目次
第10章 缶詰・レトルト 第1節 魚類缶詰

さば味噌煮缶詰

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保存方法

常温保存

キーワード

カード形成/ヒスタミン

備考

Saba-misoni-kanzume/伝統的加工品

さば味噌煮缶詰とは

 サバの切り身を味噌と砂糖、日本酒、みりん、ショウガなどを基本とした調味料で煮込んだ魚料理で、日本のサバ料理として代表的なものの一つである。味噌で煮ることによりサバの魚臭さがやわらぐ効果もある。なお、サバの味噌煮は全国的に食べられている調理法で、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等で、冷凍品や冷蔵品を購入することも可能であるが、ここでは東日本主流のさば味噌煮缶詰について記載することとしたい。

主な生産地

  青森県、岩手県、宮城県

生産の動向

 2011年以降、日本全国のさば缶詰生産量はおよそ2~5万t(2011年:2万8千t~2022年:5万t)で推移した。2024年(図1)は約2万7千t生産され、全体の約45%を青森県で生産している。

図1 サバ缶詰の都道府県別生産量(資料:経済産業省・2024年経済構造実態調査 製造業事業所調査より抜粋)

原料選択のポイント

 三陸沿岸では、主にまき網船によってマサバとゴマサバが漁獲され、特に秋から冬にかけて脂乗りが増すことから、この時期のサバを冷凍ブロックとして確保し、原料としている。缶詰のサイズによるが、主に小型の300~400g程度の魚体を使用することが多い。鮮度が悪い原料ではレトルト殺菌後も残存するヒスタミンのリスクや身割れ、魚臭などが生じる恐れがある等、高鮮度な原料ほど良質な缶詰が製造できるため、鮮度も重要である。

加工技術

 さば味噌は、主に味噌煮缶詰や近年ではレトルトパウチ製品として製造されるが、加熱殺菌時に魚肉から溶出した水溶性タンパク質が凝固して豆腐様のカード(凝固物)を形成し、開封した際の外観が損なわれる。そのため、防止策の一つとして、食塩濃度5~10%の塩水に30分間程度浸漬するなどし、予めカード形成を防止する必要がある。
 缶に魚肉を詰める際は一段詰めとし、尾部の三角形の肉(以下、「三角肉」)は重量の調整用として用いる。肉詰めの際の注意点は抱き合わせ方で、魚肉の大・小及び三角肉の組み合わせにより、極力隙間の少ない詰め方が好ましい。

製造工程の概略

加工の実際

  • 原料 冷凍保管庫に保存している冷凍ブロックサバを使用する。

  • 解凍 冷凍ブロックサバの解凍は前日の夕方から翌朝にかけて行うが、少量の場合には5℃程度の冷蔵庫中で解凍し、大量に処理する場合にはタンクに水を張って浸漬解凍する。いずれにしても完全に解凍するのではなく、包丁で切れる程度の半解凍状態にとどめ、極力作業中の鮮度低下を抑える。

  • 原料処理 最初に背鰭、胸鰭、腹鰭を包丁又は調理バサミで切り落とす。次に頭部を切断して開腹し、内臓を除去する。包丁で腎臓に切れ目を入れ、ブラシでこすって洗い流す。

写真1 内臓除去
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)
写真2 腎臓に切れ目を入れる
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)
写真3 ブラシで洗い流す
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)

  • 切断 処理した原料は、使用する缶のサイズ・高さに合わせて一定の幅に切断する。尾部は尾鰭の付け根から2㎝の所で切断する。

写真4 缶の高さに合わせる
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)
写真5 包丁で切断
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)
写真6 缶からはみ出さない
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)

  • 塩水晒し 一定幅に切断した原料の血液除去及び加熱殺菌時のカード形成防止のため、予め塩分5~10%の塩水に30分間程度浸漬する。最後に水洗いして水切りする。

  • 調味液調製 味噌、砂糖、アミノ酸等主体の調味液を調製する。

写真7 調味液調製①
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)
写真8 調味液調製②
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)
写真9 調味液調製③
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)

  • 魚肉充填 塩水晒しした魚肉を缶に詰める際には、魚肉の大・小の抱き合わせと三角肉の組み合わせにより、缶内の隙間が少ない詰め方をする。

写真10 魚肉を計量する
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)
写真11 肉詰め(不良缶)
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)
写真12 肉詰め(良好缶)
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)

  • 調味液注入 所定量の調味液を注入する。

写真13 調味液注入①
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)
写真14 調味液注入②
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)

  • 巻締 蓋を載せて真空巻締めをする。

写真15 蓋を載せる(左側)
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)
写真16 真空巻締後
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)

  • 加圧加熱殺菌・冷却 缶詰をレトルト殺菌釜に入れて蓋をし、所定の温度・圧力で加熱殺菌する。殺菌後、ただちに流水中又は水氷で冷却したら洗剤で缶の表面を洗浄し、水洗いして水切りする。

写真17 レトルト釜に入れる
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)
写真18 蓋を閉じて殺菌開始
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)
写真19 殺菌終了
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)
写真20 殺菌後の冷却
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)
写真21 洗缶後の水切り
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)

加工に用いる機器等

 真空巻締機、レトルト殺菌装置等

写真22 真空巻締機
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)
写真23 レトルト殺菌釜
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)

品質管理のポイント

 加工食品の中でも缶詰は保存性が高く、長期間にわたって保存することができる。しかし、保存中の温度等の影響で風味が徐々に変化し、品質が低下することは避けられない。常温保存した場合、商品としての品質を保持できる期間、いわゆる賞味期限は、魚介、野菜、食肉および調理缶詰で3年が目安となる。なお、缶詰製造直後は味が魚肉全体になじんでおらず、1か月以上保存してから出荷することが多い。

安全衛生管理のポイント

 アレルギー様食中毒は、サバやイワシなどの赤身魚やその加工品を食べた後に顔面紅潮、頭痛、蕁麻疹、発熱などの症状を起こす食中毒であり、その原因はヒスタミンである。食中毒を引き起こすヒスタミン量は、食品100g中に100mgといわれており、腐敗臭を感じる前にヒスタミンがこの量に達することが多いため、食中毒を引き起こしやすい。
 赤身魚にはヒスチジンというアミノ酸が多く、このヒスチジンをヒスタミン生成菌が酵素分解してヒスタミンになる。また、この酵素が働くpHは5~6であり、赤身魚肉のpHは5.5~6.0とヒスタミンの生成に好条件である。
 ヒスタミン生成菌は低温下で増殖が抑制されるため、ヒスタミンによるアレルギー様食中毒の防止策として、獲った魚はすぐに氷や氷水等で冷やし、市場や輸送時には低温管理を徹底することが重要である。

特徴的な成分

 さばみそ煮にはノルウェーサバ、マサバ、ゴマサバが原料として使用される。サバにはDHAやEPA等の高度不飽和脂肪酸が豊富に含まれており、DHAとEPAは中性脂肪の減少、生活習慣病の予防効果が報告されている。
(水産物に含まれる各種成分の効能については、「この図鑑の使い方」末尾の【参考情報】をご参照ください)

表1 サバの主な栄養成分(100g中)(資料:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂))

製品の形態

 加工会社では、主に一箱24缶入れで箱詰めしてから出荷している。

包装および保管方法

 缶詰のため常温で保存可能である。

調理方法および食べ方

 おかずやおつまみとしてそのまま、キノコやゴボウとショウガたっぷりの炊き込みご飯(写真24)、チーズ、マヨネーズと和えた具でホットサンド(写真25)、キノコ、パプリカなどお好み野菜と合わせたアヒージョ(写真26)、その他おにぎらず、パスタ、チャーハンの具などとして幅広く利用できる。

写真24 炊き込みご飯
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)
写真25 ホットサンド
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)
写真26 アヒージョ
(青森県産業技術センター 角 勇悦 提供)
写真27 ㈱シジシージャパン
㈱シジシージャパン提供
写真28 田原缶詰㈱
田原缶詰㈱提供
写真29 清水食品㈱
清水食品㈱提供

参考文献

・谷川 英一「缶詰製造学」サバ水煮缶詰.恒星社厚生閣.1969
・FRA NEWS.vol79「アレルギー様食中毒の原因ヒスタミン」2024
・文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)」2020
・経済産業省.2024年経済構造実態調査 製造業事業所調査「品目別」統計データ

(著者:青森県産業技術センター 下北ブランド研究所 角 勇悦)