かつお節エキスとは
かつお節エキスとは、かつお節を主原料として抽出した抽出液から造られる加工食品原料であり、抽出方法や濃縮方法、濃縮度合い、副原料の配合により様々なタイプがある。つゆ、タレ、即席みそ汁など、主に和風の加工食品の原材料として幅広く利用されている。
主な生産地
かつお節の生産地は鹿児島県と静岡県であるが、それを原料とするかつお節エキスは、全国の様々な調味料メーカーで生産され販売されている。
生産の動向
かつお節エキスの生産数量は水産エキスの中で最も多く、2024年では総生産量の37%を占め、2万tを超える量である(図1)。かつお節エキス生産数量の推移(図2)をみると、2000年初頭には1万4千t弱の生産量であったが、スーパーマーケットやコンビニエンスストアでの中食や和食ファーストフード店の増加、和食に対する健康イメージの高まり、海外での和食ブームなどで2016年には2万tを超え現在に至る。
かつてのかつお節エキスは、常温や冷蔵で保存できるよう高濃度に濃縮されたものや、副原料によって保存性を高めた製品が主流であった。しかし、近年では濃縮をあまり行わない製品や全く行わない低濃度のだし汁製品も多くなってきている。それら低濃度のだし汁製品の伸長が、かつお節エキス全体の生産数量にも影響していると考えられる。

(日本化学新聞社2025.09.25をもとに㈱マルハチ村松でグラフ作成)

(㈱食品化学新聞社の許可を得て、過去の記事を集計、一部補正を行い、㈱マルハチ村松でグラフ作成)
原料選択のポイント
かつお節エキスの製造原材料としては、荒節または枯節が使われる(写真1)。荒節は特徴的な燻製臭が強く、枯節より安価であるため、かつお節エキスの大半は荒節を原料としている。枯節は香りが穏やかでやわらかな味が特徴であり、高級感や上質タイプのかつお節エキスの原料として用いられる。
かつお節エキスを製造する際には、だし取り工程(抽出)に先立ち、かつお節を、目的とする味や香り、抽出効率、および作業適性によって、厚削り、薄削り、粒状の粗粉砕品、微粉末品などの形状にあらかじめ原材料を加工して、使い分けている。
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使用する副原料
かつお節エキスはかつお節を主原料とするが、品質の特徴づけのために、宗田節やさば節、その他魚節や昆布を併用した製品もある。
かつお節を煮出した抽出液は、比較的低濃度であるため、これを濃縮する他に、副原料を添加して濃度を高める場合が多い。また味の補強や濃度の補正にカツオエキスが使われることもある。味の補強目的ではその他にも、酵母エキスやタンパク加水分解物、イノシン酸ナトリウムやグルタミン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウムなどが使われる場合がある。
微生物の増殖を抑え保存性を高める目的では、食塩や還元でんぷん分解物、アルコールなどが使われる。アルコールはかつお節の香りをよく溶かし出すことから、アルコール水溶液が抽出の溶媒として使われることがある。また、濁りや沈殿物に対する品質安定の目的で増粘多糖類が使われる場合がある。
近年では、かつお節のだしの風味をそのまま製品化するために、副原料を全く含まない低濃度の製品もある。
加工技術
かつお節エキスの製造には定型的な方法はなく、各メーカーが独自のノウハウを活かして特徴ある品質の製品づくりに取り組んでいる。工程の有無や順序、条件設定を工夫することで、品質の向上やバリエーションの拡充が図られている。
かつお節エキスの品質を特徴づけるのは香りと味であり、これらに強く影響する加工工程は、前述の原材料加工に加えて、抽出工程および濃縮工程である(表1)。他工程においても香りや味は変化し、最終製品の個性が形成されるが、本稿ではかつお節エキスの製造で使われる典型的な製造技術について解説する。

製造工程の概略

加工の実際および加工に用いる機器
かつお節エキスの製造工程は原材料加工、抽出、固液分離、濃縮、副原料混合、殺菌、計量充填、製品に分けられる。
- 原材料加工 主原料のかつお節は抽出前に削り(写真2)または粉砕する必要がある。かつお節を削り節の状態にして抽出すると、家庭や専門店で用いられるだしに近い風味の抽出液(だし汁)が得られる。
家庭で使われる厚さ0.2㎜以下の薄削りを抽出用の原材料として使用すると、抽出液は軽く、柔らかで、広がりのある風味となる。しかし薄削りはかさ重量が極めて低いため、多量を一度に抽出用水へ投入することが困難である。また、多量を投入すると、固液分離の際に得られる抽出液の液量が減少する。
そば店などで使われる厚さ0.2~1.0㎜程度の厚削りは、薄削りよりも多くの量が投入でき、濃いだし液が得られる一方、抽出には薄削りよりも長い時間を要する。また、厚削りのだし汁の香りは、薄削りよりもやや重く燻製臭を強めに感じる。
これら削り節から抽出した抽出液の香りは、後工程に減圧濃縮がある場合、その濃縮程度によって減少する。
かつお節を3~5㎜程度の粒状に砕いた粗粉砕品で抽出する場合は(図3)、厚削りよりもさらに多くのかつお節を投入でき、濃い抽出液が得られる。粗粉砕品よりもさらに細かい微粉末のかつお節粉末を抽出に使う場合もあるが、前処理として行う原材料加工が複雑で、後工程の固液分離も困難になることから、かつお節エキスの抽出原料とすることは少ない。
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(提供:㈱マルハチ村松)
- 抽出 抽出には一般的に水(熱水)が使われる。かつお節の脂溶性の香り成分を引き出したい場合はアルコール水溶液が使われる場合がある。
抽出の温度は、軽く柔らかな香りを重視する場合は低温で行われる。一方、味を重視してより濃い抽出液を得たい場合は高温で行われる。
抽出時間は、原料加工の形状や、求める香り・味に応じて調整される。一般的に抽出時間は、薄削りでは短時間で抽出され、厚削りや粗粉砕品では長めの時間が設定される。味の成分を効率よく抽出する場合は攪拌が行われるが、撹拌により渋味やエグ味が強く発現したり、抽出液が濁る場合もある。
また特殊な抽出方法として超臨界抽出がある。この方法は、高圧下で二酸化炭素を溶媒に、通常では溶け出しにくい成分を抽出することができ、主に香り成分などを高濃度で抽出することが可能である。
- 固液分離 所定の抽出を終えたら、抽出液から抽出原料(抽出残渣)を取り出す。薄削りや厚削りを使用した場合は、パンチングメッシュ(金属の板に穴を空けて加工したスクリーン)や粗い網で分離する。粗粉砕品を用いた抽出、または厚削りでも粉末状に崩れたかつお節が多い場合は、振動篩機を使用する。微粉末での抽出や、微粉末を含む粗粉砕品の場合は、遠心分離機で抽出残渣を分離する(図4)。抽出液を清澄にする場合は、さらにフィルタープレス機やメンブランフィルターで精密にろ過する。
一般的に、抽出液の清澄度を高めるほど、その香りは減少する。
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- 濃縮 一般的なかつお節エキスは、抽出液の濃度を高めるために濃縮が行われる。
濃縮とは抽出液中の水分(あるいはアルコール分)を減少させ、香りや味成分の濃度を高める操作である。 濃縮は、多くの場合は減圧濃縮により行われる(写真3)。これは抽出液を減圧下の沸点が100℃以下に下がった状態で効率よく水分を蒸発させる方法である(「第9章第2節 カツオエキス」製造工程参照)。
濃縮中は、蒸発を効率的に進めるために比較的長時間の加熱が必要となる。この継続的な加熱により成分が変性するほか、減圧条件下では揮発性の香り成分が一部失われることがある。また、減圧濃縮では、水分を90%以上含む抽出液を最高で40%程度まで濃縮するため、濃縮後の風味バランスが大きく変化する点にも留意が必要である。
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濃縮には、熱を加えずに行う逆浸透膜(RO膜)濃縮を行った製品もある。逆浸透膜を使い抽出液から水分のみを濾し出す原理で濃縮を行う(図5, 6)。この原理は海水の淡水化装置と同様で、海水から水分だけを取り除くことで、残った液側の塩分やミネラルの濃度が相対的に高まり、結果として濃縮される仕組みである。この方法は、減圧や熱を伴わずに濃縮が進むため、香り成分の損失が極めて少ないという利点がある。一方で、逆浸透膜の特性上、濃縮できるのは水分約80%程度までの比較的低い濃度に限られる。
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(提供:㈱マルハチ村松)
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その他の濃縮方法として、抽出液を冷却し真水のみを凍結させ、氷として取り除く「凍結濃縮」がある。しかし、この方法は食品加工分野ではあまり使われていない。
濃縮工程では香り成分の消失などにより風味のバランスが変わる。これを避けるため、あらかじめ原材料の投入量を多くして濃い抽出液を得ることで、濃縮を行わない方法もある。
- 副原料混合 濃縮を終えた濃縮液は、調合タンクなどで副原料が加えられ、撹拌混合される。混合時には、次工程の加熱殺菌の予備加熱を兼ねて、加熱をすることが多い。
また、濃縮や副原料の混合による濃縮液(混合液)の溶解度が低下したり、加熱によるヒートショックで内容成分が析出して濁りが発生する場合もある。清澄な性状が求められる場合は、この工程の後に精密ろ過を行うこともある。
- 殺菌 製品設計において、常温保存が可能な高い保存性が求められる場合は、調合タンクなどで80~95℃での加熱殺菌を行う。また、100℃以上の殺菌が必要な場合は、プレートヒーター(図7)やシェルアンドチューブ式殺菌装置(図8)が使用される。さらに、高粘度の性状の製品については、ヘリコイド式殺菌装置(図9)やジュール式殺菌装置(図10)が使用される。
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(提供:㈱マルハチ村松)
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(提供:㈱マルハチ村松)
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- 計量充填 既定の容器に計量し、充填を行う。一般的なかつお節エキスは常温または冷蔵保存製品であるため、常温で充填される。アルコールを含まない製品でヘッドスペース(容器内の上部空間)が生じる容器の場合は、カビの増殖を抑えるため、ホットパック充填(充填時に内容物を加熱する方法)が行われることがある。また、低濃度で保存性の低い内容物の場合は、紙パックやアルミ蒸着袋に無菌充填する製品もある。
- 製品 かつお節エキスは様々なタイプがある。原材料のかつお節が枕崎や焼津といった国内有名産地で製造されたことを訴求した製品や、かつお節の特徴的な燻製臭や呈味力が強い高濃度タイプ、アルコールを使い香りを高めたタイプ、削り節でとった自然で軽いやわらかなだし汁の風味を再現した低濃度タイプなどがある。
核酸やアミノ酸を添加し味の強さを増強したタイプ、酵母エキスの添加によって肉質感やコク・ノビを前面に出したタイプ、あるいは食品添加物や副原料を使用しないことを特徴としたタイプなどもある。
また、液体ではなく、噴霧乾燥(スプレードライ)によって粉末化したエキスパウダー製品も製造されている。
品質管理・安全衛生管理のポイント
製造において目標とする品質を実現するためには、使用原材料の選定や各工程での影響を勘案した条件設定が必要となる。
かつお節エキスでは原材料の濃縮度合いや副原料の要因から、製造直後または保存中に濁りや沈殿物が発生する場合がある。かつお節以外で併用する抽出原料の有無や種類・数量、その他副原料の種類・数量、製品の濃度、アルコールの有無・濃度、pHによって溶解度が変わり、溶けきれなくなった成分が析出し濁りとなったり、それらが凝集して沈殿物となったりする。これらの析出や沈殿物は温度変化によっても発生し、特に季節や納品先地域の温度差によって生じる場合がある。析出物や沈殿物自体は安全衛生上の問題はないが、性状品質として問題となる場合は、原材料の調整やろ過などの対策が必要となる。
原材料や製品品質以外でも、工場のHACCP認証やFSSC22000認証といった食品安全管理、さらにはハラル認証も製品の特徴付けの要素となっている。
製品の形態と保管方法
かつお節エキスは加工用原料であるため、液体の場合1,000Lコンテナや200Lドラムまたは20kgバッグインボックスが主流である。低濃度品でも常温保存が可能な無菌の紙パック容器やバッグインボックスに充填された製品がある。(写真4, 5)
高濃度のかつお節エキスの多くは常温でも腐敗しないよう設計されているが、香りや味の経時変化を抑えたり、カビの増殖を防いだりする目的で、冷蔵保存とする場合もある。いずれの場合でも、前述のとおり析出や沈殿を避けるためには、定められた保管方法内であってもできるだけ温度変化を少なく保つことが望ましい。
粉末製品の場合は10㎏、20㎏あるいはそれ以下の形態で常温保存が可能である。粉末のエキス製品は吸湿性が高く、保存中に固結したり、製品や包材がべたついたりしやすいため、充填環境や包装資材への配慮が必要となる。
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(提供:㈱マルハチ村松)
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(提供:㈱マルハチ村松)
使用用途
かつお節エキスは加工食品原料であるため、一般消費者がそのまま口にすることはなく、液体だしの素、めんつゆ、タレ、だし入り味噌・即席味噌汁、即席麺スープ、レトルト惣菜、スナック菓子などの調味のベースとして使われている。
液体のかつお節エキスをスプレードライ加工し、粉末にしたかつお節エキスパウダーもあり、粉末のだしの素や粉末スープ、粉末味噌汁、スナック菓子用シーズニングなどに使われている。
同類製品例
食品の原材料表示で、かつお節エキスやカツオエキスという表示が見られる。かつお節エキスの原材料は燻乾されたかつお節であり、カツオエキスの原材料はカツオ生肉であることから、それらの風味品質は大きく異なる。しかし、一般的にかつお節エキスも「カツオエキス」と表記されている場合もあるようである。同様に「かつおだし」や「だし」という表示も見られる。
エキスの定義に関して『水産食品学:須山 三千三/鴻巣 章二』によると、「生物組織や食品を細切し,水あるいは熱水で抽出すると,種々の水溶性成分が溶出してくる.これらのうち,タンパク質,色素,ビタミン,多糖などを除く有機成分を一括してエキス成分(extractive components)という」と記載されている。
また、日本エキス調味料協会の自主基準では「食品として用いられる農・水・畜産物を原料として、衛生的管理の下に抽出又は搾汁、自己消化、酵素処理、精製、濃縮等により製造し、原料由来の成分を含有するもの、またはこれに副原料、呈味成分を加えたもので、食品に風味を付与するものをいう。」と定義されており、補足として「原料の中に酵母を含む。抽出にアルコール抽出を含む。抽出又は搾汁、自己消化、酵素処理は、これらの単独及び組合せを含む。精製、濃縮等は必要に応じて行う。副原料、呈味成分の添加は、必要に応じて行う。」と記載されている。
「だし」の定義を公的に記したものはないが、一般的に液体の「だし汁」を表し、かつお節や昆布などの抽出液を指す。前述の定義などから「だし」もエキスの範疇に含まれる。一般的には高濃度なイメージのあるエキスとは対照的に、「だし」は濃度が低いイメージがある。また、かつお節の削り節や粉末の固形物を「だし」と称する場合もある。
参考文献
・須山 三千三「水産食品学」須山 三千三(編集), 鴻巣 章二 (編集) 恒星社厚生閣. 1987;48
・日本エキス調味料協会.エキスの定義.エキスの規格に関するガイドライン.
http://www.ekisu.jp/service
・一般社団法人 日本鰹節協会. かつお節(鰹節)の定義. http://www.katsuobushi.or.jp/about.html
・食品化学新聞社.2025年9月25日号誌面他
・農林水産省 令和4年水産加工統計調査. 2-1 水産加工品の加工種類別品目別生産量(都道府県別)(令和4年). 水産物流通調査 確報 令和4年水産加工統計調査 年次 2022年 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
(著者:株式会社マルハチ村松グループ本社 山口 晴康)
