目次
第1章 乾製品 第2節 塩干品

一夜干しはたはた

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主原料

主生産地

保存方法

冷蔵保存

キーワード

振り塩漬け

備考

Ichiyaboshi-hatahata/伝統的加工品

一夜干しはたはたとは

 日本海で獲れるハタハタの内臓を除去した後塩漬けして乾燥したもので、昔は自然乾燥で一晩干していたことからこの名が付いているが、最近では冷風乾燥機で消費者の嗜好に合わせ乾燥時間は3時間から長くても7時間前後になっている。
(本文末のコラム「ハタハタの漢字の由来」もご参照ください)

主な生産地

 一般的にハタハタといえば秋田県が良く知られているが、漁獲量は兵庫県や鳥取県が多く、一夜干しの生産量は兵庫県(但馬地域)が最も多くなっている。

図1 ハタハタ漁獲量(漁業・養殖業生産統計)2003年~2022年まで

原料選択のポイント

 兵庫県では9月から翌年の5月までが漁期であるが、特に春に漁獲されるハタハタは色が明るく皮が柔らかで脂が乗っていて美味しい。一夜干しに適したサイズは16~18cm位で卵が成熟していないものがよい。

使用する副原料

 塩

加工技術

 ハタハタの最も傷みやすい内臓を除去し、塩漬け、乾燥することで水分活性を低下させ保存性を高めている。また、塩を加えることでハタハタ特有の味を引き出し、水分を除去することでうま味を濃縮するとともに食感を改善する効果がある。

製造工程の概略

加工の実際

  • 原料 鮮度の良いものを選ぶ。塩分や水分のばらつきを少なくするため大きさを揃え、作業をしやすくする。

  • 調理 包丁で腹部左側を2/3程度切り内臓を除去する。水抜けを良くするため、腹部は少し長めに切る。

  • 洗浄 魚洗機でぬめり・内臓片などを洗い流すとともに血抜きをする。

写真1 調理工程(撮影:但馬水産技術センター)
写真2 魚洗機 
1回に約150㎏のハタハタを洗うことができる。
(撮影:但馬水産技術センター)

  • 塩漬け 塩漬けには2通りの方法がある。
  1.  振り塩漬け・・・古くからの伝統的な方法で、洗浄したハタハタに直接塩と氷を混ぜて桶に入れ、重しをのせて一晩漬け込む。表面だけでなく魚の中心まで均一に塩が効いており、保存性がよく、生臭さが少ない。身の締まった製品に仕上がる。
  2.  立塩漬け(塩水漬け)・・・現在多くの加工業者が行っている方法で、洗浄したハタハタを7~8%の冷塩水に約1時間漬ける。鮮魚に近いきれいな色の製品ができる。

  どちらの方法も魚のサイズや鮮度を考慮し、塩分や漬け込み時間を調整する。

写真3 振り塩工程(撮影:但馬水産技術センター)

  • 串刺し 傷みやすいえらを早く乾燥させるため、鰓蓋えらぶたの後ろから口に向かって串を通す「エラ刺し」にする。また、乾燥効率を良くし、乾燥ムラを少なくするため、魚同士が接触しないように同じ方向に均一に刺す。

  • 水洗い 魚体表面の塩水を除去し製品のつやを良くするために、真水で数秒間振り洗いをする。

  • 乾燥 冷風乾燥機を用い、20~25℃で約3時間乾燥する。出荷先のニーズに合わせて干し加減を調整するため、乾燥時間は加工業者によって異なる。

写真4 水洗い工程(撮影:但馬水産技術センター) 
写真5 冷風乾燥機 
一度に約700㎏のハタハタを乾燥できる。
(撮影:但馬水産技術センター)
写真6 乾燥工程(撮影:但馬水産技術センター)

  • 選別 不良品(型崩れ・傷・変色)を除去し、大きさを揃える。

  • 凍結 微生物の繁殖タンパク質の変性、脂質の酸化を防ぐため、-30℃以下で急速凍結する。

  • 包装 発泡スチロールのトレーや箱に並べラップ包装する。

  • 製品 箱に詰めて出荷する。

写真7 一夜干しはたはた製品 (提供:株式会社 蔵平水産)

加工に用いる機器等

 魚洗機、冷風乾燥機、解凍機(冷凍原料の場合)

品質管理のポイント

 乾製品とはいえ低塩分・高水分であるため長期保蔵には冷凍保管が必要である。一般的に立塩漬けのものは冷凍庫で約1ヶ月程度、冷蔵で2、3日保存可能である。振り塩漬けのものは冷凍庫で2~3ヶ月程度、冷蔵で4、5日間保存可能である。
 冷凍保管の場合は、脂質酸化による油焼けや味の変化、冷蔵保管の場合は微生物の繁殖に注意する。 

安全衛生管理のポイント

 微生物の増殖を防ぐため、加工中は室温と品温を低温に保つとともに、魚に接触する設備・機械類の洗浄と殺菌、従業員の手洗いなどの衛生管理を徹底している。異物混入を防止するため、従業員の身だしなみ、帽子・手袋の着用等を徹底している。製品は包装後に金属探知機で検査を行っている。

製品の形態と保管方法

 発泡トレー詰めし、冷凍保管する。

調理方法および食べ方

 そのまま焼いて食べるのが、一夜干しはたはたのおいしさを最も良く味わえる。皮はこんがり、身はふわりと焼くためには、炭火で強火で焼くか中火で網やロースターにゆったり並べて少量ずつ焼くのがコツである。好みでレモン・大根おろし・マヨネーズ等を添えて食べる。焼いた身をほぐして温かいご飯の上に載せて、わさび・醤油少々を加えて食べても美味しい。ほかには、煮付け、フライ、唐揚げにして甘酢をかけて食べる方法もある。

写真8 焼いた一夜干しはたはた (提供:株式会社 蔵平水産) 

コラム

「ハタハタの漢字の由来」 

 ハタハタは「鱩」や「鰰」とも書く。魚偏に「雷」と書く由来は、ちょうど産卵期群が接岸する季節に日本海では天候が荒れ、雷鳴もとどろくため「鱩」の字が当てられる。
 魚偏に「神」と書く由来は、霹靂はたた神(雷鳴の古語)の鳴る時期に来る神の魚とされたことに由来する。

参考文献

・農林水産省大臣官房統計部、 海面漁業生産統計調査「漁業・養殖業生産統計」(平成15年~令和4年) 
・https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500216&tstat=000001015174&cycle=7&year=20220&month=0&tclass1=000001015175&tclass2=000001214760
・食材魚貝大百科 海藻類/魚類4海獣類ほか

(著者:兵庫県立農林水産技術総合センター但馬水産技術センター 横田 智恵)
(取材協力:株式会社 蔵平水産)