酒盗とは
酒盗とはカツオの内臓を使った塩辛のことで、かつおぶし等を製造する際に除かれる内臓(胃・幽門垂・腸)を塩蔵、熟成したものである。伝統的に製造されていた辛口のほかに、塩分を下げて調味加工した甘口、胃と腸だけで熟成させたものがある。
主な生産地
鹿児島県、静岡県、神奈川県、高知県
原料選択のポイント
新鮮なカツオから取れる内臓を用いる。4~5kgのカツオ(写真1)から取れる内臓(写真2)が処理しやすい大きさであるが、約1.5kg以上であれば使用する。内臓が変色しているものは原料として使わない。
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加工技術
酒盗の基本的な製造原理は、カツオの内臓に約30%の食塩を加えて腐敗細菌の増殖を抑え、約1年間の熟成期間中に自己消化と有用微生物の作用によってうま味と独特の風味を付与するものである。使用する内臓は、胃・腸・幽門垂で、これらに含まれる自己消化酵素により、幽門垂は溶け、うま味のもととなる。酒盗には辛口、甘口、胃腸のみの3種類がある。辛口は、伝統的製法により製造されている。甘口は、辛口を真水などにさらして塩を抜き、みりんや香辛料で調味してつくられる。胃腸のみの酒盗は、胃と腸だけを選別し、食塩を加えてl~2ヶ月間熟成させた後、甘口と同様に塩抜きして調味する。胃腸のみの酒盗は伝統的手法で製造されている辛口や甘口と比べ、熟成期間が短いため、自己消化や有用微生物によって醸し出されるうま味や風味が少ないが、逆に「クセがなく食べやすい」という消費者からの評価から、近年消費を伸ばしている。
製造工程の概略

加工の実際
- 原料 かつお節やカツオ加工品の製造時に分離した新鮮なカツオの内臓が使用されている。
- 選別 胃、幽門垂、腸以外のえらや胆嚢、脾臓を除去する。また、胃の広がりすぎているものは食感が悪く、赤すぎるものや黒膜が付着しているものはできあがりの色が悪くなるため使わない。胃腸のみの酒盗の場合は、幽門垂も除去する。
- 洗浄 水を張った容器で、流水に晒して洗浄する。(写真3)
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- 内容物除去 胃と腸を切開し、包丁でしごいて内容物を除去する。幽門垂はなるべく傷つけない。胃や腸が大きい場合は細切りする。
- 水切り プラスチック製の網の上にひろげ、水切りする。
- 塩漬け 内臓に対して約3割の食塩をまぶす。全体に行きわたるようによく混ぜかえす。
- 熟成 プラスチック容器の中で約1年間熟成させる。初期によくかき混ぜる。仕込み時期や気温により熟成を見極める(写真4)。
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- ミンチ 熟成が終わったら、径約1cm目のプレートを通過させて細かくする。
- 塩抜き 真水などに晒して塩を抜く。
- 調味 みりんや香辛料からなる調味液に漬け込む(写真5)。味をなじませるために、数日間程度漬け込む(写真6)。
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- 容器詰め びんまたは陶器に詰め密栓する。(写真7)
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加工に用いる機器等
ミートチョッパー、プラスチック製漬け込み桶
品質管理のポイント
熟成中に浮いてくる脂は酸化臭の原因となることがあるので、除去することが望ましい。カツオは餌とともにプラスチックの浮遊物を食べていることがあり、これが製品に混入することがあるので注意する。胃や腸を切開し、よく内容物を掻きだすことも重要である。
製品の形態
一般的にはびんや陶器に詰めるが、最近では食べきりサイズのパック詰めされたものもある。
包装および保管方法
びん、陶器、プラスチックパウチ、常温保管
調理方法および食べ方
そのままで酒の肴にするのが一般的である。さまざまな料理の隠し味に用いたり、クラッカーにクリームチーズとともに載せ、オードブルなどにも調理されたりして喫食されている。
参考文献
・藤井 建夫.酒盗と飯盗の違いは.「魚の発酵食品」 成山堂書店.2000;32-34.
・藤井 建夫.塩辛.「増補 塩辛・くさや・かつお節」 恒星社厚生閣.2001;31-52.
・宮川 逸雄.酒盗.「土佐の料理」 高知印刷.1979;234-235.
・森 勝美.塩辛類,カツオの塩辛「食品の熟成」.光琳.1984;649-650.
(著者:元高知県工業技術センター 北村 有里、高知県工業技術センター 竹田 匠輝)
(協力企業:有限会社 竹内商店、株式会社 まなべ商店)
