ふかひれ加工品とは
ふかひれ加工品には、サメ類の鰭を切り取って乾燥した丸干し品のほか、冷凍・缶詰・レトルトの製品もある。かつては丸干し品(写真1)が主流であったが、丸干し品は調理の前処理に手間を要することから近年減少している。一方、その他の加工品(冷凍品、レトルト品)が増えている。製品の多くは業務用で、主に中華料理用の高級食材として利用されている。
ふかひれの食用とする部分は、鰭から皮および軟骨を除去した角質鰭条(一般には「筋糸」と呼ばれる)である。製品は鰭の姿をそのまま保持したもの(主として姿煮用)と筋糸をほぐしたもの(「金糸」と呼ばれ主としてスープに利用)に大別される。
一般消費者向けの製品は1980年代、前半に気仙沼のメーカーによりふかひれスープ缶詰が販売されたのが始めで、現在はスープのほかにふかひれラーメン用のセットや調味済み姿煮のレトルト品などが市販されている。(写真2)
(本文末尾のコラム「ふかひれ加工品にまつわる話題」もご参照ください)
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生産の動向・消費の動向
宮城県は全国のサメ水揚量の半数を占めており、県内でも気仙沼港への水揚げが圧倒的に多いことから、同地域がふかひれの主産地となっている(図1)。ふかひれの生産は過去には全国的に行われていたが、サメ漁業の衰退とともに生産量も減少した。

原料選択のポイント
主に利用されるのは、近海マグロ延縄船により多く水揚げされるヨシキリザメであるが、ネズミザメ、アオザメを始め、ほとんどのサメが利用される。
原料とするサメの鮮度低下に伴って、アンモニア臭が発生するため、臭気の強いものは避けられる。鰭は背鰭、胸鰭、尾鰭が利用されるほか、腹鰭などの小型の鰭もすべて利用されている。
加工技術
魚体から切り取った鰭をそのまま乾燥させたものが丸干し品である。皮および軟骨を除去後に乾燥したのが素むき品である。冷凍品、レトルト品は、素むき品に温湯による加熱と水さらしを行い製品としている。
製造工程の概略


加工の実際
丸干し
- 原料 近海マグロ延縄船により水揚げされたヨシキリザメ(写真3,4)から背鰭、胸鰭、尾鰭を切り取り加工場へ運搬する。
- 血抜き 塩水で一昼夜塩漬し、血抜きをする。
- 洗浄 水で表面の粘液や汚物を除去する
- 乾燥 冬期間は天日で、それ以外の季節は温風乾燥機で乾燥する(写真5,6)。
乾燥後の丸干しを写真1に示す。
- 包装 箱詰めにする。
- 出荷 梱包して出荷する。
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(提供:宮城県気仙沼地方振興事務所)
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(提供:宮城県気仙沼地方振興事務所)
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その他の加工(冷凍・缶詰・レトルト)
- 原料 近海マグロ延縄船により水揚げされたヨシキリザメから背鰭、胸鰭、尾鰭を切り取り、加工場へ運搬する。
- 洗浄 水で表面の粘液や汚物を除去する。
- 皮除去 60℃程度の温湯に漬けると真皮が溶け始めるので、包丁で皮を削り取る作業が容易になる。背鰭や胸鰭の場合はさらに軟骨を除去する。
- 乾燥 乾燥機で水分量10%以下になるまで乾燥する。
- 浸水 柔らかくするために戻す(写真7)。
- 成形 蒸気または温湯で加熱後冷水で冷却することで丸みを付ける。形が崩れた物は、ほぐして「金糸乾燥品」とする(写真8)。
- 脱臭 温湯での加熱と水晒しを繰り返し、アンモニア臭を除去する。
- 包装 冷凍品は1kg程度ずつ包装する。缶詰は数枚ずつ缶に入れ真空巻締を行う。レトルト品は一枚ずつレトルト用包材に入れ真空包装を行う。
- 冷凍 冷凍品は、冷凍して保管する(写真9)。
- 殺菌 缶詰品とレトルト品は、高温高圧殺菌装置でレトルト殺菌する(写真10)。
- 冷却 室温まで冷却する。
- 検査 金属探知機で検査する。
- 出荷 梱包して出荷する。
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加工に用いる機器等
乾燥機、真空包装機、真空巻締機、高温高圧殺菌装置、金属探知機、冷凍庫 等
品質管理のポイント
ふかひれの加工においては、工程中の温度管理が、その後の品質を大きく左右する重要な要素の一つである。一般に、加熱処理後は速やかに冷却することが望ましいとされており、温度管理が不十分な場合、ふかひれ中の一部ゼラチン化したコラーゲンが流出しやすくなることがある。特に20℃以上の状態が続くと、形状を保持しにくくなり、品質低下につながるおそれがあるため、加工から乾燥に至るまで、品温に十分配慮した管理が重要である。
製品の形態・包装等
丸干し品はそのまま箱詰めにする。冷凍品は数パックずつ、缶詰、レトルト品もそれぞれ数個ずつ箱詰めにする。
調理方法および食べ方
・丸干し(写真1)
流水で軽く表面のほこりを取り除き、水にひたし、時間をかけて戻す。
柔らかくなったら、弱火で下ゆでし、皮の部分を除去する。
ふかひれ自体に味はほとんどないため、鶏ガラスープ等で調味し中華料理等に使用する。
・その他の加工(冷凍・缶詰・レトルト)
ふかひれスープとして缶詰加工されているものは、加熱調理済なのでそのまま調理に使用できる。
味のついていないものは、鶏ガラスープ等で調味し料理に使用する(写真2,11,12)。
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参考文献
・宮城県のサメ類の水揚量の推移:宮城県水産林政部水産業振興課 「県内産地魚市場水揚概要」 https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/suishin/mizuage.html.(2024年1月17日参照)
コラム
「ふかひれ加工品にまつわる話題」
江戸時代から西日本を中心にサメ(フカ)漁業が行われ、ふかひれは俵物三品(煎海鼠・干飽・鱶鰭)の1つとして清国時代の対中貿易品として輸出されてきた。現在もふかひれは香港等へ輸出されている。
気仙沼でのふかひれ生産は明治時代から行われていたが、地元では「さめひれ」と呼ばれ、竹輪の原料として漁獲されたサメの副産物という位置付けであった。気仙沼のふかひれが全国ブランドとなったのは、一般消費者向けの商品が認知された1980年代前半以降である。
サメは鮮度低下に伴いアンモニア臭が発生することから、以前はサメ肉はすり身以外の用途がなかったものの、近年ではヨシキリザメを徹底的に鮮度管理することで、鰭のみでなくサメ肉の利用、商品化も進んできている(写真13,14)。
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(著者:宮城県水産技術総合センター 三浦 悟、菅原 幹太)
(協力:株式会社 中華高橋水産)
