目次
第10章 缶詰・レトルト 第2節 その他缶詰

ほたてマヨネーズ缶詰

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保存方法

常温保存

キーワード

マヨネーズ/ヒモ/乳化剤

備考

Hotate-mayonnaise-kanzume/都道府県開発製品

ほたてマヨネーズ缶詰とは

 ボイルしたホタテガイのむき身から貝柱と外套膜(以下「ヒモ」)を採取し、繊維状にほぐした貝柱と切り分けたヒモにマヨネーズを和えたもの。そのまま食べたり、パンに乗せてトーストしたり、サラダなどの和え物にも使われる。
 ほたてマヨネーズ缶詰が生産されたのは1973年頃であるが、1968~1977年にかけて当時の青森県水産物加工研究所(現:青森県産業技術センター食品総合研究所)がホタテガイの消費拡大と価格安定を図るため「ホタテガイ新製品開発研究」事業に取組み、開発されたものである。背景には、養殖技術の発展により、種苗の量産化、計画生産が可能となり、ホタテガイ原料が安定的に供給されるようになったことが大きな要因といえる。

主な生産地

 北海道、青森県、宮城県

生産の動向

 漁業・養殖業生産統計(農林水産省)によると、2000年以降の生産量は、漁業・養殖業あわせて年間50万トン前後で推移しており、生産額は561~1,095億円の範囲にある(図1)
 漁業生産は、ほぼ全てが北海道のオホーツク海と根室海峡の沿岸域で行われており、国内および海外向けに冷凍貝柱(玉冷)、干し貝柱、殻付きのままの冷凍品(両貝冷凍)などに加工され、生産量は概ね30万トン前後で推移している。養殖業生産量は、国内全体では12~27万トンの範囲にあり、北海道(噴火湾と日本海沿岸)と青森県(陸奥湾)で全体の9割以上を生産している。

図1 ホタテガイの国内生産の状況(資料:一般社団法人全国水産技術協会)

原料選択のポイント

 原料となるホタテガイは、その旨味成分の指標となるグリコーゲンが7~9月にかけて最も多く蓄積されることから、この時期に漁獲された原料を確保することが望ましい。

使用する副原料

 ホタテガイに混ぜるマヨネーズは加熱殺菌時に分離しないよう、乳化剤は耐熱性の増粘多糖類が主成分のものを用いる。

加工技術

 蒸煮後のむき身から貝柱を取り出す際には、貝柱周縁部のウロ等の夾雑物が残らないように丁寧に取り除く。貝柱をボイルする時間の目安は、加熱した貝柱の中心部の筋繊維を指で摘まんで引っ張り、繊維状に抜き取れるくらいが丁度よい。加熱後の流水冷却は、貝柱の中心部まで完全に冷やす。冷却が不十分な場合には、撹拌機でほぐす際に繊維がつぶれて結着し、団子状になる場合があるので注意が必要である。また、貝柱だけではなくヒモも使用することにより、歩留まりの向上が図られる。
 マヨネーズの調製にあたっては、予め使用する撹拌機の容器、シャフトを温めておく事、混ぜ合わせる順番に注意する事、サラダ油を加える際には乳化を確認しながら少量ずつ加える事などがポイントとなる。また、レトルト殺菌にあたっては、温度が高すぎる場合、マヨネーズ、貝柱、ヒモの褐変が起きるため、レトルト殺菌の目安であるF値4以上を担保しつつ、かつ褐変しない温度帯で殺菌する事が重要となる。

製造工程の概略

加工の実際

  • 原料の洗浄 大量に処理する場合には連続式のドラム洗浄機、少量であればタンク漬けして、貝の表面の汚れを水洗いする。

  • 蒸煮 スチームコンベヤー等で貝の口が開く程度に加熱する。

  • 脱殻 脱殻機で貝から軟体部を振るい落としてホタテガイのむき身にする(写真1)

写真1 ホタテガイのむき身(角 勇悦 提供)

  • ウロ取り むき身から中腸線(以下「ウロ」)部分を丁寧に取り除いてウロ取りむき身にする。

  • 貝柱・ヒモ採取 ウロ取りむき身から、貝柱とヒモを採取する。この際、夾雑物が付着しないよう丁寧に処理する(写真2)

写真2 貝柱とヒモを採取(角 勇悦 提供)

  • ヒモ処理 ヒモの重量に対して3%の食塩を振りかけ、ミキサーで撹拌しながら茶褐色部分を除去し、最後に水洗いして水切りする(写真3,4,5)

  • 貝柱・ヒモボイル 二重釜に沸騰水を張り、貝柱とヒモを投入して再沸騰後10~12分煮熟するが、貝柱の中心部まで十分に熱が通ったことを確認する。煮熟後は、流水中で貝柱の中心部まで十分(30分以上)冷却し、ザル上げして水切りする(写真6)

  • 貝柱ほぐし 貝柱はミキサーで撹拌しながら繊維状にほぐすが、撹拌が長すぎると繊維同士が結着してくるので、その見極めが重要である(写真7)

写真6 貝柱中心の加熱確認(角 勇悦 提供)
写真7 貝柱を繊維状にほぐす(角 勇悦 提供)

  • ヒモ切断 処理したヒモを長さ1cm程度に切り分ける。

  • マヨネーズ調製① 乳化剤、脱脂粉乳、コーンスターチの混合粉末に少量のサラダ油を加えてよく混ぜる(写真8)

  • マヨネーズ調製② 撹拌機を使用し、食塩、砂糖主体の調味香辛料を沸騰水で溶解する(写真9)

  • マヨネーズ調製③ ②の溶液に①の混合油を少量ずつ加えて混合した後、サラダ油を数回に分けて加えながら撹拌し、その都度乳化を確認する(写真10)

  • マヨネーズ調製④ ③の乳化物に乾燥卵黄(水溶き)、醸造酢を加えてよく混ぜる。マヨネーズの調製終了(写真11)。 

写真8 ①の混合油(角 勇悦 提供)
写真9 ②の溶解液(角 勇悦 提供)
写真10  ③の乳化物(角 勇悦 提供)
写真11 調製したマヨネーズ(角 勇悦 提供)

  • 真空撹拌 真空撹拌機で貝柱+ヒモ(4割)とマヨネーズ(6割)を脱気しながら15分間混合撹拌する。手返しして更に15分間混合撹拌する。

  • 硫酸紙の成形 平3号(任意)の空缶、硫酸紙、瓶(缶の内径に収まるサイズの瓶)を用意する。最初に硫酸紙を瓶に合わせて円柱状に成形し、はみ出た部分を瓶底に折りたたみ、そのまま空缶に落とし込む(写真1213,14)

  • 充填 次に真空撹拌したほたてマヨネーズを充填し、缶底をテーブルに落として缶内の空気を押し出す。最後に硫酸紙の端から反時計回りの中心に沿って90度の角度で折り込む。(写真15,16,17)

  • 巻締 充填した缶に蓋を載せ、真空巻締機で巻き締める(写真18,19,20)

  • 加熱殺菌・冷却 巻き締めたほたてマヨネーズ缶詰をレトルト殺菌釜に入れて、所定の温度・圧力で加圧加熱殺菌する。流水中で冷却したら洗剤で缶の表面を洗浄し、水洗いして水切りする(写真21)

写真21 ほたてマヨネーズ缶詰(角 勇悦 提供)

加工に用いる機器等

 ドラム式洗浄機、スチームコンベヤー、脱殻機、蒸気式二重釜(写真22)、撹拌機、真空撹拌機(写真23)、真空巻締機、レトルト(缶詰)殺菌釜(写真24)

品質管理のポイント

 缶詰は加工食品の中でも保存性が高い食品であり、長期間に亘って保存することができる。しかし、貯蔵中の温度等の影響で風味が徐々に変化し、品質が低下することは避けられない。常温貯蔵した場合、商品としての品質を保持できる期間、いわゆる賞味期限は、ほたてマヨネーズ缶詰で3年が目安となる。

安全衛生管理のポイント

 ホタテガイ等の二枚貝は、特定のプランクトンを摂取することにより、時期的に貝毒を蓄積することがあるが、国(厚生労働省、水産庁)は、これら貝類の食品としての安全性の確保と加工流通過程における適切な取扱いが図られるよう通達している。ホタテガイ等の二枚貝における貝毒は、食中毒の発症症状によって分けられ、麻痺性貝毒や下痢性貝毒等が存在する。いずれもホタテガイ等が餌として食べたプランクトン(渦鞭毛藻類)が毒化の原因といわれており、麻痺性貝毒はアレクサンドリウム属が、また、下痢性貝毒ではディノフィシス属が原因種であるとされている。これらは主に中腸腺に蓄積するので注意が必要である。

特徴的な成分

 ホタテガイには、タンパク質、脂質、カルシウム、ビタミン、糖質、鉄分、リンその他のミネラル等豊富な栄養成分が含まれる。特に貝柱の主成分はタンパク質であり、含有量は平均的な魚肉のタンパク質含有量に匹敵する。

健康機能性成分

 栄養効果の期待できる成分として、ビタミンB1とアミノ酸の一種タウリンがある。ビタミンB1は「心臓と神経のビタミン」と呼ばれ、神経や心臓に影響力の大きなビタミンである。また、タウリンは目や脳の発達を助け、その他コレステロール(悪玉コレステロール)を減らす効果があり、血圧を下げる働きがある。
(水産物に含まれる各種成分の効能については、「この図鑑の使い方」末尾の【参考情報】をご参照ください)

製品の形態

 加工会社では、主に一箱24缶入れで箱詰めしてから出荷している。

包装および保管方法

  缶詰のため常温で保存可能である。

調理方法および食べ方

 おかずやおつまみとしてそのまま、香味野菜と和えたサラダをパンに乗せてオープンサンド(写真25・挟んでサンドイッチや厚焼きサンド、バケット・アボカド・野菜・チーズと合わせたチーズアヒージョ(写真26)、酢飯と合わせた手巻き寿司(写真27)、春巻きの皮で包んで生春巻き、おにぎりの具など、バリエーションは多岐にわたる。

参考文献

・和田時夫.変わる水産資源(3.国内の生産・消費との関係3.1国内生産の状況). 「水産振興コラム」(一社)全国水産技術協会(2024.2)

(著者:青森県産業技術センター 下北ブランド研究所 角 勇悦)