かぶらずしとは
かぶらずしとは輪切りにし塩蔵した青カブに塩蔵したブリをはさみ、麹、千切りニンジンとともに仕込み、北陸の厳しい寒気の中で熟成させたなれずしである。カブの白色、ブリの赤色の色彩も美しく、縁起の良いご馳走として正月の料理には欠かせないものとなっている。かぶらずしは石川県のふるさと認証食品に認定されている。
かぶらずしと同様に、昔から北陸地方で食べられてきたものに「だいこんずし」がある。これはカブ、ブリの代わりに源助ダイコン、身欠きにしんを原料としたものである。石川県内では、このほかにもサケやサバを使ったものが各地の特産品としてつくられ、人気を集めている。
(本文末尾のコラム「かぶらずしの歴史」についてもご参照ください)
主な生産地
石川県、富山県西部
生産と消費の動向
石川県の場合、生産は漬物専業の製造業者と、農業等との兼業の農産加工団体によって行われている。かぶらずしの平成15年生産量は前者で約120t(青カブの収穫量により推計)、後者で40t(各団体への聞き取り)で、石川県全体で約160tである。また、だいこんずしの生産量は90t(平成15年石川県漬物商工業協同組合推計)である。老舗製造業者である四十萬谷本舗(金沢市)への聞き取りによると、令和7年現在の生産量はかぶらずしで約15万枚(約15t)、だいこんずしで約2.7万枚(約3万t)生産している。
主に歳暮などの贈答品として消費されているが、近年歳暮を贈る習慣の減少や家庭の少人数化などで消費量は減少している。
原料選択のポイント
かぶらずしの原料は加賀野菜である金沢青カブと日本海で漁獲される天然寒ブリである。金沢青カブは白カブと違い収穫まで手間がかかる品種で、苦味、芳醇な香り、歯ごたえが特徴ある。この苦味と寒ブリの旨味が調和し重厚な味となる。
だいこんずしの原料は加賀野菜である源助ダイコンと北海道から入ってくる身欠きニシンである。源助ダイコンは、きめが細かく甘味が強く、肉質が軟らかい特徴がある。
加工技術
麹菌の産生するアミラーゼの作用により、米飯とカブのデンプンを糖化する。この生成された糖を嫌気性乳酸菌が利用して乳酸発酵を行うことで発酵中のpH低下による保存性の向上と風味付けが行われる。この発酵は北陸特有の寒冷な気候の中、重石により密閉性を高めることで進行する。また、麹菌の産生するプロテアーゼ作用により、カブの食感が軟らかくなるとともに遊離アミノ酸が生成され複雑な呈味が付与される。
製造工程の概略

加工の実際
- 青カブの処理 青カブの上下を切り落とし厚さ 3cmに輪切りにしたものに横から8分目くらいまで切れ目を入れ、青カブ重量の4~8%の塩(並塩)を加え、1~2週間塩漬けする。この塩漬けは2度実施する場合もあり、これにより青カブのくせが抜けうま味が生まれ歯ごたえが出てくる。
- ブリの処理 ブリは3枚におろし、骨と皮を除いた後大きな切り身とする。ブリ重量の10~20%の塩(並塩)を加え、重石をして1週間塩蔵する。塩蔵後、殺菌や保存性の向上のため酢じめする場合もある。
- 米麹の処理 米麹に米飯を混ぜ、1晩保温(50℃前後)し糖化させて甘酒をつくる。これに細切りした塩漬けにんじんを練り合わせる。
- 漬け込み 一段目に塩漬けしたカブの葉、次にコンブを敷く。この上にブリを挟んだカブを並べ、これに米麹を振りかける。二段目以降はブリを挟んだカブと米麹を交互に漬け込み、間に塩漬けしたにんじんと唐辛子を入れる。この際、カブの切れ込みが桶の中心に向くように並べると、熟成中、くせのある魚汁が流れ落ち、呈味性が向上する。最後に、コンブと塩漬けしたカブの葉をのせ、これに押し蓋をして、さらに重石を載せて2週間熟成させる。熟成の完了は樽上部に滲出した汁の味で判断する。(写真1)
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製品の形態・包装等
ポリ袋などに入れ、浅い樽状の容器に入れて販売される(写真2)。少量のものは袋詰めされた後、真空包装されて販売されている(写真3)。主に冷蔵で流通している。
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(提供:(株)四十万屋本舗)
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(提供:(株)四十万屋本舗)
特徴的な成分
かぶらすし製品の一般成分を表に示した。かぶらずしの主要な遊離アミノ酸はグルタミン酸140mg/100g、ヒスチジン107mg/100gで、乳酸量は311mg/100g、酢酸量は161mg/100gであった。
血圧上昇を抑制する働きのあるγ-アミノ酪酸(GABA)量は260mg/100gであり、遊離アミノ酸の中では最も高い値を示した。
(水産物に含まれる各種成分の効能については、「この図鑑の使い方」末尾の【参考情報】をご参照ください)

調理方法および食べ方
麹のついたまま適当に2~4つ切りにして、そのまま食べる。(写真4)
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写真⑤とイメージ-1-1024x674.jpg)
参考文献
・谷辺礼子(石川県水産総合センター)他.かぶら寿しの成分分析.水産物の利用に関する共同研究第39集1999;21-24
コラム
「かぶらずしの歴史」
かぶらずしとだいこんずしの発祥地は、銭屋五兵衛出生の地、宮の腰(現在の金沢市金石地区)とされ、江戸時代に宮の腰港の舵子達が、その年の豊漁と安全 を祈って行われる起舟の儀式の際のご馳走として漬け込んだものである。
当時、かぶらずしは加賀百万石前田家の料理として珍重され庶民の手に届かない高価なものであった。そこで、一般家庭ではこの代替品として、原料が安価で比較的手間のかからないだいこんずしが食べられてきた。近代に入ってからはかぶらずし、だいこんずしともに、一般家庭でも作られ食べられている。
(石川県水産総合センター 高本 修作、西田 光希)
