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第3章 調味加工品 調味加工品 総論

第3章 調味加工品総論

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はじめに

 調味加工品とは、魚介類や海藻類を濃厚な調味液に浸し漬けにしたもの、またはこれを煮たり、焙焼、乾燥させたりすることで、貯蔵性のある製品をつくる加工法でつくられたものである。調味液は主に醤油、砂糖、食塩等である。濃厚な調味液による脱水作用と、煮たり、焙焼、乾燥させたりすることによる水分活性の低下、あるいは、加熱殺菌等により貯蔵性を高めている。

 調味加工品の分類は各書物によって様々であるが、本図鑑では6つの節に分類した。表1に各節の特徴と掲載製品(予定を含む)を示す。

調味加工品の歴史

1.佃煮

 佃煮とは、水産物(小魚、小エビ、貝類、昆布など)や農産物(野菜など)を醤油、水飴、砂糖などの濃厚調味液の中で、長時間煮熟し、調味とともに保存性を高めた製品である。原料の種類、形態、混合物等によって製品は多種多様である。

 佃煮の発祥については諸説いろいろあるが、江戸時代に佃島(東京都中央区)の漁師が雑魚の塩煮を作り、保存食にしたのが始まりと言われている。その後、全国各地で特産品を使用した様々な佃煮が製造され、現在、水産佃煮、農産佃煮、混合佃煮、その他佃煮等多数の佃煮が製造されている。

2.焼き加工品

 旧石器時代に火を使用するようになり、魚を炙ったり、葉で包んで蒸し焼きにしたりしていた。縄文時代も同様に魚を「焼いたり」「炙ったり」して食していた。室町時代になって、魚の丸焼き・包焼・串焼き・杉焼き・壺焼き・浜焼き等が行われた。ウナギのかば焼きも作られたと記載がある。さらに、江戸時代に、煎物は、煎鯛・煎鯉・煎鳥等があった。焼き物にも焼き方(炮烙焼・ほうらくやき鋤焼すきやき・かすてら焼・慈姑焼くわいやき・蒲焼・土蔵焼・鉄砲焼・煎焼・油焼・塩焼等)が始まった。その後、時代に移り変わりとともに、調理道具や器具が変化し、焼き方も変化し続けた。

 明治時代以降、缶詰製造技術、レトルト食品の開発、冷蔵冷凍技術の発展等により、現在、焼き魚のレトルト食品、冷蔵品、冷凍品等が販売されている。

3.茹で加工品

 縄文時代に魚を調理方法は、火で「焼く」「炙る」に加えて,「茹でる」「煮る」が加わった。いつの時代においても「茹でる」「煮る」は調理の基本であった。

 平安時代から、それぞれの時代に、地域特産品の茹で加工品が存在したものと推定される。江戸時代には、煮物に駿河煮・鍋焼・柔らか煮・煮浸にびたし・従妹煮・かうらい煮・五菜煮・定家煮ていかに等が製造された。明治時代以降、茹で加工品は、缶詰・レトルト食品の開発、冷蔵・冷凍技術の発展に伴い、全国で流通するようになった。

 現在、カニ、タコ、イカ、エビ、貝むき身、しらす、いかなご、ホタテ貝柱等の茹でもの、あるいは蒸しものが、冷蔵及び冷凍で流通している。 

4.魚介味噌

  ひしおとよばれる発酵食品は、弥生時代に中国から伝わったと言われている。多湿の日本に合うように穀物や野菜、海草あるいは、魚、肉に塩を加え、それぞれ今でいう穀物から味噌、醤油が、野菜が漬物、魚からは塩辛やしょっつる(魚醤)の原型が作られた。め味噌は、鎌倉時代に中国に行った修行僧が持ち帰って作製した説が主説である。室町時代に入ると、急速に味噌が日本社会に広まったと言われている。江戸時代になると味噌はなくてはならない食品として庶民に浸透し、「自家製味噌」が一般的であった。

 魚介味噌は、味噌に魚を漬け込んで熟成させた嘗め味噌である。いつ頃から普及したかは不明であるが、鎌倉時代以降であると推定される。

 現在、鯛味噌や牡蠣味噌、いりこ味噌等が製造・販売されている。 

5.魚介せんべい

 せんべいは、奈良時代の正倉院文書に含まれる『但馬国正税帳たじまのくにしょうぜいちょう(737年)』には「煎餅」や「伊利毛知比いりもちい」の記載があり、これが日本最古の記録である。平安時代の和名類聚抄わみょうるいじゅうしょうに、糯米もちごめの粉を平らにして焼いたものとの記載があり、当時は、小麦粉や米粉を使用した煎餅であった。その後、様々なせんべいが製造されるようになった。

 魚せんべいは、「明治時代の中頃に三河の藩豆はず地方で、『かまぼこ文吉』が、アカシャエビを主原料にして作った『えびせんべい』が始まりである。」という説と、ほぼ同時期に「坂角次郎が現在の東海市で『えびはんぺん』を焼き上げて『生せんべい』を生み出した。」という説がある。その後、「ひげ貞」が大量生産方法を考案した(第5節の「えびせんべい」を参照)。現在では、「えびせんべい」「いわしせんべい」「いかせんべい」等、様々な種類の魚せんべいが製造・販売されている。

加工技術の原理

 佃煮、焼き加工品、茹で加工品、魚介味噌、魚せんべい、その他の調味加工品等に使用される調味料、添加物等は、それぞれ目的に応じて異なっている。 調味加工品に使用されている各種原料を表2に示した。

1.佃煮

 佃煮を製造する上で重要なポイントは、煮熟工程である。煮熟工程の特徴は、「①調味液とともに高濃度で煮込む間に、原料や配合材料に含まれている細菌を死滅させる。②一般に水分が40%以下になると細菌は増殖できにくい。佃煮は水分を約30%まで煮詰めてある。③一般の細菌は、塩分が10%に達すると増殖が著しく抑えられ、20%以上になるとほとんど発育できない。④細菌は、砂糖濃度が50%以上になると増殖することができない。」ことである。

 佃煮類の栄養成分を表3に示す。佃煮の栄養成分の特徴は、甘辛く煮込んでいるため、炭水化物が概ね20~40%、食塩相当量が概ね5.0g/100gと高いものが多い。一方、佃煮類は原料として小魚等をそのまま骨や内臓ごと加工するものが多く、n-3系多価不飽和脂肪酸(EPA、DHAなど)やカルシウムが他の加工品よりも多く含まれる傾向にある。
(各成分の効能については、別途「水産物に含まれる有用成分」をご参照ください。)

2.焼き加工品

 焼き加工品は、加熱することで、余分な水分や脂質を除去し、タンパク質を変性させて食べやすくすると同時に、酵素や微生物危害を防ぎ、保存性を高めている。

 焼き加工品の調理法には直火焼きと間接焼きがある。直火焼きは、魚を網にのせたり、串を打って直接火にかざし、放射熱を利用して焼く方法である。間接焼きは、フライパンを利用する場合のほか、鉄板焼き、包み焼きや塩釜焼きなど伝導熱を利用した焼き方である。また、調味によって、塩焼き、照り焼き、つけ焼きなどがあり、照り焼きやつけ焼きには比較的脂肪の多い魚に適している。

3.茹で加工品

 魚介類をゆでる目的は、魚肉タンパク質の凝固、脂肪の除去、脱水、殺菌などである。魚介類の茹で加工品は、加熱(茹でる)することで、タンパク質を変性させて食べやすくすると同時に、酵素や微生物危害を防ぎ、保存性を高めている。水産加工場で魚介類をゆでるときに真水を用いることは極めて例外的で、食塩水または海水で塩茹でを行っている。

4.魚介味噌

 魚介味噌は、魚を茹でてほぐしたものを、調味した味噌にまぜ、加熱しながら練り合わせた加工品である。魚介味噌は、2通りの製法がある。①麹を利用する方法は、大豆の代わりに魚介類に含まれるタンパク質を麴菌が生成したタンパク質分解酵素で分解・発酵することである。②味噌を利用する方法は、大豆味噌に魚肉や貝の茹でほぐし身を混ぜ、加熱しながら練り合わせた「加工なめ味噌」の一種である。上記①及び②に記載しているペースト状の食材は、日本では調味料として活用されてきた。

5.魚介せんべい

 魚せんべいの製造方法の原理は、上下の鉄板で圧縮・焙焼することである。圧縮加熱成形機上下の鉄板を所定の温度に設定し、魚介類を圧縮加熱した場合、210℃~230℃では、圧縮加熱後、膨化し、フワッとしたせんべい状になる。原料の種類によって、圧縮加熱条件(温度や加熱時間)によって異なるが、せんべい状のものを製造することが可能である。

原料と一般的な製法

1.佃煮 

 佃煮の原料魚は、アナゴ、アミ、アユ、ウナギ、エビ、カツオ、コイ、ニシン、ニジマス、ハゼ、フナ、モロコ、ヤマメ、マグロ、ワカサギ、アサリ、赤貝、シジミ、ハマグリ等である。

  浮かし煮(うかしに)は、主に生原料を使用する場合の煮熟方法である。

 ・原料魚 → 洗浄 → 調味液の煮塾 → 原料魚の添加 → 煮熟 → 取り上げ → 冷却 → 包装 → 検査 → 製品

 煎りつけ煮(いりつけに)は、主に乾燥原料を使用する場合の煮熟方法である。

 ・原料魚 → 洗浄 → 調味液の煮塾 → 原料魚の添加 → 煮詰める → 冷却 → 包装 → 検査 → 製品

2.焼き加工品

 焼き魚の原料魚は、アジ、イワシ、カマス、サケ、サバ、サンマ、タイ、ブリ等である。

 魚介類の塩焼きは、魚介類の焼き加工品で最も一般的な製造方法である。

 ・原料魚 → 調理 → 塩漬け → 焙焼 → 冷却 → 包装 → 検査 → 製品

3.茹で加工品

 茹で加工品の原料魚は、シャコ、タコ、ベニズワイ、ホタルイカ等である。

 ・原料魚 → 洗浄 → 煮熟 → 洗浄 → 水切り → 静置 → 包装 →検査 → 製品

4.魚介味噌

 魚介味噌の原料魚は、イカ、イリコ、カキ、サケ、タイ、フナ等である。

 魚介類を麹と混合した方法を示す。

 ・原料魚 → 調理 → 水洗 → ミンチ → 麹と混合 → 熟成 → 包装 → 殺菌 → 製品

5.魚せんべい

 魚せんべいの原料魚は、イカ、イリコ、エビ、シャコ、ホタテ貝柱等である。

 魚介類のみの魚せんべいを示す。

 ・原料魚 → 調理 → 水洗 → 成形 → 圧縮焙焼 → 冷却 → 包装 → 検査 → 製品

6.その他の調味加工品

 一例として、サケフレーク

 ・原料魚 → 調理 → 水洗 → 煮熟 → 冷却 → 小骨の除去 → ほぐし身 → 乾燥 → 調味 → びん詰 → 殺菌 → 冷却 → 製品 

製品の衛生管理

 日本国では、令和3年6月1日より、食品衛生上の危害の発生を防止するために、①従業員が50人以上の場合は「HACCPに基づく衛生管理」、②従業員が50人以下の場合は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」が義務化されている。水産関係の個々の業界向けの手引書が出ているので、これに従って衛生管理を実施する必要がある。
(厚生労働省のHPの食品等事業者団体が作成した業種別手引書「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理の手引書」を参照されたい。)

生産と消費の現況と課題

1.生産と消費

 調味加工品の生産量の推移を表4に示した。調味加工品生産量の合計は、1992年では約36万tであったが、徐々に減少し、2015年には約23万tに減少した。その他の調味加工品の生産量は、約8千tで横ばいであった。 

 調味加工品を食する世代の高齢化に伴い購買力が減少し、若年層は調味加工品を食する機会が少ないために市場が縮小し、売り上げが減少しているものと考えられる。

2.消費者の嗜好の変化と今後の対応

 調味加工品メーカーは、消費者の食志向の変化に対応した減塩、低糖の食品開発、個食ニーズに対応した個包装化、中食産業向け製品化などにも力を入れている。これらに加え、新たな原料、調味料、製法を見出し、和食のみならず洋食の副菜としても活用できる製品など、広い世代に受け入れられる食感や味の調味加工品を製造することも求められる。

 現在は、冷蔵・冷凍技術が発達しているので、海外への輸出も可能である。和食ブームに乗り遅れることなく様々なチャネルや方法を駆使して、海外の市場にも活路を求めるのも発展の道のひとつと思われる。

参考文献

・須山三千三他.水産加工.建帛社.1997:246-259.
・山崎清子他.焼き物調理に関する研究(第3報)-魚の直火焼きについて-.家政学雑誌1968;19:94-98.
・岩村泰子他.冷凍食品の調理科学的研究(第2報)-蒸物、焼物について-.調理科学1979;12:176-181.
・平岡芳信他.未利用魚の加工に関する研究(第2報)-小魚せんべいの試作-.愛媛県産技研報告2012;50:27-31.
・水産物流通統計年報.品目別水産加工品生産量累年統計(陸上加工).
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500228&tstat=000001015640&cycle=0&year=20240&month=0&tclass1=000001037128 (2026年1月20日参照).
・全国水産加工業協同組合連合会.HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書.https://www.zensuishoren.or.jp/haccp5.pdf (2026年1月20日参照).
・厚生労働省.HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000179028_00003.html (2026年1月20日参照).
・岡﨑惠美子.調味加工品.「最新水産ハンドブック」.講談社.2012:452-455.

(著者:元愛媛県産業技術研究所 平岡 芳信)