焼き抜きかまぼことは
焼き抜きかまぼことは、板につけた肉糊を板面からじっくりと焼きあげたもので、色が白いことから「白焼き抜きかまぼこ」とも言われる。食感は足が強く独特の歯ごたえがあり、表面に細かいちりめんじわがあることが特徴である。
焼き抜きかまぼこは、萩が発祥の地であり山口県の名産品である。
主な生産地
山口県日本海側の萩市、長門市を中心に下関市、防府市等で生産されている。
生産の動向・消費の動向
令和4年水産加工統計調査によると、山口県におけるかまぼこ類の生産量は28.5千トンで全国5位となっており、また、家計調査による県庁所在地・政令指定都市におけるかまぼこへの支出金額は全国4位(山口市)である(令和4年~6年の平均)。こうしたことから、山口県はかまぼこの生産および消費が多い県だと言える。
原料選択のポイント
高級品については、近海で漁獲される新鮮なマエソ、ワニエソが原料として使用される。エソは強い足(弾力)を形成するが鮮度低下が速く、鮮度の良し悪しが足の強弱を左右することから、鮮度の良い原料を選ぶことが重要である。
中級品については、原料の安定確保や経済性の面から、スケトウダラなどの冷凍すり身が使用される。
使用する副原料
もともとは魚肉(エソ)と塩のみで作られていたが、近年は砂糖、卵白、出汁、でん粉/調味料、保存料、リン酸塩等が加えられる。
加工技術
焼き抜きかまぼこの特徴である強い足は、独特の焼き方によって形成される。
製造工程の概略

加工の実際
(生魚を原料として使用する場合、冷凍すり身使用の場合は擂潰工程から)
- 原料魚 近隣の市場から鮮度の良いものを選んで購入する。エソが主体となるが(写真1)、商品によってはレンコダイやグチ等もブレンドして使用する。水揚げが少ない時期や時化等により十分な量が確保できない場合には、他地区の市場から購入することもある。購入後も鮮度が低下しないよう、低温管理を徹底する。
- 魚体処理 通常は腹から割いて頭、内臓を除去するが、エソの皮を使ったごぼう巻きを別途作るときは、三枚におろして皮を引くことがある。腎臓もきれいに取り除いておく(写真2)。
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- 採肉 採肉機で魚体をプレスし、魚肉を採取する。歩留まりは50%程度。この段階のものを落とし身という(写真3)。
- 水晒し 水晒しタンクを使用。落とし身に対して5~6倍の冷水を加えて撹拌し、落とし身に含まれる血や水溶性タンパク質等を除去する。水晒しに使用する水は、温度が上昇しないよう適宜氷を加える。
- 脱水 水切ラインユニットを使用して脱水を行う。脱水後の水分量は75~80%を目安とする。小規模の場合には袋絞りで脱水を行う業者もある。
- 肉挽き ミートチョッパーを使用して夾雑物を粉砕、除去し、目立たなくする。
- 擂潰 石臼を使用。最初に肉挽き後の身だけで粗ずりを行った後、塩を2~3%程度加えて塩ずりを行う(写真4)。原料魚の状態により肉糊の状況が異なってくるので、擂潰時間や加水量等を調整して品質を安定させる(職人としての経験や勘が必要となる)。塩ずり後に副原料として砂糖やだし(エソだし、かつおだし、昆布だし、椎茸だし等)、その他を加えて本ずりを行う。擂潰中に温度が上昇すると足の低下が起こるので、加水には氷を使用する等して温度上昇を防ぐ。石臼の代わりにサイレントカッターを使用する業者もある。
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- 成形 成形機を使用し、板付け・切断・セロファン付けを行う。セロファン付けを行うことで、加熱後の二次汚染を防止する(写真5,6)。
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- 加熱(焼付け) ガスによる焙焼機を使用する(写真7)。トータルの加熱時間は35~50分である。板側からじっくり加熱することで肉温の上昇速度が遅くなり、高温坐りが起きて強い足が形成される。気温や湿度、原料魚の肉質等により加熱時間、火力、蓋の有無等の調整を行う(職人としての経験や勘が必要となる)。板面からじっくり加熱した後、肉面から数分間加熱する。ごく一部の高級商品では、昔ながらの炭火で加熱することもある。
- 冷却 送風により冷却を行う。冷めていく過程で身が引き締まり、表面に細かい「ちりめんじわ」が形成される(写真8、9)。
- 包装・金属探知・保管 機械包装後金属探知機にかけ、10℃以下で保管する。
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加工に用いる機器等
採肉機、水晒しタンク、脱水機、ミートチョッパー、擂潰機(石臼、サイレントカッター)、成形機、裁断機、焙焼機、冷却器、包装機、金属探知機
品質管理のポイント
原料魚の鮮度の良し悪しが品質に影響するため、鮮度の良い原料魚を使用する。夏期においては冬期と比較して鮮度がやや低下していることから、製品作りに工夫が必要となる。
加熱前の工程において低温管理に留意するとともに、加熱後は速やかに冷却し、包装後は品温を10℃以下に保つ。
安全衛生管理のポイント
加熱工程において、製品の中心部温度を75℃以上に保つ必要があることから、中心部温度の測定、庫内温度の測定等を行う。
金属探知機により、金属片の混入がないことを確認する。
製品の形態
1本あたり100~150g前後の商品が多い。
包装および保管方法
セロファン包装して10℃以下で保管する。
調理方法および食べ方
板から外して適当な厚さに切り、そのままで食べる。好みにより、醤油、ワサビ、柚子胡椒などを付ける。
板付きのまま板面からバーベキューの炭火で焼いて食べると、魚の良い香りが際立ち美味である。
コラム
「焼き抜きかまぼこの始まり」
山口県の「白焼き抜きかまぼこ」は、18世紀初頭の宝永年間に萩藩の厨人(調理人)九郎兵衛が、擂り潰した魚肉を蒲の穂状に成形して焼きあげたものを、五代藩主毛利吉元公に献上したことが起源とされている。
(山口県水産研究センター 白木 信彦)
(取材協力:有限会社 三好蒲鉾 三好 忠之)
