松前漬けとは
松前漬け(写真1)は細切りしたするめと昆布を、醤油を主体とした調味液に漬け込んだもので、するめと昆布のうま味が混じり合い、さらに昆布の粘りが独特の食感を醸し出す北海道南部の名産品である。細かく砕いたかずのこを加えたものが多く見受けられるが、これは昭和40年代に開発されたもので、現在では脱皮したイカやホタテガイのような貝類、または細切りしたニンジンや乾燥したダイコンのような野菜類を加えたものなど、多くの種類が生産されている。
(本稿末尾のコラム「松前漬けの歴史」もご参照ください)
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主な生産地
北海道南部
生産の動向
もともとは北海道松前地区の家庭料理であったが、昭和初期から松前漬けとして商業的に生産されるようになった。函館特産食品工業協同組合会員企業における令和5年の松前漬け生産量は約600tである。
原料選択のポイント
するめはスルメイカを原料として作られたもので、身が厚くて赤色が強いものが良いとされる。昆布は味の強いマコンブと粘りの強いガゴメが用いられる。マコンブは色が黒くて肉厚なものが良いとされる。味と粘りの両方を得るためにホソメコンブが用いられる例もある。かずのこは歯ごたえの軟らかい大西洋産ニシン由来のものが消費者から好まれるようになった。
使用する副原料
調味液の絡みをよくするために、近年はキサンタンガムやグアーガムなどの増粘剤を使用したものが見られる。
加工技術
細切りしたするめと昆布にその他の素材を加え、醤油を主体とした調味液を混合し、数日間の熟成を経て製造される。
製造工程の概略

加工の実際
するめは刻み機を用い幅1㎜程度に細切りする。一般にはするめの胴肉のみが使われるが、一部、頭足部も用いられる。コンブも同様に刻み機を用い幅1㎜程度に細切りする(写真2)。近年は柔らかい食感が好まれるため、するめを細切りしてから軽く湯通ししたり、より細く刻んだコンブを使用したりする場合もある。かずのこは飽和食塩水に浸漬したものを脱塩、脱色して薄皮を除いた後に、一本ものそのままかチョッパーなどによりフレーク状として用いる。
調味液は醤油を主体とし、味付けに応じて食塩、砂糖、水あめ、清酒、みりん、アミノ酸等の調味料、唐辛子粉末などが加えられる。この調味液を細切りしたするめと昆布に添加し、攪拌機にて混合してから、熟成用の容器に移す。熟成期間は1日から20日程度と様々である。熟成は10℃以下の低温で行い、毎日攪拌する。熟成の開始時にはするめや昆布と調味液が分離して、さらさらした状態であるが、2〜3日後にはするめと昆布が調味液を吸収し、かつ昆布からアルギン酸やラミナラン、フコイダンなどの粘り成分が溶出することにより、独特の粘りが出現する(写真3)。
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(昆布はうま味成分が析出して白く見える)
(提供:北海道立工業技術センター)
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加工に用いる機器等
するめと昆布を細切りする際に、裁断機が用いられる(写真4)。大量に生産する際には、ニーダーなどの撹拌機が用いられる。
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品質管理のポイント
殺菌の工程がないので、用いる原料や製造工程の衛生管理がとくに重要である。
製品の形態
プラスチック製パウチで真空包装されるほか、物産展などでは量り売りされることも多い。最近では、するめと昆布、調味液を個別に包装して、家庭で混合して松前漬けを手作りするキット製品も販売されている。
包装および保管方法
家庭用として数十gから1kg程度に包装され、冷凍もしくは冷蔵状態で流通される。賞味期限は冷凍で180日から1年間、冷蔵で20日から50日間である。
調理方法および食べ方
ご飯のおかずや酒のつまみとして食されるほか、炊き込みご飯やパスタなどに加えて調理素材としても利用される。
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コラム
「松前漬けの歴史」
松前漬けの歴史をみると、北海道が蝦夷地と呼ばれていた松前藩時代にさかのぼる。当時、松前は蝦夷地の主産物であるするめや昆布、ニシンなどを北前船に積み込む港のひとつとして栄えていたが、厳しい冬場を乗り切るための保存食として、松前漬けが普及した。地元では「いかの醤油漬け」、「こぶいか」などと呼ばれていたが、本州の北前船荷揚げ地では、蝦夷地の海産物はすべて「松前」と呼ばれており、これが松前漬けの語源であると言われている。
(著者:北海道立工業技術センター 吉岡 武也)
