目次
第12章 藻類加工品 第1節 素干し品

乾し海苔

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主生産地

保存方法

冷蔵保存/常温保存

キーワード

支柱式養殖/浮き流し式養殖

備考

Hoshi₋nori/伝統的加工

し海苔とは

 われわれが日常食べている乾し海苔は、スサビノリやアサクサノリなど紅藻類に属する海藻を和紙と同じ製法で薄い板状に乾燥したものである。大宝律令にも記述が見られ、古くから日本人の食料として利用されてきたことがうかがえる。江戸時代の享保年間には海苔()きが始まり、現在のような形状の乾し海苔が作られていたようである。

主な生産地

 乾し海苔となる原藻は、北は宮城県、南は鹿児島県までの主に太平洋側の内湾で養殖される。
 北から宮城県、千葉県、神奈川県、愛知県、三重県、兵庫県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、鹿児島県である。

生産の動向・消費の動向

 乾し海苔生産枚数の動向を図1に示す。昭和40年代後半の冷凍網技術や浮き流し養殖など養殖技術の普及、大型全自動機械の導入により増加し、昭和58年から平成18年までは100億枚前後で推移したが、減産に転じている。
 また、産地別の内訳を図2に示す。年変動があるものの、伊勢湾以東の東日本が約14%、瀬戸内海が約30%、九州が約56%であり、近年は九州の比率が高くなっている。

図1 乾し海苔生産枚数の動向(海苔産業情報センター提供)
図2 乾し海苔産地別生産枚数の割合
(平成25年度~令和4年度の平均)

 乾し海苔輸入枚数の推移を図3に示す。輸入は大韓民国と中華人民共和国から行われており、平成23年度以降、増加傾向を示し、令和5年度には12億枚に達している。

図3 乾し海苔輸入枚数の推移(財務省貿易統計)

原料選択のポイント

 養殖には、大きく分けて2つの養殖法がある。1つは従来からの支柱式養殖写真1、もう1つは浮き流し式養殖である。支柱式養殖では潮の満ち引きによって、干潮時に海苔網が空気中に露出してノリ原藻は乾燥するが、浮き流し式養殖ではその工程が育苗期に限られることが大きな特徴である。このため支柱式養殖と浮き流し式養殖では特性に違いが生じる。
 乾し海苔は色が黒くつやが豊富で、歯切れが良く、味のあるものが良いとされているが、支柱式養殖と浮き流し式養殖それぞれに一長一短があり、すべての条件を満たす原藻を生産するのは難しい。またノリは複数回の摘採を行うため、初回摘みが品質的に優れ、病気の感染がなく、縮れやくびれなどの「芽イタミ」と呼ばれる症状のない原藻が高品質の乾し海苔を生産するのに適している。

写真1 有明海(福岡県地先)の支柱漁場(提供:福岡県)

加工技術

 乾し海苔は紙を抄くのと同じ原理で行う。現在は、原藻から乾し海苔になるまですべて全自動化されており、品質の劣化を防ぐためできるだけ短時間で終了しなければならない。

製造工程の概略

加工の実際

  • 原藻 摘採回数が進むと葉体が厚くかたくなるなど、漁場環境や養殖管理の違いで品質が異なるため、原藻の品質を損なわない製造条件選択が必要である。

  • 貯留 細菌の付着や自己消化による品質低下を防ぐため、低温での保存が必要である。

  • 異物除去洗浄 原藻を細断する前に、異物を除去し、全体に異物が飛散することを防ぐ。

  • 細断 刃の切れ味を良くし、原藻の品質に応じてミンチの目の大きさや刃の枚数を調整し、穴あきや縮み等を防ぐ。

  • 調合 乾燥後の重量(約3g)を想定して原藻の量を設定する。

  • 抄製・脱水 形状が崩れないよう、19×21cmとなるようにする。

  • 乾燥 製造工程の中で乾し海苔の品質に最も影響を及ぼす工程である。乾燥工場の特性を熟知しておき、原藻の質に合わせて乾燥温度、湿度等を調整することが重要である。基本的には、柔らかい原藻は低温で時間をかけた乾燥、かたい原藻は高温での乾燥を心がける。

  • 形状選別・異物選別 形状異物選別機などの選別機器の整備調整は確実に行い、不良品の出荷を防ぐ。

  • 結束 帯紙の色、日付を間違わないようにする。

加工に用いる機器等

 乾し海苔製造は、全自動乾燥機(写真2)をメインとし、貯留装置、原藻異物除去機、ミンチ、調合機、形状異物選別機、結束機などの周辺機器を組み合わせて行われる。現在ではすべての製造工程が自動化されており、貯留装置に原藻投入後は、100枚の束になった乾し海苔が出てくるまで、あまり人手を要しない。
 全自動乾燥機は年々大型化が進んで処理能力が増大し、最も大型のものでは1時間当たり1万枚以上の乾燥能力がある。このため、最初の製品が完成したのちに重量などが規格外だったことが判明しても、すでに大量の規格外乾し海苔が乾燥機内に存在することになる。したがって、機械が大型化すればするほど、原藻の品質を的確に把握することが重要である。

写真2 全自動乾燥機(提供:「心和水産」柳川市大和町)

品質管理のポイント

 乾し海苔の品質は、原藻の良し悪しが大きな比重を占める。栄養塩豊富な海で育った、色が濃く病気や「芽イタミ」のない原藻を使用することが最も重要である。乾し海苔の加工は、原藻の持っている品質をいかに落とさずに製品に仕上げるか、ということに尽きる。それには、全自動乾燥機内部の乾燥温度や湿度のみならず、加工場全体を乾燥装置として考えた温度、湿度、空気の取り入れや排出の制御が必要である。

安全衛生管理のポイント

 乾し海苔の安全衛生管理で大事なことは、製造工程において海由来、加工工程由来の夾雑物の混入を防ぐことである。そのためには、原藻異物除去機、乾し海苔形状異物選別機の点検等を怠らないこと、夾雑物の混入が発生しない加工場管理が重要となる。また、定期的な脱水用スポンジの洗浄など、乾燥工程における衛生管理の徹底も必要である。

特徴的な成分

 乾し海苔は、栄養素に富んだ食品であり、タンパク質、脂質、炭水化物が豊富であるばかりでなく、ビタミン、ミネラルなどの微量栄養素も豊富に含まれている。また、健康に良いと言われる食物繊維が豊富に含まれている。ノリの食物繊維はポルフィランと呼ばれる多糖類である。
(水産物に含まれる各種成分の効能については、「この図鑑の使い方」末尾の【参考情報】をご参照ください)

製品の形態

 現在の乾し海苔1枚(全型)の規格は19×21cmで重量は約3gほどである。通常、10枚を二つ折りにして1束にし、帯紙で10束(100枚)に括られる(写真3)

写真3 乾し海苔 (提供:福岡県)

包装および保管方法 

 直射日光や高温多湿を避ける保管方法が大事である。

(著者:福岡県水産海洋技術センター有明海研究所 藤井 直幹、
元福岡県水産海洋技術センター有明海研究所 岩渕 光伸)