目次
第1章 乾製品 第2節 塩干品

にぎす干物

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主原料

保存方法

冷凍保存/常温保存

キーワード

富山湾

備考

Nigisu-himono/伝統的加工品

にぎす干物とは

 にぎす干物は、原料魚(ニギス)(写真1)をそのまま塩水に漬け、その後22℃位の温度で冷風乾燥したものである(写真2)。主に富山県内で流通し、消費される。最近の製品は水分を60%程度に乾燥した製品が主体となっている。ニギスの干物は、甘塩で適度に脂が乗り、非常に美味なことから、富山県の代表的な干物の1つとなっている。
 本文末のコラム「ニギスの名前の由来」もご参照ください。

写真1 ニギス原料 
(提供:富山県農林水産総合技術センター水産研究所)
写真2 ニギス干物 (提供:㈲浜浦水産提供) 

主な生産地

 富山県、石川県、新潟県、島根県、兵庫県、愛知県

生産の動向

 ニギスは、富山県沿岸では3~6月および9~11月に底引き網漁や八艘張網漁はっそうはりあみりょうによって漁獲されていたが、最近では、主に底引き網漁で漁獲されており、漁獲量は減少傾向である。近年(2014~2023年)の富山県におけるニギスの漁獲量は5~21tの範囲にあり、平均11tである(図1)。このうち、にぎす干物の生産量は年間5t程度であると推定される。

図1 富山県沿岸におけるニギスの漁獲量(資料:富山県水産情報システム)

原料選択のポイント

 ニギスの漁場は、他県では水揚げ漁港から遠く、沖合で数日間操業を続ける沖合底曳網により漁獲されるのに対し、富山県では水揚げ漁港から近く、日帰り操業で漁獲されるため非常に鮮度が良い。損傷が少ない小型サイズが干物に利用される。また、腹腔内にアミ類が入っていると製品が赤くなるので、なるべく入っていないものを選ぶ。この他、すり身、魚醤油にも利用される。

加工技術

 鮮度の良い小型の原料魚を用い、低温・短期間で乾燥させることで、食感をしっとりと柔らかに仕上げる。

製造工程の概略

加工の実際

  • 原料 損傷の少ない小型のニギスを使用する。富山県産の他に、石川県産、新潟県産も使用されている。腹腔内にアミ類が入っていると製品が赤くなるので、なるべく入っていないものを選ぶ。

  • 塩漬け l0~15%の塩水で1~2時間塩漬けを行う。

  • 洗浄 表面の塩水を洗い流す。

  • 乾燥 冷風(22~23℃)で1日間乾燥する。昔は目刺しの形態の製品もあったが、現在は、せいろ等に並べて1尾ずつ乾燥したものが主流である。製品の歩留まりは50%程度である。

品質管理のポイント

 ニギスは鮮度低下が速いため、原料段階での鮮度管理が重要である。また、ニギスは水分が多いため、大変身が柔らかく損傷しやすい。このため、原料段階で損傷が少なく、腹腔内に餌が少ない個体を選んで加工することにより、製品の呈味性や身割れ等を防止する。

特徴的な成分

 骨や内臓を含む全魚体を用いた製品のため、カルシウムが製品100g当たり400mg程度、また、ビタミンAのレチノール値が440µgと豊富に含まれる。この他ビタミンB1、ナイアシンも含まれる。
(水産物に含まれる各種成分の効能については、「この図鑑の使い方」末尾の【参考情報】をご参照ください)

包装および保管方法 

 一般的にはトレーに入れラップで包装する。最近は真空包装することも多い。賞味期限は冷蔵(5~6℃)では1週間程度、冷凍(-20℃)では6ヶ月程度である。

調理方法および食べ方

 焼いて食べる。頭、骨、内臓も好みに応じて食べられる。このほか、酢味噌がけ、唐揚げ、甘酢漬け等、さまざまな調理法がある。

コラム

「ニギスの名前の由来」 

 ニギス(キュウリウオ目ニギス亜目ニギス科)は、主に日本海沿岸で漁獲される。富山ではこの魚をミギス、メギス等とも呼ぶ。体色や体型がシロギス(スズキ目スズキ亜目キス科)に似ていることから「似鱚、似義須」、ニギスという和名がつけられている。富山では、非常に鮮度の良いニギスが手に入ることから、干物以外に富山県独特の生すり身や刺身、塩焼きとしても賞味される。

(著者:富山県農林水産総合技術センター食品研究所 原田 恭行)