目次
第1章 乾製品 第3節 煮干し品

オリーブイリコ

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主生産地

保存方法

冷凍保存

キーワード

オリーブ/ポリフェノール/マスキング効果/煮干し/いりこ/苦味抑制/だし

備考

Olive-iriko/都道府県開発製品

オリーブイリコとは

 オリーブイリコは、カタクチイワシを主体とした煮干しいわしであるが、カタクチイワシを香川県産の低温乾燥オリーブ葉と一緒に釜の中で煮熟し、乾燥することで製造される。従来製法の煮干しいわし(いりこ)は、独特の魚臭があり、内臓部分の苦味が強いが、オリーブイリコは、オリーブ葉に含まれるポリフェノール成分により、魚臭成分や苦味成分がマスキングされるため、従来製法のいりこに比べて、魚臭および内臓部分の苦味が少ない特徴を有する。オリーブイリコの製造方法は、香川県産業技術センターにより「煮干魚の製造方法」として特許登録されている。

 このオリーブイリコは、そのまま食材として使用できるほか、「だし」をはじめとして、その他の各種の調味料の原料として好適に用いることができる。また、頭部及び内臓部分の除去や、苦み成分の除去処理を行わなくても、苦味が抑制された「だし」を提供できることから、だし、調味料等の工業的規模での生産にも最適である。

主な生産地

 香川県観音寺市、三豊市

生産の動向・消費の動向

 煮干しは、品目別に「いわし」、「しらす干し」、「いかなご・こうなご」、「貝柱」、「その他」で構成され、2003(平成15)年から20年間の生産量を図1に示す。「いわし煮干し」は、2003(平成15)年の3.3万tを最高に、生産量は減少傾向にあり、2022年(令和4)年には1.7万tにまで減少している。2007(平成19)年まで、カタクチイワシを主体とする「いわし煮干し」の生産量が最も多く、次いで、「しらす干し」であったが、2008(平成20)年以降、「しらす干し」の生産量が、「いわし煮干し」の生産量を上回っている。その原因としてカタクチイワシの捕獲量の減少が考えられる。

 香川県の煮干し生産量は、2012(平成24)年から2022(令和4)年の10年間で1,300~2,500tの範囲で推移しており、直近5年間において全国の生産量の1割程度を占めている(図2)。オリーブイリコは、2016(平成28)年から生産が始まり、香川県でのみ生産されており、その生産量は1~5tの範囲で推移している(図3)。消費者から、オリーブイリコは、頭部及び内臓部分の除去処理を行わずに丸ごと食べた場合でも苦味が少なく、子供も食べやすいとの評価を得ている。また、頭部及び内臓部分の除去処理を行わずに丸ごと煮出すことで、苦味が抑制された「だし」を簡便につくることができる。販売先は、香川県内の道の駅、大手通販サイトで通信販売を行っている。国内の煮干しラーメン店からオリーブイリコを使用したラーメンが限定販売されている。

図1 煮干しの生産量(水産加工統計調査2003~2022)
図2 全国、香川県の煮干しの生産量
(水産加工統計調査2010~2022)
図3 オリーブイリコの生産量

原料選択のポイント

 煮干しの品質は、カタクチイワシの脂質含量に大きく左右される。脂肪含量が少ないカタクチイワシが煮干しの製造に適しており、脂肪含量の多い「油イワシ」と呼ばれるカタクチイワシは、酸化や変色など品質が劣化しやすい。 一方、オリーブイリコの品質は、カタクチイワシの脂質含量が少ない方が高品質な製品となるが、オリーブ葉のマスキング効果により、脂肪含量の多いカタクチイワシであっても、製造時にオリーブ葉の添加量を増やして煮熟処理することで、煮干し特有の魚臭、苦みを抑制した製品を製造することができる。
 オリーブイリコの製造には、3㎝以上のカタクチイワシが原料として適しており、かえり(体長3~4㎝)、小羽こば(体長4~6㎝)、中羽ちゅうば(体長6~8㎝)、大羽おおば(体長8㎝以上)の製造に用いている。

使用する副原料

 オリーブイリコの生産には、煮熟釜の塩水1tに対して2kgの低温乾燥オリーブ葉を添加している写真1。低温乾燥オリーブ葉は、1月から3月にオリーブを剪定した時に生じる剪定枝のオリーブ葉を回収し、40℃以下の温度で一晩乾燥したものを最長径5㎜以下の粉砕物の形態にして用いる。このオリーブ葉粉砕物は、水分6%程度に乾燥したもので、オリーブ葉特有のポリフェノール成分として知られているオレウロペインを7%(w/v)以上含んでいる。

写真1 低温乾燥オリーブ葉粉末(提供:伊吹漁業協同組合)

加工技術

 オリーブイリコの生産には、煮熟釜の塩水に低温乾燥オリーブ葉(0.1~0.5重量%)を添加し、十分に煮出した状態でカタクチイワシを煮熟することで、オリーブ葉に含まれるポリフェノール成分により、魚の臭み成分として知られているトリメチルアミンやヘキサナールによる臭いだけでなく、酢酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸等のカルボン酸による臭いも低減させることにより、未処理の場合よりも煮干しいわし特有の不快臭を減らすことができる。

製造工程の概略

加工の実際

  • オリーブ葉 洗濯ネットなどの通水性容器に入れる。

  • 釜で煮出す 釜にオリーブ葉を入れて、95℃の塩水中で30分程度煮出す。(写真2)

  • 原料 煮干しは原料の鮮度が製品の品質を大きく左右するため、漁獲から加工まで短時間で処理することが最も大切である。腹切れなどを起こさないように原料(写真3)の鮮度保持が不可欠である。

  • 原料洗浄 海水で洗浄し、表面の夾雑物などを除く。

  • 煮熟 製造者により煮熟工程の塩水濃度、時間が異なっている。煮熟は海水を用い、蒸気で煮熟温度まで加熱される。通常、海水に食塩を追加添加しているが、消費者の減塩志向を踏まえ、真水を使用する場合もある。塩水を用いるのは、製品の艶や身のしまりを良くするためであり、真水では艶が出ない。(写真4)

  • 放冷 扇風機で風を送り、室温で放冷する。(写真5)

写真2 オリーブ葉を添加した煮熟釜
(提供:伊吹漁業協同組合) 
写真3 原料のカタクチイワシ
(提供:伊吹漁業協同組合)

写真4 煮熟工程
(提供:伊吹漁業協同組合)
写真5 放冷工程
(提供:伊吹漁業協同組合) 

  • 乾燥 乾燥室で45℃、20時間乾燥を行うが、製造者により温度、時間は異なっている。(写真6)

  • 選別 選別機に入れ、目的の原料以外の魚介類や異物を除去する。

  • 箱詰め 製品(写真7)を箱詰めする。大羽のオリーブイリコ1箱は、概ね6~7㎏入りである。梱包後はできるだけ、速やかに共販所などへ出荷する。その後、販売業者が-30℃の冷凍庫で保管する。

  • 小分け 販売者が-30℃の冷凍庫から室温の作業所に移動し、所定の包材に小分けする。写真8,9

 写真6 乾燥工程(提供:伊吹漁業協同組合) 
写真7 製品(提供:伊吹漁業協同組合)

写真8 オリーブイリコの包装済みパッケージ
(提供:伊吹漁業協同組合)
写真9 減塩オリーブイリコの包装済みパッケージ
 (提供:共栄冷凍水産(株))

加工に用いる機器等

 煮釜、乾燥機(冷風、温風)、バケットコンベヤー、オートフィーダーなど

品質管理のポイント

 オリーブイリコは、従来製法のいりこに比べて、オリーブ葉の成分により脂質の酸化および褐変化が抑制される。保存は、-30℃以下の凍結貯蔵が有効とされる。異物混入防止に充分な選別および金属検知作業が必要である。

特徴的な成分

 オリーブイリコ、減塩オリーブイリコの一般成分を表1、遊離アミノ酸、イノシン酸、高度不飽和脂肪酸(EPA、DHA)含量を表2に示した。減塩オリーブイリコの食塩相当量は、オリーブイリコの50%以下で減塩志向に訴求した製品である。オリーブイリコ、減塩オリーブイリコの、煮干しの旨味成分として知られているイノシン酸の含量は、約800mg/100gであった。
(水産物に含まれる各種成分の効能については、「この図鑑の使い方」末尾の【参考情報】をご参照ください)

表1 オリーブイリコ、減塩オリーブイリコの一般成分
表2 オリーブイリコ、減塩オリーブイリコの遊離アミノ酸、イノシン酸、高度不飽和脂肪酸

製品の形態

 生産者の段階では、8㎏のダンボール箱に入れることが多い。小売では1㎏のダンボール、40~200g程度の小袋に詰められる。

包装および保管方法

 ピロー包装、冷蔵庫で冷蔵、チルドまたは冷凍保存が望ましい。

調理方法および食べ方

 オリーブイリコは、ダシ用として使用する場合、従来製法のイリコと異なり、頭と内臓を取り除く必要がない。頭・内臓付きのまま、水1ℓに煮干し40g程度を入れ、中火にかけ、煮立つ直前に弱火にしてアクをすくい取り、約10分間煮る。オリーブイリコが沈んだら、布などでこして使用する。オリーブイリコは、魚臭と内臓の苦味が少ないため、頭・内臓付きのまま食べることができる。
 地元の伊吹漁業協同組合では、ポスターを制作してオリーブイリコのPRに努めている(写真10)

写真10 オリーブイリコのポスター (提供:伊吹漁業協同組合)

参考文献

・松原保仁:イリコの魚臭と苦味が低減する新たな煮干魚(オリーブイリコ)の開発,ふーま,35(4), 26-29(2019).
・松原保仁ら:特許第6439116号(煮干魚の製造方法).
・農林水産省大臣官房統計部.水産加工統計調査結果.「農林水産統計」
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/suisan_ryutu/suisan_kakou/
・松原保仁ら:減塩オリーブイリコの開発,香川県産業技術センター研究報告,23, 54-56(2022).

(著者:香川県産業技術センター 松原 保仁)