スモークサーモンとは
スモークサーモンは、サケ・マス類のフィレーまたは切り身を塩漬けし、燻煙処理を施した加工品である。低温(概ね20~30℃)で長時間燻煙する「冷燻」と、60~80℃で加熱しながら燻煙する「温燻」に分けられる。日本では主に洋風惣菜素材として普及したが、近年は寿司種や和風総菜用途にも広がり、家庭用・業務用ともに重要な水産加工品の一つとなっている。
主な生産地
国内では北海道、青森県、岩手県、宮城県などのサケ加工産地で生産されている。特に北海道は秋サケ加工の集積地であり、冷凍原料や輸入養殖サーモンを活用した周年加工が行われている。
生産の動向
スモークサーモンは国内の生食用のサーモン需要を背景に、家庭用小容量パックの拡充、中食・外食向け業務用需要の安定、年末年始や歳暮期のギフト需要などに支えられている。一方で、原料となる海外の輸入サーモン価格は国際相場や為替の影響を受けやすく、製品価格や規格の見直しが行われている。
原料選択のポイント
さけ類(アトランティックサーモン、サケ(通称シロザケ)、ニジマス等)が用いられる。近年は輸入養殖アトランティックサーモンが主原料として多く用いられている。
脂質含量が適度に高く、身質が均一でドリップの少ない原料を選定することが重要である。養殖サーモンを原料とする場合は給餌履歴やサイズ規格、抗菌剤使用履歴等を確認する。天然魚を原料とする場合は漁獲後の温度管理と迅速な処理が品質を左右する。血合肉の変色や寄生虫の有無を確認し、製品外観と安全性を確保する。
加工技術
原料をトリミング後、乾塩法または塩水漬け法により肉中の塩分含量を調整する。次いで乾燥工程で表面にペリクル(乾燥被膜)を形成させ、燻煙工程へ移行する。燻煙材としてはサクラ、ナラ、ブナ等が用いられ、煙中のフェノール類やカルボニル化合物が香気と保存性に寄与する。冷燻では加熱工程を伴わないため微生物管理が重要である。
製造工程の概略

加工の実際
- 原料受入れ 製造企業の基準により鮮度・脂質の管理、菌数検査を実施する。原料の管理状況をこの工程で確認する。
- トリミング 小骨の除去と、最終製品の外観を左右する整形を行う。
- 塩漬け 調味が行われる。このとき、肉部の脱水と筋肉タンパク質の変性を引き起こされる。
- 燻煙 香気の付与だけではなく、燻煙による製品表面の抗菌効果も付与される。
- スライス 機械化が進んでおり、一定重量の製品化と同時に調理歩留りの向上にも貢献している。
- 包装 製品中の脂質酸化抑制を目的に、真空包装やガス置換包装を導入する企業が多い。
- 出荷 冷蔵・冷凍流通を問わずコールドチェーンが確立していることで、微生物制御が実現している。
加工に用いる機器等
自動フィレスキナー、塩水インジェクター、燻煙装置(バッチ式/連続式)、自動スライサー、真空包装機、金属探知機
品質管理のポイント
原料受入時の温度管理(5℃以下)を徹底する。塩分濃度、水分活性、魚肉のpHを管理し、細菌(特にリステリア・モノサイトゲネス)対策として衛生的な環境維持が重要である。酸化防止のため低温・遮光保管を行い、真空包装やガス置換包装を活用する。
近年は連続式燻煙装置や自動スライサーの導入により、品質の均一化と省力化が進んでいる。
製品の形態
スライスタイプ(家庭用)、ブロックタイプ(業務用)、スキンレスフィレタイプ(家庭用/業務用)がある。
家庭向けには30~100gの小容量真空パックが主流であり、業務用ではブロック製品や500g以上の規格も流通する。ギフト用途では香気成分の異なる製品の詰合せや地域素材との組合せ商品も展開されている。
包装および保管方法
酸化防止と品質保持のため真空包装またはガス置換包装を行う。冷蔵品(10℃以下)は賞味期限20~30日程度、冷凍品では6か月~1年程度が一般的である。脱酸素剤の併用や遮光性包材の採用により脂質酸化を抑制する。
調理方法および食べ方
サラダ、サンドイッチ、パスタ、寿司、オードブルなどの素材として利用される。
参考文献
・太田静行.くん製食品.恒星社厚生閣,1986.
(著者:北海道立総合研究機構 中央水産試験場 武田 浩郁)
(写真提供:松岡水産株式会社)
