目次
第4章 ねり製品 第4節 ちくわ

野焼

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主生産地

保存方法

冷蔵保存

キーワード

あご/出雲地方/ふるさと認証食品/スケトウダラ冷凍すり身/地伝酒/ちくわ

備考

Noyaki/伝統的加工品

野焼のやきとは

 野焼のやきは、島根県東部の出雲地方で古くから作られるちくわの一種である。主原料のトビウオは、地方名が“アゴ”であることから、通常はあご野焼、あるいはあご入り野焼と称される。トビウオを全く使わない場合は、単に野焼となる。形状は円筒状で、ちくわを太く長くしたものといえばわかりやすく、直径3~6cm、長さ15~60cm、重さ300~1,800gにもなる。外観はちくわをイメージさせるが、肉厚があるため食感は板かまぼこに近く、野焼かまぼこと呼ぶ場合もある。味付けは濃厚で、トビウオの身に地伝酒、焼酎などの酒類調味料を加えることにより、野焼独特の香味がある。島根県ふるさと認証食品(Eマーク)の対象となっている。
 野焼の製造は、暖かい季節に炭火を使っての作業であり、戸外や軒先で焼いたことがその名の由来という説や、第7代松江藩主松平不昧(ふまい)公による命名説などが伝えられるが、真偽のほどは不明である。
 ここでは島根県出雲地方の野焼について述べる。

主な生産地

 島根県出雲地方 鳥取県西部

生産と消費の動向

 島根県内の練り製品出荷額約60億円のうち1割程度と推定される。近年の生産量は減少傾向にある。野焼は1本単位で販売され、家庭内で数日かけて消費されるため、1本のサイズが大きい。一方、近年は核家族化や食生活の多様化に対応し、使い切りなど利便性を重視した小型商品の比率が増加している。

原料選択のポイント

 主原料のトビウオ(主としてホソトビウオ)は、5月頃産卵のため日本海を北上し始めるが、産卵直前の旬の時期に山陰沿岸の刺し網や施網で漁獲される。漁期が5~7月と限定されるので、もともとは夏場だけの製品であったが、冷凍すり身の加工技術の発達によって、現在では年間を通じて生産されている。また、トビウオは比較的冷凍耐性が強いため、魚体をそのまま冷凍し、必要時に解凍して使う場合もある。ほかにはアジ類、底物(キダイ、クラカケトラギス他)やスケトウダラ冷凍すり身などが使われる。

使用する副原料

 野焼に使用する独自の調味料として地伝酒がある。地伝酒は古来より出雲地方で造り続けている灰持(あくもち)(ざけ)である。地伝酒を使うことにより、地伝酒中の糖類と魚肉タンパク質とのアミノ-カルボニル反応が進行し、むらのない良好な焼き色が形成される。第二次大戦中の1943年から戦時統制により、製造が中止されていたが、島根県立工業技術センター(現産業技術センター)と県内の異業種交流グループとの研究開発によって、1991年より製造が復活して現在に至っている。

加工技術

 塩ずりした魚肉に、でん粉、卵白、砂糖、地伝酒、清酒、焼酎、みりん、各種調味料等を加え、ちくわ状に成型後、焙焼して製造される。原理は一般のかまぼことほぼ同じであるが、焼き皮が形成されることから身の水分が蒸発しにくく、ある程度気泡を抱くことと、身がジューシーになる点が野焼の特徴である。

製造工程の概略

加工の実際

  • 調理 調理の際にトビウオの卵巣(1尾当たり5~30g)が取れる。これは丁寧に取り扱い、専門の加工業者に卸す。

  • 水晒し  トビウオは青魚なので身の白さはあまり要求されず、風味が重視される。そのため、水晒しは1回か多くても2回までである。鮮度が良ければ無晒しで使う場合もある。

  • 擂潰らいかい 肉厚の身を焼くため、塩ずりが不十分であるとダレてしまい、焙焼中に塩すり身が串から落ちてしまう。

  • 成形 串への肉付けは、成形機を使い巻きつける方式がほとんどである。技術者は少なくなったが、昔ながらの手付けも一部行われている。

  • 焙焼 熱源はガスがほとんどであるが、昔ながらの炭火を使う業者も一部ある。焙焼中は、身が膨張しで焼き皮が破れないように針を打つ。最後に火力を上げて焼き色をつける(写真1)。この工程で焼き皮の厚さや身の肉質などが決まるので、各業者の腕の見せどころといえる。

  • 冷却 肉厚なので、速やかに冷却し火戻り(50~60℃で起こる弾力の低下)に注意する。

写真1 焙焼工程(提供:有限会社寿山商店)

加工に用いる機器等

 擂潰機、自動成形機、ガス式焼炉、真空包装機

品質管理のポイント

 焙焼中のダレによる串からの塩すり身の脱落を防止するために、塩ずりにおける肉糊の物性の調節が重要である。また、焙焼工程の火力の調節および針による気泡抜きが焼き皮の厚さや肉質に関連する。さらに、加熱後の速やかな冷却は火戻りを防止するうえで重要である。

製品の形態・包装等

 1本ずつ、紙、セロファン、プラスチックフィルムなどで包装される。日持ちを長くする場合は、真空包装した後、加熱殺菌を行なう。真空包装をする場合は、変形を防ぐため芯棒を入れる。賞味期限は冷蔵で真空包装では約1カ月、簡易包装では約1週間である。

調理方法および食べ方

 適当な厚さで輪切りにし(写真2)、おかずや酒のつまみとして生食される。また、お茶ごとの習慣がある出雲地方では、お茶うけとしても重宝される。

写真2 盛りつけ例(提供:有限会社寿山商店)

(著者:島根県産業技術センター 永瀬 光俊)