目次
第12章 藻類加工品 第1節 素干し品

十六島海苔

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主生産地

保存方法

常温保存

キーワード

髢のり/生のり/剥ぎのり/素干し/のり島

備考

Uppurui-nori/伝統的加工品

十六島海苔うっぷるいのりとは

 ウップルイノリ(写真1)は潮間帯付近の天然岩礁に着生する岩海苔の一種である。岩海苔はアマノリ属の通称でウップルイノリ、オニアマノリ、クロノリ、マルバアマノリ等が知られている。
 島根県では県下全域で岩海苔の採取・加工が行われているが、特に島根半島中央部に位置する出雲市十六島うっぷるい地区で生産されたものは「十六島海苔」あるいは「かもじのり」と呼ばれ、古来より品質の良さで有名である。
 十六島地区ではのり島(写真2)と呼ばれる潮間帯にある平坦な岩場の上で天然のノリを採取する。
 十六島地区で生産されるのり製品は生のり、素干し、剥ぎのりの3種類である。生のりは日持ちがしないため、現在ではほとんど出荷はされず自家消費される程度である。剥ぎのりは、のり島で天然乾燥したものを剥ぎ取ったものである。また、素干しは剥ぎのりの類似品で、つみ取った生ノリを手作業で簀の上で干した製品である。

写真1 ウップルイノリ(提供:島根県水産技術センター)
写真2 のり島(提供:島根県水産技術センター)

主な生産地

 島根県

生産の動向

 生産量と単価を図1に示す。生産量はその年の天候や海況によって左右されるため年変化は大きいが、概ね0.5~1トン/年程度で推移している。単価はその年の生産量や品質によって上下するが、100gあたり3,000~7,000円程度で取り引きされている。
 十六島海苔の中でも剥ぎのりの生産量は特に天候の影響を受けやすい。また、素干しの生産量も剥ぎのりの生産量やノリの生育状況に左右される。

図1 十六島海苔の生産量(漁業協同組合JFしまね平田支所資料より)

原料選択のポイント

 ノリの品質や採取量はのり島により大きな差がある。
 採取時期は12月上旬~2月頃までであるが、最も良質とされるのは採取が始まってから約1ヶ月である。2月頃になるとノリ葉体は太く堅くなり、色つやも悪くなる。

加工技術

<生ノリ>
 生ノリ(写真3)の採取は、岩肌一面に黒々と絨毯のように張り付いているノリを指先で巻き付けるようにして行う。冬場にのり島の上で行われる採取作業は、足場がノリのぬめりで滑りやすくなっており危険が伴う。時化が続くと作業ができないほか、成長したノリが切断して流出してしまうこともある。
 夾雑物が少ない良質なノリを採取するためには、年間を通してのり島を手入れ、管理しておく必要がある。夏季の波の穏やかな時に岩の窪みをセメントでふさぎ、砥石で岩盤を磨いて滑らかにしたり、ノリの付着期前にのり島表面の付着物を落とし、ノリの育成期には釣り客の立ち入りを禁止する等の取り組みが行われている。

<剥ぎのり>
 剥ぎのりはのり島に生育したノリが、好天日が続くことで干し上がったところを手で剥ぎ取ったものである(写真4)。自然の力を利用した原始的な製品であるが、葉体の向きや重なりが均一でかつ色、艶もよい十六島海苔の最高傑作である。しかしながら冬の日本海で好天日が続くことはほとんどなく、月に一度も収穫できないこともある。そのため、剥ぎのり作業は凪をみて昼夜を問わず行われる。

写真3 生ノリ(提供:島根県水産技術センター)
写真4 剥ぎのりの収穫作業(提供:島根県水産技術センター)

<素干し>
 採取した生ノリを手作業で隙間なくすだれに並べ、納屋等において陰干しで乾燥をさせたものである。

写真5 乾燥中の素干し(提供:島根県水産技術センター)

製造工程の概略

加工の実際

  • 原料 素干しは剥ぎのりの類似品であり、ノリは細切せずに摘み取ったままの状態のものを使用する。

  • 洗浄 海水を使用する。真水は使用しない。

  • 簾に並べる 生ノリを方向を揃えて並べる。簀の素材は、ノリが乾いたときに剥ぎやすいためプラスチック製よりも植物性の方が好まれる。

  • 乾燥 陰干しにより自然乾燥させる。

  • 製品 包装袋には通気穴を開け、冷暗所で保存する。

加工に用いる機器等

 すだれ

品質管理のポイント

 剥ぎのり、素干しは、半乾品であるため乾燥と光に弱い。蛍光灯下では一週間程度で変色するため、湿気や光の影響を受けにくい条件で保管する必要がある。なお、素干しに比べ剥ぎのりは変色しにくい。

製品の形態

 小売では10~30g程度のものが多いが、地域における贈答用では20~100g程度のものが選ばれることが多い。

写真6 十六島海苔(提供:島根県水産技術センター)

包装および保管方法

 包装袋には通気穴を開け、冷暗所で保存する。冷暗所で約2ヶ月、冷凍では約1年の保存が可能である。

調理方法および食べ方

 島根県出雲地方や中山間地域では正月の雑煮の具として用いる。また、弱火で軽く焙って酒肴やお茶請けとしたり、うどん、そば等にふりかけたりする。

コラム

「十六島海苔にまつわる三題」

のり島 
 のり島はその大半が個人の所有地であり、古来、16島あったといわれるが、明治以降では15島、総面積は約8,900㎡である。なお、のり島の一部は集落の共同管理下に置かれている。また、品質や生産量に応じて明治以降は等級別に格付けされている。

十六島海苔の歴史
 出雲国風土記によると、奈良、平安時代には貢納品として朝廷へ送られ、朝廷では最高級品として取り扱われた記録が残っている。また、室町時代には、公家、社寺、大名等の間で名が知られ、贈答品とされた。そして、江戸時代に入るとより有名となり各種料理や茶席で用いられたりした。

かもじのり
 古来、生ノリは束ねて藁掛けして販売されており、その形は女性が髪を結う時の添え毛の「かもじ」に似ているところから「髢のり」と称された。現在では十六島地区の十六島海苔の総称として素干し、剥ぎのりも「髢のり」と呼ばれることがある。

 (著者:島根県水産技術センター 開内 洋・細田 昇)