糸わかめとは
乾わかめの一種で、中芯を除去し、葉片を縦に裂いて乾燥することにより、黒くよれて糸のように細く見えることからこのように呼ばれている。いつから、なぜ、この形態となったかははっきりしないが、昔、一番採りの細いワカメが良いとされていたからという説や、養殖技術がなかった頃の鳴門産ワカメは切れ込みの多いのが特徴であった等、諸説がある。
また、原料の種類や、成形・乾燥方法に差があるものの、糸わかめと称して各地で特産品的に製造が続いている。徳島県鳴門市では、灰干しわかめの二次加工品として古くから生産されてきた。現在は、湯通し塩蔵わかめを原料とするのが主流である。湯通し塩蔵わかめを原料とした糸わかめは緑色が強いのが特徴である。
糸わかめの魅力の1つは、水でワカメを戻したときの感動である。通常2~4月に収穫されるワカメだが、糸わかめは水に戻すと海から収穫したもの同様の深い黒緑色のツヤがあり、1年中採れたてのような感覚でワカメを食べることができる。もう1つの魅力は、水戻し後そのまま食べることができる手軽さである。製造工程で脱塩しているため、塩抜きは不要である。
主な生産地
徳島県鳴門市
生産の動向・消費の動向
生産量は最盛期の2割程度に激減している。これは生産者の高齢化と後継者不足によるものと思われる。一方、最近ではインターネット販売を通して全国に流通しており、リピーターも多い。
原料選択のポイント
過去には、その年の一番採りの原藻を用いて加工されたものに最高値が付けられた時もあったが、現在は特に明確な原料選択基準はなく、2~4月に収穫した原藻を用いる。原料は生産者ごとに分けてトレース管理している。
加工技術
原料を脱塩・水戻しして延ばし脱水後、針で葉片毎に細く縦裂きにする。その後熱風にて短時間で乾燥させる。水分を短時間で減少させることにより、保存性を付与している。
製造工程の概略

加工の実際
- 原料 原料は、2~4月に収穫したワカメの原藻(写真1)を用いる。-2~-5℃で生産者ごとに分けて保管している。
- 脱塩・水戻し 海水による洗浄を数分間から15分間程度行う。海水洗浄を行った後に手早く真水につけ、脱塩する。脱塩が不十分な場合、最終製品が白くなったり、味や手触りが悪くなったりする。脱塩が過ぎると藻体が軟化して粘質多糖が溶出する。こうなると作業性が落ち、さらには葉片同士が結着して製品外観を劣化させる。
- 脱水 遠心脱水機を使用して脱水する。
- 選別 中芯、めかぶなどを除去する。(写真2)
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- 針入れ 持ち手の先に複数の針を付けた専用の道具で、中芯から葉状部先端に向かって1~2cm毎に針を入れ、縦裂きにする。(写真3)
- 乾燥 乾燥室内に据え付られた専用の回転式乾燥機(写真4)に、数十本の藻体を二つ折りにして吊るした竿を掛け、回転させる。季節に応じて、室内の温度や乾燥時間を調節する。45~55℃で数時間乾燥させる。冷風乾燥を行う場合もある。
- 成形 乾燥直後は、藻体が硬く折れやすくなっているため、室温で一定時間放置したり噴霧器にて藻体に適度な水分を付与し、形を整える。乾燥の際に2つ折りとなっていたものを真っ直ぐに伸ばし、天日干しする(写真5)。
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加工に用いる機器等
洗浄装置、遠心脱水機、回転乾燥機
品質管理のポイント
光や湿気により退色しやすいため、製品の水分含有量は15%以下に管理し、遮光保存を行う。選別する際にエビなどの異物を確実に除去し、アレルギー等への対策を行っている。
製品の形態・包装及び保管方法
生産者段階では5kg入りのダンボール箱に詰められることが多い。小売段階では約30gの小袋に分包され、また贈答用としては100~120g程度の小袋形態が一般的である。包装はポリエチレン製の袋による簡易包装とし、保管は常温で行う。(写真6,7)
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調理方法および食べ方
水戻ししてから、そのまま食べるかあるいは調理に供する。水戻しにかかる時間は水温や原料の種類、調理の方法に応じて、数分間から20分間程度である。糸わかめは加工過程で脱塩しているため、そのままでも美味しく食べることができることが特徴である。調理をする場合には、みそ汁やサラダ、おにぎりなどに利用される。
(著者:徳島県立工業技術センター 田中 咲衣)
(協力:株式会社 貴彩)
