローラーで殻から身を押し出すため、身が潰れて食感が悪くなることや、脱殻する際、水を流しながら身を押しだす時に、身が水を吸収し、その水分を切る工程でシラエビのうま味や甘みが抜けてしまう欠点もあった。
 その後、シラエビを一旦冷凍してから解凍すると、身と殻の収縮率の差で隙間ができ、殻が簡単に剥けることが明らかとなった。
 多くの関係者により脱殻方法の研究・開発・実用化が進められ、脱殻装置の開発は、むき身の普及に一役買ったが、現在の脱殻方法は、得られた製品の品質の良さから、ほとんどが上記の簡便化された手剥きによる方法で行われている。

(著者:富山県農林水産総合技術センター食品研究所 原田 恭行、同 水産研究所・小善 圭一)