さんま開き干しとは
さんま開き干しは、サンマを身開きし、塩漬けしてから乾燥した製品である(写真1,2)。サンマ本来の味わいを生かした古くからの代表的な塩干品の1つである。近年では、低温技術や包装容器などの発達に伴い、従来の貯蔵性に重点を置いた乾燥度の強い高塩分の製品よりも、低塩分で乾燥度の低い製品が主流となっているため、生鮮魚並みの鮮度管理が必要である。消費者における嗜好性は地域で異なり、都心部では低塩分の製品が好まれ、古くからさんま開きの産地であった銚子市などでは、昔ながらの高塩分の製品が好まれる傾向にある。
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(提供:㈱兆星)
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主な生産地
塩干品(サンマ)の主産地は千葉県、兵庫県、和歌山県などである。2015年から2024年の生産量は、千葉県産が最も多く、常に全国の生産量の約半分を占めている(農林水産統計 2015-2024)。
生産の動向
近年サンマの漁獲量が激減しているため、ここ10年の動向としては、2015年は全国で1.7万トンの生産量であったところ、2024年には1,706トンと1/10まで減少した。千葉県においても2015年には8,745トンの生産量であったが、2024年には799トンまで減少した(農林水産統計 2015-2024)。
原料選択のポイント
原料となるサンマは短期間に集中して漁獲されることから、水揚げ地で一旦凍結される。鮮度が良好で、魚体の揃ったものが好まれるため、凍結前に選別されたものが用いられる。凍結原料は半解凍で開き加工することにより、切り口が綺麗に仕上がる利点もある。サンマが比較的豊漁であった20年以上前には、100g以上の原料を厳選し、脂質含量が低く酸化の少ない110g前後は乾燥度が高い製品向け、脂質含量が高い150g前後の大型魚は高水分・低塩分の製品や、揚げ物・酢締めなどの中間素材向けとして利用されていた。しかし、近年の海洋環境の変化に伴うサンマの小型化により、約80gの原料でも開き加工を行っており、魚体が小さくなった一方、漁獲量の激減により原料価格は高騰している。
加工技術
塩漬けには、脱水による水分活性の低下作用があり、付着微生物の増殖を抑えることで貯蔵性が向上する。また、塩溶性タンパク質の溶解により、魚肉の保水性が増加し、凍結解凍による離水が起こりにくくなる(大泉 2014)。乾燥は、塩漬けと同様、水分活性を低下させ貯蔵性の向上に寄与するとともに、肉質にほどよい弾力のある物性を付与する。
製造工程の概略

加工の実際
- 原料 冷凍サンマを用いる。鮮度、脂質含量、魚体の大小等で厳選する。
- 解凍 適量の海水を張った約1トンのダンベ(魚の一時保管用の大型容器)に、冷凍サンマブロックを250~500kg入れた後、ダンベごとチルド室(0~1℃)に入れ約15時間かけて解凍を進める。半解凍にすることで、後の開き加工を行う際に、切り口がきれいに仕上がる。
- 開き加工 開き加工は、機械開きが主流となっている(写真3)。機械開きでは、カッターで頭と尾を除去、水平刃で腹部をカット、ブラシで内臓を除去、V字カッターで中骨を除去し腹開き、という工程で加工される。手作業での開き加工は「かぎ開き」と呼ばれ、眼球に釘を刺し包丁で開く方法であり、熟練の技術が必要となる(写真4)。機械化が進んでいることから、熟練の技術を持った職人は減少傾向にある。
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(提供:㈱兆星)
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(提供:㈱ヤマニンベン)
- 水洗い 開いたサンマをカゴに入れる等して、水道水を張ったダンベ等の中で洗浄し、内臓、腎臓、血液による汚れを除去する。
- 塩水漬け 水洗いしたサンマを、冷塩水を張ったステンレス製のダンベなどに浸漬する。塩分は約13%、浸漬時間は約3分間であるが、魚体が大きく脂質含量が高いサンマの場合、約5分間浸漬する。塩水は衛生面を考慮し、毎回廃棄している場合が多い。なお、塩水に抗酸化剤を入れることで、脂質酸化防止を図る場合もある。
- 水洗い(2回目) 塩漬け後、サンマを水道水で洗い、魚体表面の余分な塩分を除去することで、製品の色・つやの向上を図る。
- 乾燥 乾燥は、冷風乾燥による方法が主流であるが、遠赤外線照射乾燥や灰干しによる乾燥なども行われている。
冷風乾燥 冷風乾燥機による方法は、天候に左右されず、計画生産が可能であり、品質の安定化、衛生面でも優れている。冷風乾燥機の場合は約30~40分間乾燥を行う。
遠赤外線照射乾燥 近年、さらなる品質向上を目的として、遠赤外線照射乾燥機を用いた乾燥を行う事業者もみられる(写真5)。遠赤外線照射乾燥機では、冷風乾燥機と比較して短時間でムラなく乾燥でき、ソフトな食感となる。遠赤外線照射乾燥機の場合は約25~40分間乾燥を行う。
灰干しによる乾燥 灰干しとは、魚に水蒸気透過性の高いセロファンを巻いて火山灰の中で貯蔵する方法で、余分な水分を除去して魚のうま味を残す製法である。空気に触れずに乾燥するため、魚体表面の酸化が抑制でき、通常の乾燥法に比べて色・つやの良い製品となる。通常の塩干し工程と同様、サンマを塩水漬け、水洗いした後、セロファンで包む。次に、セイロにセロファン、冷風乾燥機等で乾燥させた火山灰、クラフト紙を重ね、そこにセロファンを巻いたサンマを並べる。さらに、クラフト紙、セロファン、火山灰を重ね、約3~4時間チルド室(0~1℃)に入れ水分を除去する。
- 選別 魚体の大きさで選別し、不良品及び異物を除去する(写真6)。
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- 冷凍 トンネルフリーザーに通し、-35~-40℃で約15分間かけて急速にバラ凍結する。
- 包装 プラスチックトレーに入れたラップ包装や袋詰めを行う(写真7~10)。
- 梱包 外箱に収納し、冷凍保管する。
- 出荷 梱包して出荷する(写真11)。
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(提供:㈱兆星)
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(提供:㈱兆星)
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加工に用いる機器等
乾燥機、割砕機、(トンネル)フリーザー、V字カッター、包装機、ダンベ、セイロ等
品質管理のポイント
サンマ魚肉は、体内酵素活性が強く、不安定な高度不飽和脂肪酸の含量が高いため、鮮度低下や脂質酸化が速い。また、現在の主流である高水分・低塩分の製品は、微生物が極めて増殖しやすい。凍結中の品質低下は比較的小さいが、冷蔵中は速やかに品質劣化が進む。製品を5℃の冷蔵庫で保管した場合、脂質酸化の指標となる過酸化物価は1日後約10meq/kg、2日後約20meq/kg、 4日後約40meq/kg、K値は1日後30%、2日後50%、4日後60%と次第に上昇していく。これに伴って製品の匂い、味、色は悪くなる。そのため解凍してからは、鮮度管理に十分注意し、早めの消費を心掛けることが重要である。
特徴的な成分
さんま開き干しの一般成分及び脂肪酸含量を表1に示した。脂質が高く、EPA、DHAが豊富に含まれている。これらの脂肪酸は高度不飽和脂肪酸であることから脂質の酸化が速く、製造工程における品質管理が重要である。
(水産物に含まれる各種成分の効能については、「この図鑑の使い方」末尾の【参考情報】をご参照ください)

製品の形態及び保管方法
製品の形態は、各加工会社や出荷先に応じて異なる。一例として、生協への出荷は、ロータリー包装機で製品4枚をセットで包装し、40~50袋を段ボール1箱に入れている。量販店への出荷は、4枚をセットでプラスチックトレーに入れラップをして包装している。包装した製品は、出荷するまで自社冷凍庫にて-30~-35℃で保管している。
調理方法および食べ方
魚焼きグリル、フライパン、電子レンジ用グリルパンなどで加熱し、そのまま食べるのが一般的である。
参考文献
・文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会. 「日本食品標準成分表2020年版(八訂) 増補2023年」.2023.
・農林水産省大臣官房統計部.水産加工統計調査結果.「農林水産統計」 2015-2024.
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/suisan_ryutu/suisan_kakou/index.html(2025年12月1日参照)
・大泉 徹.タンパク質,干物の科学.「干物の機能と科学」(滝口明秀他編)朝倉書店.2014;40-45.
(著者:千葉県水産総合研究センター 古山 雄祐・川島 時英・網中 仁)
