鰤醤とは
鰤醤とは、富山湾で冬場に漁獲されるブリ(寒ブリ)の内臓を原料とした魚醬である。従来、食用には利用されていなかったブリ内臓の高度利用を目的として、福井県立大学と富山県農林水産総合技術センター食品研究所の技術協力により開発され、市販された製品である。新聞やテレビ等でも紹介され、2025年には富山県「とやま推奨ブランド」にも認定され、現在、国内外の土産物店等で販売されている。
主な受賞歴
2018年 日本農芸化学会「技術賞」受賞
2021年 富山県「食品ロス・食品廃棄物削減推進県民会議表彰」受賞
2023年 農林水産省「ディスカバー農山漁村の宝」北陸農政局賞 受賞
主な生産地
富山県
生産と消費の動向
2014年12月に販売を開始して以来、生産量は増加傾向にあり、2024年度(1年間)の販売量は約2,000本(120mlの瓶入り)である。
原料選択のポイント
主に11月~翌年2月に氷見漁港に水揚げされる寒ブリの内臓を原料とする。
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使用する副原料
並塩
加工技術
魚醤油は魚を塩漬けにして発酵・熟成させた伝統的な液体調味料である。一般的には、原料を塩漬けした後に発酵工程(1~2年)に入るが、有害微生物の汚染を避けるために食塩の添加は必須である。発酵工程では、主に内臓に含まれるプロテアーゼの作用を利用し、タンパク質を分解させることでペプチドや遊離アミノ酸を増加させ、十分な熟成期間を経た後、独特の風味のある魚醤油が完成する。近年、市販のタンパク質分解酵素製剤や麹を添加して熟成期間をある程度短縮する方法も開発されているが、微生物汚染を避けるために熟成過程における塩の添加は必須である。
一方、本製品は、原料のブリ内臓を高温条件下(55℃)に静置して自己消化酵素(プロテアーゼ)の活性を高めることにより、熟成期間を大幅に短縮し、数日間で完成させる製法で製造されている。高温(55℃)下では、微生物汚染が回避できるため、原料魚を塩漬けにする必要がなく、工程を効率化できる。また、低塩分(無添加)下では、プロテアーゼの活性が高塩分下よりさらに高くなる利点もがある。高温・低塩分条件下において魚醬油を製造した後、常温で長期保存させるために塩を添加して製品とする。
製造工程の概略

加工の実際
- 原料 原料は、主に11月~翌年2月頃に氷見漁港へ水揚げされる寒ブリの内臓であり、鮮魚店等を経由して入手する。入手した原料は作業開始まで凍結保管する。作業開始時に凍結保存した原料を解凍して原料とする。
- 熟成 55℃で3日間熟成させる。
- 滅菌 120℃で20分滅菌する。
- 遠心分離 遠心分離機を用いて油分、固形分を除去する。(油分、固形分は有機肥料等に有効活用される。)
- 塩添加 油分、固形分を除去して残った液体に並塩を添加する(終濃度15%)
- 濾過 濾紙(目合い:3μm)を用いて濾過する。
- 容器詰め 瓶に詰める。
- 製品 金属探知機にかける。
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加工に用いる機器等
発酵槽、滅菌装置、遠心分離機等
品質管理のポイント
異物混入防止のため、金属検知作業が必要である。
特徴的な成分
微生物による発酵工程がないため、アレルギー様食中毒の原因物質であるヒスタミンの蓄積量が少ない。鰤醤の味や風味は、魚醬特有の刺激臭が少なく、マイルドでコクが強いことが特徴である。

製品の形態・包装及び保管方法
業務用以外で市販する場合は、120ml入り瓶に入れ販売する。
調理方法および食べ方
各種料理、焼き肉、鰤しゃぶ等のタレ(写真3)、パスタソース等の隠し味、唐揚げの下味(写真4)、焼き鳥の味付け(写真5)、炊き込みご飯の調味(写真6)等として用いられる。
また、鰤醬と酢、砂糖、ニンニク、鷹の爪を混ぜ、ドレッシングを作成し、野菜サラダにかけて食べる。
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(提供:㈲片口屋)
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(提供:㈲片口屋)
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(提供:㈲片口屋)
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(提供:㈲片口屋)
同類製品例
ホタルイカを原料に用い、本製品とほぼ同様の加工技術により製造した製品として、ホタルイカの魚醤(写真7)がある。必要とされる熟成時間や温度などは、本製品と同様であるが、濾過方法等に違いがある。
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参考文献
・宇田川 隆.速醸魚醤の開発とその利用. 日本醸造協会誌 2012; 107: 477-484.
・Jung-Nin Park, Watanabe T, Endoh K, Watanabe K, Abe H.Taste-active components in a Vietnamese fish sauce. Fish. Sci. 2002; 68: 913-920.
(著者:富山県農林水産総合技術センター食品研究所 原田 恭行)
