目次
第6章 発酵食品 第1節 水産漬け物

あじのすす

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主原料

主生産地

保存方法

冷蔵保存

キーワード

乳酸発酵/熟成/酸味/老鮨/能登町

備考

Ajinosusu/伝統的加工品

あじのすすとは

 あじのすすは、石川県能登町(旧能都町、旧柳田村)でつくられている馴れずしであり、保存食として祭りや祝い事の肴に利用されてきた。滋賀県のふなずし同様、塩漬けした魚をご飯とともに漬け込み発酵させたもので、老鮨ひねずしとも呼ばれている。
 原料魚には小型のアジを使い、有頭または無頭で漬け込まれる。自然発酵によって熟成されるため仕込み時に麹は使用しない。春先に仕込み、北陸特有の梅雨期を越すことで発酵が促され、2~3ヶ月で食べごろとなる。熟成は主に乳酸発酵によるもので酸味がかった特有の呈味や臭いがあり、アジの骨も軟化されているため丸ごと食べることができる。

主な生産地

  石川県能登町

生産と消費の動向

 主に伝承的に個々の家庭でつくられてきたが、能登町にあるNPO法人当目とうめでは真空パックに包装し、通年で地元のスーパーなどで販売するようになった。各家庭での生産量は不明であるが、NPO法人当目では年間約250㎏の製品を生産している。

原料選択のポイント

 マアジは春先に沿岸で漁獲される小型魚(15㎝程度)で、鮮度の良いものを使う。大型のものは中骨が硬いため一般的には原料魚には用いない。このほかサバ、メバル、川魚等も利用される。

加工技術

 アジは18%の食塩濃度で塩蔵し、肉締めと腐敗防止を図る。作業は終始衛生面に配慮し、製造工程中における塩蔵前の原料魚の鮮度の低下を避けるため、手間のかかる眼球の除去は塩蔵期間終了とともに行われる。
 漬け込みは仮漬けと本漬けがある。仮漬けとは酢漬け処理であり、これにより塩抜きと魚臭の除去や殺菌が施される。
 一方、本漬けは酒でほぐしたご飯が使われ、発酵を促す麹や乳酸菌などは使わない。嫌気性の発酵食品であるため、重石を十分にし、樽には塩水を張る。これによって雑菌等の侵入を防ぐことができる。熟成中に乳酸発酵が行われ、特有の酸味が醸される。

製造工程の概略

加工の実際

  • 原料 アジなどの小型魚を用いる。サバ、メバル、川魚等も利用される。

  • 魚体処理 アジは頭部を残し内臓を除去する。

  • 塩漬け 原料の18%の振り塩を行い、1週間塩蔵することで、肉締めと腐敗防止を図る。工程中における原料の鮮度低下を避けるため、手間のかかる魚体からの眼球の除去は塩蔵期間の終了後に行う。

  • 仮漬け 塩抜き、魚臭除去、殺菌のため、酢に2時間ほど仮漬けする。

  • 本漬け ご飯を酒でほぐして樽に敷き、この上にアジ、山椒、唐辛子を載せて漬け込む。最上部はご飯、山椒、唐辛子を多めに載せ、十分に重石をして2か月以上熟成させる。樽に塩水を張ることで雑菌等の侵入を防ぐ。

  • 包装・出荷 アジと発酵したご飯をトレーに載せ、ラップ包装する

品質管理のポイント

 原料魚は新鮮なものを用いる。雑菌が繁殖しないよう冷暗所に保管し、重石で密閉する。
 樽内では乳酸発酵が活発であり、空気に触れると活動が抑止されるため、一度樽から出した後は冷蔵保管するか早めに食べる。

特徴的な成分

 あじのすすの一般成分を表に示した。主要な有機酸はアジ、米飯とも乳酸である。発酵したご飯には整腸作用がある。あじのすすは骨まで食することで、カルシウムをより多く摂取できる。
(水産物に含まれる各種成分の効能については、「この図鑑の使い方」末尾の【参考情報】をご参照ください)

製品の形態・包装及び保管方法

 トレーに載せてラップ包装したものや真空パックのものが販売されている。スーパーなどで販売されるものは冷蔵で販売されている。

調理方法および食べ方

 頭ごと丸かじりするのが一番おいしい食べ方と言われる。樽から出したものは早めに食する。

写真1 漬け込みの様子①(提供:石川県水産総合センター)
写真2 漬け込みの様子②(提供:石川県水産総合センター)
写真3 製品(提供:NPO法人当目)
写真4 盛り付け(提供:NPO法人当目)

(著者:石川県水産総合センター 西田 光希)