さんま丸干しとは
さんま丸干しは、塩をしたサンマを内臓もそのままに天日干しにした干物で、脂の抜けたサンマならではの滋味が感じられる三重県東紀州地域の名産品である(写真1)。
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主な生産地
三重県(東紀州地域)
生産の動向
さんま丸干しは、秋から冬にかけて北日本から熊野灘へ南下してくる「もどりさんま」と呼ばれる脂が落ちたサンマを用いて、東紀州地域で作られてきた。しかし、近年は熊野灘でサンマが漁獲されなくなっており、他海域の脂乗りが似たサンマで作られるようになっている。三重県におけるサンマの漁獲量は、平成元年~17年にかけては1,500~3,000トン程度で推移し(平成12年の508トンを除く)、平成18、20年には5,000トンを上回るまでに増加したが、平成21年以降は減少傾向となった(図1)。令和2年以降は漁獲がない状態が続いていている。近年は他海域のサンマが丸干しの原料に用いられているが、熊野灘のサンマで丸干しが製造されてきた伝統や輸送コストもかかるため地元産のサンマへの期待は高い。サンマに関する漁業・加工・消費を通じた地域の文化と経済の継承が危ぶまれる状況となっており、今後のサンマの資源動向が注目される。
東紀州地域には、さんま丸干しを製造する加工業者が多数あり、サンマを天日干しする様子は、この地域の冬の風物詩となっている。また、熊野市では、冬季に「熊野きのもとさんま祭り」が開かれ、さんま丸干しのふるまいなどを通じて、地域におけるさんま文化の振興が図られている。
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原料選択のポイント
さんま丸干しの原料とするサンマは、脂の落ちたものでなければならない。従来は、秋から冬に熊野灘に来遊する脂の抜けたサンマを棒受網で漁獲していたが、近年はサンマの来遊がない状況が続いている。このため、千葉県の定置網で漁獲されるサンマの中から体長25~30cm程度で、脂の乗りが少ない冷凍品を主な原料としている。また、サンマの消化管内に餌が残っていると腹に割れや脂焼けが生じ、見た目及び味の良い丸干しができないため、サンマが摂餌を行う夜間ではなく、消化管内の餌が消化された明け方に漁獲されるサンマを用いることもポイントである。
漁法別にみると、巻き網や棒受網で漁獲されたサンマには消化管に鱗が入っていることがあるが、定置網や刺網で漁獲されたサンマには鱗が入りにくく、食べたときの口当たりが良いとされる。
加工技術
さんま丸干しは、サンマと塩のみを用いてシンプルな工程で作られるが、サンマの脂乗りなどの状態によって適切な塩加減や乾燥となるよう、加工業者の知識や経験に基づいて調整が行われる。
製造工程の概略

加工の実際
- 原料 脂の落ちた明け方に獲れたサンマを選ぶ(写真2)。冷凍サンマの場合は、冷却した海水中で解凍(半解凍)する(写真3)。
- 塩漬け 振り塩または立て塩によりサンマに塩を施す。振り塩では、水を切ったサンマを容器に入れ、塩を振る(写真4)。塩の量はサンマの状態(脂乗り、生か冷凍か)や仕上げ方(硬めか柔らかめか)によって調整するが、20kgのサンマに対し茶碗1杯程度の塩が目安となる。塩を振った後、サンマに均等に塩が当たるように混ぜ合わせて、半日程度置く。立て塩では、サンマの状態や仕上げ方によって調整されるが、3~5%程度の食塩水に数時間浸漬する。
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(撮影:三重県水産研究所)
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(撮影:三重県水産研究所)
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(撮影:三重県水産研究所)
- 水洗 十分に塩が浸透したサンマを氷水(水道水)が入った容器に入れ、体表に付いた血液や余分な塩を丁寧に洗い流す(写真5)。
- 串刺し サンマの背と腹の向きを揃えながら、尾びれの付け根に手作業で串を刺していく(写真6)。このとき、サンマのサイズ(体長の大小)を選別しながら、サイズによって串1本あたりに決まった尾数で刺していく。串刺し後、もう一度体表を水道水で洗い流す(写真7)。
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(撮影:三重県水産研究所)
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(撮影:三重県水産研究所)
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(撮影:三重県水産研究所)
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(撮影:三重県水産研究所)
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(撮影:三重県水産研究所)
- 乾燥 串刺しにして頭を下にしたサンマを、互いが密着しないよう間隔を開けながら、背腹の向きをそろえ棚に並べ(写真8)、乾燥機に入れ数時間乾燥させる。その後、風通しの良い場所で天日干しを2日間ほど行って仕上げる(写真9)。乾燥させる際は、乾きにくい腹側に風や陽が当たるような置き方で効率よく乾かす。乾燥の程度として、一週間程度天日干しを行って十分に乾かし、保存性を高めたものもみられる。また、乾燥方法には、串刺しのほか、2尾のサンマの尾をビニールひもで簡易に結わえて、竹竿に引っ掛けて干す方法もある。
- 製品 プラスチック袋にさんま丸干しを数尾ずつ入れて製品(写真10)とし、冷凍保管する。
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(撮影:三重県水産研究所)
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(撮影:三重県水産研究所)
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加工に用いる機器等
さんま丸干し製造の盛期となる冬季に、加工場では天日干しを行う棚(写真9)が並ぶ。
品質管理のポイント
適切な塩加減や丁寧な水洗いを行わないと、干した際にサンマから血や消化管内容物が腹部に滲んで赤くなってしまい製品の美しさが損なわれるため、塩漬け・水洗は特に注意を払う。
製品の形態
かつては天日干しを一週間程度行って十分に乾かし、保存性を高めた丸干しもみられた。近年では消費者ニーズの変化に伴い、低塩分で乾燥度が低い、食べやすい柔らかさの丸干しが求められるようになったことから、天日干しの日数は短くなり、保存性の確保のために冷凍など低温で流通するようになってきている。
包装および保管方法
プラスチック袋で包装し、冷凍保存する。
調理方法および食べ方
とろ火で炙って食べるのが、シンプルで美味しい食べ方である。乾いた身を噛みしめると、凝縮されたサンマのうま味が口の中に広がる。
参考文献
・農林水産省大臣官房統計部.漁業・養殖業生産統計.
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kaimen_gyosei/.(2024年12月12日参照)
(著者:三重県水産研究所 阿部 文彦・竹内 泰介)
(協力:有限会社ハマケン水産)
