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第13章 調理冷凍食品 調理冷凍食品 総論

第13章 調理冷凍食品総論

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はじめに

 日本の冷凍食品事業は、1920年に葛原商会・葛原猪平がアメリカから冷凍設備の購入と技師を招き、北海道森(現ニチレイフーズ森工場)に日産10トンの冷凍庫を建設し水産物を凍らせたことから始まった。調理冷凍食品は1948年に東京・日本橋の白木屋デパート(現東急百貨店)で「ホームシチュー」等を試売したことから始まり、1954年「学校給食法」が制定され学校給食で冷凍魚のフィレや冷凍コロッケ、スティック類などが採用されことが、業務用冷凍食品の発展の基礎となった。その後、第一次南極越冬隊への冷凍食材供給や東京五輪で冷凍食品が採用されていった。

 1965年には家庭用冷凍冷蔵庫の普及率が50%を超え、1966年には電子レンジが発売されて冷凍食品の需要が急上昇し、コロッケ、ハンバーグ、シュウマイ、ギョウザ、えびフライの五大調理冷凍食品が市場に定着していった。1969年冷凍食品の普及を推進するため、(社)日本冷凍食品協会が設立され、低温物流ネットワーク(コールドチェーン)をはじめ、冷凍食品の管理温度設定など冷凍食品の普及を支える基盤は、この時期に構築されていった。

 また、ファストフードやコンビニエンスストアが次々にオープンし、働く女性が増えたことにより、手軽に調理ができ食べられる電子レンジ対応の商品が発売された。冷凍食品は人々の暮らしに定着したが、少子高齢化、核家族化、単身世帯やシニア世帯の増加など人々のライフスタイルは多様化し、食事は各自でとる「個食化」が進み、主食となる冷凍食品が増えていった。自然解凍の調理冷凍食品や冷凍障害を低減させる不凍タンパク質等を利用した新たな調理冷凍食品が開発されている。調理冷凍食品は、時代背景とともに日々進化するとともに、フードロス削減が叫ばれる現在、長期保存が可能な調理冷凍食品は資源の有効活用や環境負荷低減への期待も大きい。

 2008年1月、中国の天洋食品で委託製造された餃子製品による中毒事件は、安定して生産量が増加してきた冷凍食品全体の需要に大打撃を与え、消費者の中国をはじめ海外製冷凍食品に対する信頼性を大きく損ね、国内製品への嗜好をより高める結果となった。そのため、冷凍食品メーカーは安全性の確保やトレーサビリティ、原料原産地表示を徹底した。(社)日本冷凍食品協会では、「冷凍食品認定制度」の認定基準に食品防御や危機管理に関する内容を加え、冷凍食品業界全体として常に安全性の強化に努めている。

調理冷凍食品とは

 調理冷凍食品の定義については、日本農林規格(JAS)で「農林畜水産物に、選別、洗浄、不可食部分の除去、整形等の前処理及び調味、成形、加熱等の調理を行ったものを凍結し、包装し、及び凍結したまま保持したものであって、簡便な調理をし、又はしないで食用に供されるものをいう。」と定義されていた。調理冷凍食品の日本農林規格(JAS)は2013年に廃止されたが、個別表示基準の調理冷凍食品の定義として引き継がれている。

 冷凍食品は、長期保存を目的に冷凍状態で製造・流通・販売される食品全般を指すが、調理冷凍食品はこの冷凍食品の一種であり、水産冷凍食品、農産冷凍食品、冷凍食肉製品などと並ぶ分類の一つとされる。冷凍食品は食品衛生法の個別基準で、成分規格(製品の衛生基準等)、加工基準、保存基準などの細かい基準が設定されており、調理冷凍食品も遵守する必要がある。

加工技術の原理

 食品冷凍技術が高価なエネルギーを投入してもなお重要である理由は、色、味、香り、有効成分、食感、鮮度等食品が持つ本来の性質と状態を長期間保存できることにある。食品冷凍技術は他の保存法(缶詰、乾燥、塩蔵、冷蔵など)とは異なり、食品素材の本来の状態、あるいは加工食品を製造直後の状態に長期間保存することを目標として進歩発展してきた。

 食品の品質を維持するためには、酵素活性を抑制し微生物の増殖を抑えることが必要で、低温による食品貯蔵の原理もこれに基づいている。食品から熱を奪うことによって、予冷⇒氷結⇒冷却⇒保存の各期間に食品内部に起こる物理的、化学的な変化が解凍後の食品品質を左右する。特に氷結期間である最大氷結晶生成帯を速やかに通過させることが、最も重要とされている。

一般的な製造方法

 調理冷凍食品に欠かせないものが、凍結設備である。凍結設備は凍結媒体によって、空気式、液体式、接触式、液化ガス式などがある。空気式ではバッチ式、トンネル式、スパイラル式、流動化床式などがあり、液体式では連続的に散布する方法もあるが、一般的には浸漬式で使用する液体として塩化ナトリウム、塩化カルシウム、エタノールなどがある。接触式ではコンタクトフリーザやスチールベルトフリーザがあり、液化ガス式としては液化窒素(-196℃)や液化炭酸ガス(-78.5℃)が用いられている。

 このように凍結設備は、多種多様なものが食品の凍結装置として使用されてきたが、近年でも磁石や電磁波を利用した凍結装置など、装置開発や特許取得が多く見られている。凍結設備の選択については、製品の形態、大きさ、包装形態、加工特性や品質特性等により影響を受けることが多く、選択肢も多いため、新規に凍結装置を導入する場合は、事前に凍結試験や貯蔵試験を行いながら、適正な凍結方式を選択することが必然と考える。

調理冷凍食品生産の現況と課題

 (社)日本冷凍食品協会の発表では、2024年(1~12月)冷凍食品の国内生産量は、 1,538 千t(対前年比(以下、同じ)99.5%)と前年を若干下回り、金額 (工場出荷額)は 8,006 億円(102.6%)と前年に引き続き、調査開始以来最高額を更新した(図1)。うち冷凍水産物は40千t(98.8%)、484億円(111.4%)であり、冷凍調理食品のうち水産フライ品は26千t(99.2%)、236億円(103.5%)であった。なお、冷凍水産フライ品の過半はかきフライとえびフライが占めている。

 家庭用は、数量が740 千t(97.7%)、金額は 4,062 億円(101.7%)と数量は減少し、金額は増加した。一方、業務用は数量が 798 千t(101.2%)、金額は 3,944 億円(103.7%)と数量、金額ともに増加した。 家庭用と業務用の比率は、数量ベースで業務用が家庭用を上回り、金額ベースでは家庭用が業務用を上回った。大分類の品目別生産量では、国内生産の大半を占める調理食品(99.5%)はやや減少した。一人当たりの年間消費量は 0.4 kg増加し 23.6 kgとなった。

 調理冷凍食品の生産量は順調に推移しており、2033年まで日本の冷凍食品市場規模は成長していくとの調査会社の予測もある。日本の冷凍食品業界の特徴は、利便性、プレミアム化、そして信頼性の高いコールドチェーンである。調理冷凍食品の需要は、多忙な家庭や個人に高く評価されている(図2)。

 課題は一般の食品製造業と同様に、人手不足や原材料の価格高騰、輸送力などが挙げられるが、これらには様々な要因があるため問題を解決するためには、官民一体となって複数の対策を同時に進めていくことが求められている。

図1 冷凍食品国内生産数量の推移(「日本冷凍食品協会ホームページ統計資料データグラフ」より引用)
図2 冷凍食品を購入している目的(「日本冷凍食品協会“冷凍食品の利用状況”実態調査結果について」より引用)

●参考文献

・日本冷凍食品協会:冷凍食品の歩み
・ニチレイ:冷凍食品100年ヒストリー
・食品冷凍工学:恒星社厚生閣(1976年)
・要説冷凍食品:建帛社(1979年)
・食品冷凍技術(改訂):公益社団法人日本冷凍空調学会(2020年)

(著者:片山技術士事務所 片山 博視)