焼鯛とは
マダイは古来から縁起物として神事等に用いられ、現在でも尾頭付きの焼鯛は、祝い事に欠かせない。タイを姿のまま塩焼きにした焼鯛は全国で生産されており、製法も全国ほぼ同じである。ここでは一例として、明石鯛として知られる兵庫県明石市における焼鯛を中心に紹介する。
これとは別に、特徴的な焼鯛として、香川県や岡山県、広島県、愛媛県等の「鯛の浜焼き」や愛媛県や長崎県、徳島県等の「鯛の塩釜焼き」がある。
(本文末尾のコラム(「鯛の浜焼きと塩釜焼き」)もご参照ください。)
主な生産地
焼鯛は、日本全国で製造されている。明石鯛を使用した焼鯛は兵庫県明石市で製造されている。
生産の動向
令和4年度、全国の養殖マダイの生産量は68,088t、天然のマダイの漁獲量は15,501tで、養殖マダイの生産量は天然マダイの漁獲量の約4倍であった。養殖マダイの主な生産地は愛媛県、熊本県、高知県で、天然マダイの主な漁獲地は兵庫県、長崎県、福岡県、愛媛県である。兵庫県の天然マダイ漁獲量は近年増加しており、令和4年は2,175tであった(図1)。
焼鯛の生産数量は資料がないので、全国的な生産動向は不明だが、兵庫県明石市では贈答品として宅配便等による地方発送もあることから安定している。年間では年末の出荷量が特に多い。

(漁業・養殖業生産統計)
原料選択のポイント
底びき網、一本釣り、延縄、定置網、刺し網などで9~12月に漁獲された日本近海のマダイが原料として適している。現在、焼鯛原料の主流は明石産のマダイであるが、注文に応じて国内産の天然マダイや養殖マダイを使用している(写真1)。
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(提供:魚秀)
使用する副原料
塩
加工技術
焙焼することで栄養成分を封じ込め、香ばしさを与える。加熱することでタンパク質の変性を起こし食べやすくする。また、加熱によって日持ちを良くするとともに、微生物危害を防ぐ。鰭には化粧塩をまぶし、形を整えるとともに焦げを防ぐよう工夫している。
製造工程の概略

加工の実際
- 原料 マダイは、明石産天然鯛か瀬戸内産養殖鯛の、体長約20cm~1m(最大)の成魚を使用する(写真1)。
- 鱗除去 電動うろこ取り機で鱗を除去する。紀州では体表の鱗を取らずに焼く場合もある。
- 鰓・内臓除去 包丁で鰓を取り、製品の裏側になる面の腹部に切れ目を入れて、内臓を除去する。
- 洗浄 魚体を洗浄する。
- 冷凍保管 急速凍結を行い、保管する。
- 解凍 水を張った樽で解凍する。
- 体表処理 焼いた際に表皮が膨れ上がらないように、体表に針状のもので細かい穴を開ける。体表に包丁で切れ目を入れる。製品の裏側になる胸鰭は切除する。
- 串剌し 製品の裏側となる面の眼球下部から金属串を刺し、魚体が波打つように尾柄部まで突き通す。串は焼き上げる時に魚体を安定させるため2本刺しておく(写真2)。
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(提供:兵庫県但馬水産技術センター)
- 鰓蓋の固定 焼いた際に鰓蓋が開かないよう、針金で固定する。
- 化粧塩 鰭の形を整えるとともに、焦げを防止するため、背鰭、尻鰭、胸鰭および腹鰭に化粧塩をまぶす。
- 焙焼 焙焼機(炭火式あるいは、遠赤外線ガスバーナー式)で片面ずつ焼く。焙焼時間は原料の大きさによって異なるが、片面約20分間である(写真3)。
- 送風冷却 扇風機などを用いて、室温で冷却してあら熱を取る(写真4)。
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(提供:兵庫県但馬水産技術センター)
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(提供:兵庫県但馬水産技術センター)
- 串抜き 製品が冷めたら金属串を抜く。
- 出荷 専用の紙箱に入れて出荷する。
加工に用いる機器等
電動うろこ取り機、冷凍庫、焙焼機(炭火式、遠赤外線ガスバーナー式) 等
品質管理のポイント
火加減が重要で表面は焦げないようにし、内部に火が通っているようにする。火が強いと焦げ、弱いと火が通らない。
包装および保管方法
専用の紙箱に入れて冷蔵保管する。
調理方法および食べ方
焼きたての製品はそのまま、冷えた場合はレンジなどで再加熱し、好みに応じて醤油などをかけて食べる(写真5)。身をほぐして、炊き込みご飯や鯛茶漬、鯛素麺に用いることもできる。頭部と骨は土鍋で炊いて出汁とし、白菜、豆腐、椎茸等を入れて鯛鍋にする。
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(提供:魚秀)
コラム
「鯛の浜焼きと塩釜焼き」
「鯛の浜焼き」は、基本は蒸し料理で、魚に塩をかぶせてそこに熱い塩水を注ぐという、調理器具を必要としない調理法が起源であり、昭和中期頃までこの調理法が広く行われてきたと考えられる。現在は郷土料理として、主に香川県、岡山県、広島県、愛媛県等で製造されている。調理法は地域によって多様化しているが、香川県の主な製法は、内臓を除去したタイに塩をまぶし、腹に鶏卵を入れ藁に包み、数時間蒸らすというものである。
「鯛の塩釜焼き」は、豊臣秀吉が朝鮮出兵のときに玄界灘のタイを塩で包んで焼き、母親に届けたのがルーツと言われている(所説あり)。当時は年貢にもなっていたほど高価であった塩をふんだんに使い、包み込んで蒸し焼きにすることで、冷凍技術がない時代でも腐敗を防ぎ、保存できる方法であった。
内臓を除去したタイを、卵白を混ぜ合わせた塩と湿らせた昆布で包んで蒸し焼きにすることで、昆布の旨みと塩味が入り、魚の旨みが一段とよく感じられる製品である。特に、愛媛県や長崎県、徳島県で製造されている鯛の塩釜焼は、伝統的な製法である。
参考文献
・農林水産省大臣官房統計部.海面漁業生産統計調査.「漁業・養殖業生産統計」(平成27年~令和4年)
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kaimen_gyosei/ (2024年10月30日参照)
・魚食普及推進センターハレの日には・・・鯛の塩竃焼き
https://osakana.suisankai.or.jp/shokuiku/7906 (2024年10月21日参照)
・文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会. 「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」.2020.
(著者:兵庫県立農林水産技術総合センター但馬水産技術センター 妹背 秀和)
(取材協力:魚秀)
