あおさのバラ干しとは
『あおさ』は三重県をはじめとする地域での呼び名で、海藻(緑藻)の一種であるヒトエグサを指す。あおさのバラ干しは、ヒトエグサを乾燥させたものである(写真1)。
なお、アオサ・ヒトエグサ・アオノリは分類的には全くの別種であるものの、混同されることが多い。また学問上の分類と食品としての利用分類は異なっており、アオサが「青海苔」と呼ばれたり、ヒトエグサが「あおさ」と呼ばれたりすることもある。これらのうち、国内で養殖されているもののほとんどがヒトエグサである。
以降、本稿では、三重県で『あおさ』と呼ばれているヒトエグサを、「あおさ」と記載して解説する。
(詳しくは、第12章「藻類加工品」の総論をご参照ください)
生産の動向・消費の動向
あおさは、三重県では中勢地域から東紀州地域までの広い範囲で養殖されており、養殖の盛期となる1~4月頃には各地の沿岸で養殖されたあおさの鮮やかな緑色の風景がこの地方の風物詩となっている(写真2)。三重県では、各養殖業者(漁業者)があおさの養殖からバラ干し加工までを一貫して行っている。
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三重県におけるあおさの生産量(乾燥重量)は、1991年に892tを記録したが、2003年以降は300~500t程度で推移している(図1)。三重県のあおさの生産量は、全国で最も多く、2022年の生産量は340tと全国の約6割のシェアとなっている。この傾向は長年変わっておらず、三重県はあおさの主要生産県として知られている。
あおさのバラ干しは、豊かな磯の香りが好まれ、つくだ煮をはじめ、天ぷら、みそ汁、卵焼きなど様々な料理の具材として食べられてきた。2016年に開催された伊勢志摩サミットで、食材としてあおさが活用されたことで、注目が集まり需要が高まった。
一方、近年、あおさ養殖は、気候変動や黒潮大蛇行の影響による海水温上昇に伴って、天然採苗の不安定化、クロダイやアイゴなどによる食害の長期化がみられ、安定生産のための技術開発が課題となっている。

原料選択のポイント
漁場で良く成長した緑色が濃いあおさを用いて加工することにより、評価の高いバラ干しにつながる。また、木の葉や鳥の羽毛、糸くず、砂等の夾雑物が少ない方が、加工工程で除去にかかる手間が少なくなるとともに、高品質なバラ干しとなる。
加工技術
あおさは冬季に収穫され、洗浄、脱水、乾燥を経てバラ干しとなる。養殖業者は、品質の良いあおさのバラ干しを生産するために、夾雑物がないよう特に注意をはらっている。
製造工程の概略

加工の実際
- 原藻 漁場で良く成長した緑色の濃いあおさを選ぶ(写真2)。
- 水揚げ 取り上げた養殖網をたたき機に通して、あおさを網からはずす(写真3)。地域によっては、漁場でもぐり船を使って養殖網から直接あおさを刈り取って収穫する場合もある。
- 洗浄 網からはずしたあおさをのり洗い機や水流式選別機に入れ、海水をかけ流しながら、砂や泥を洗い流す(写真4)。水洗い製品を作る場合は、海水での洗浄後に水道水での水洗いを行う。
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(撮影:三重県水産研究所)
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- 脱水 洗浄したあおさを脱水袋(写真5)に入れ、脱水機にかける(写真6)。しっかりと脱水することで、あおさの水分が抜けて、次の工程でほぐしやすくなる。
- サバキ 脱水したあおさをサバキ機に通してほぐす(写真7)。
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- 乾燥 ほぐれたあおさを、目についた夾雑物を取り除きながらセイロに薄く並べる(写真8)。セイロを乾燥機に入れ、35~40℃で半日程度乾燥させる(写真9)。
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- 袋詰め 乾燥したあおさを袋に詰め、10kg(水洗いの場合は7kg)ずつ段ボールに入れて出荷する(写真10)。
- 製品 小分けして、プラスチック袋に入れて製品とする(写真11)。
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加工に用いる機器等
あおさのバラ干しの製造には、工程ごとにのり洗い機(写真4)、脱水機(写真6)、サバキ機(写真7)、乾燥機(写真9)などの機器が使われている。
品質管理のポイント
夾雑物がないことが、品質管理・食品の信頼性のうえで特に重要となる。収穫前の養殖漁場では木の葉等のゴミが多い場合は養殖網を水中に下げてゴミだけを浮かせて分離したり、収穫後の加工工程では丁寧な洗浄や目視での除去を行っている。また、加工機器から出る錆などの混入防止のため、ステンレス製品を極力使用するとともに機器洗浄や定期的なペンキ塗装もしっかりと行う。
製品の形態
養殖業者は乾燥させたあおさを10kg(水洗いの場合は7kg)ずつ段ボールに入れて等級検査をして出荷する。バラ干しの製品は、小分けしてプラスチック袋に入れて販売されている。
包装および保管方法
プラスチック袋で包装した製品は常温で販売されるが、変色を避け長期間安定して保管するためには冷凍保管する。
調理方法および食べ方
磯の風味ある香りと味のあおさは、つくだ煮の原料にされるほか、天ぷらやみそ汁、卵焼き、酢の物、パスタの具など様々な料理の具材として用いられる。
(著者:三重県水産研究所 阿部 文彦・岡 謙佑)
(協力:三重外湾漁業協同組合 中村 拓也)
