じゃこ天とは
じゃこ天とは愛媛県の宇和島・八幡浜地方の揚げかまぼこのことで、皮天ぷらや、じゃこ天ぷらとも呼ばれている。ホタルジャコ、アジ、ヒメジ等の小魚の頭と内臓を除いて、骨や皮をつけた魚を肉挽機にかけ、塩と一緒にすりつぶし、油で揚げたものである。表面はこんがりきつね色、中は灰色で、うま味や弾力がある素朴な製品である(写真1)。特に、ホタルジャコを使用したものが、最高級品とされている。
(本文末尾のコラム「愛媛のかまぼこ」もご参照ください。)
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主な生産地
愛媛県
生産の動向
1965年以降の愛媛県のねり製品と揚げかまぼこの生産量を図1に示した(ただし、2010年以降は、集計方法の変更により揚げかまぼこの生産量の結果は表示していない)。愛媛県の揚げかまぼこの生産は、ほぼじゃこ天の生産量であると推定される。
愛媛県のねり製品の生産量は、1965年に11,508トンで、2022年には11,757トンと横ばいであった。 揚げかまぼこの生産量は、1965年から4,000トン程度で推移していると推定される。
近年では、日本国内だけでなく、海外にも出荷している。

消費の動向
都道府県庁所在市(松山市)の1世帯当たり年間の品目別支出金額・購入数量(2人以上の世帯)を表1に示した。松山市の1世帯当たりの年間ねり製品の支出金額は、2004年に13,591円(全国3位)から2022年に9,363円(全国14位)と、減少傾向であった。同様に、年間揚げかまぼこの支出金額も、2004年に4,969円(全国2位)から2022年に2,782円(全国10位)と、減少傾向であった。

原料選択のポイント
じゃこ天の主な原料は、ホタルジャコ(全長約12cm、南日本の深海に生息、写真2左)で28企業のうち20企業で使用している。その他にマアジ(写真2右)、タチウオ、グチ、ヒメジ等も使用している。原料魚は、鮮度の良いものが要求される。
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使用する副原料
食品添加物は、調味料としてアミノ酸(グルタミン酸、グリシン、アラニン、プロリン等)、保存料としてソルビン酸、甘味料として砂糖、みりん、甘草、ブドウ糖、キシロ-ス等、隠し味として魚肉エキスや魚醤油等、その他にでん粉、卵白、清酒等を使用している。それぞれの添加物の種類や添加量を変えることによって、各企業のじゃこ天の特徴を出している。
加工技術
じゃこ天の一般生菌数に及ぼす油ちょう条件の影響を表2に示した。油ちょうの温度と時間は製品の保存性と食感に影響を及ぼす。各企業では、じゃこ天1gあたりの一般生菌数が300以下になるような油ちょうの温度と時間の範囲で食感を調節している。

製造工程の概略

加工の実際
- 原料 ホタルジャコ(体長約8~12cm)は、冷凍保存可能であるが、脂質の酸化を防ぐために空気に触れないようにすることが望ましい。その他の小魚(マアジやシログチ等)は、鮮度の良い生魚を使用することが重要である。
- 調理 手作業で、頭と内臓を除去する。この時に、内臓が残らないように完全に除去する(写真3)。
- 水洗 冷却水を使用して、内臓等が残らないようによく洗浄する(写真4)。
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- 肉挽 小魚を骨と皮ごと3~5厘(約1~1.5 ㎜)のミンチ目皿を使い分けてミートチョッパーにかける。3厘の目皿を使用すれば、ジャリジャリした食感が残らないじゃこ天が、5厘の目皿を使用すれば、ジャリジャリした食感のじゃこ天が製造できる(写真5)。
- 擂潰 石臼は、使用する前に十分冷やしておき、砕肉を冷やしきった状態で使用する。擂潰機に、魚肉、塩、うま味調味料、ぶどう糖、でん粉、氷等を加えて、擂潰機の大きさによって異なるが、約30~60分間擂潰して肉糊とする(写真6)。
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- 成形 扁平状(11cm×6cm×0.9cm)に成形する。成形は、ほとんど自動成形機で行っているが、昔ながらの木枠を使用して手作業で行っているところもある(写真7)。
- 油ちょう 油は、大豆白絞油や、菜種油を使用している。150~200℃で1~2分間油で揚げる。
- 脱油 脱油装置で行う(写真8)。
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(提供:(有)安岡蒲鉾)
- 冷却 冷却器を使用すると、落下細菌の付着も少なく衛生的である。
- 包装 自動包装機で包装する(写真9)。
- 検査 金属探知機やX線透過装置等を使用する。
- 製品 梱包して出荷する(写真10)。
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加工に用いる機器等
使用する機器は、魚洗機、ミートチョッパー、擂潰機、成形機、油ちょう機、脱油機、冷却器、包装機、検査機器(金属探知機、X線透過検査装置等)である。
品質管理のポイント
製品の食感の劣化を防ぐために、製造工程中の魚肉・肉糊等の品温を低温に保つこと(10℃以上にしないこと)が重要である。包材の亀裂やピンホールによるカビの発生、異物混入などが問題となる。異物混入防止のためには、金属探知機やX線透過装置等による検査が必要である。
特徴的な成分
じゃこ天の栄養成分を表3に示す。じゃこ天は、魚肉と中骨、皮も一緒に粉砕し、水晒しをしないので、他のねり製品と比較して、機能性成分であるカルシウム、EPA、DHA等が多いことが特徴である。(水産物に含まれる各種成分の効能については、「この図鑑の使い方」末尾の【参考情報】をご参照ください)

製品の形態
ス-パ-等で販売されているじゃこ天は、1袋3枚入りが主であり、5枚入りもある。また、1口サイズ(12g、55.6cm×29.7mm×8.2mm)で10枚入りもある。形状は、長方形が主で、円形タイプや正方形タイプ、ステックタイプ等、いろいろな形状のじゃこ天が販売され、多様化している。
また、じゃこ天の1枚当たりの重量は、50.1g(1982年)から、46.8g(2024年)と小さくなる傾向にある。
包装および保管方法
含気包装した製品は、常温では夏場で2~3日が限度であるが、冷蔵庫に貯蔵すると1週間程度の保存が可能である。さらに、真空包装や窒素ガス置換包装すると、冷蔵庫で2~3週間保存可能である。近年販売されている包装後レトルト(高温高圧加熱殺菌)処理した製品は、長期間の常温保存が可能である。
調理方法および食べ方
焼いて大根おろしと醤油をかけて食べたり(写真11)、そのままマヨネーズをつけて食べる。
また、 おでんの具材とすることもある(写真12)。
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同類製品例
アジ天、タチウオ天、さつま揚げ、揚げかまぼこ等がある。
その他、じゃこ天を活用した製品に、じゃこカツやじゃこ天せんべい等がある。じゃこカツは、じゃこ天のすり身にパン粉をつけて油で揚げたものである(写真13)。また、じゃこ天せんべいは、じゃこ天を加熱圧縮成型機でサクッとしたせんべい様に焼き上げたものである(写真14)。
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コラム
「愛媛のかまぼこ」
愛媛県では、じゃこ天以外にも様々なねり製品が盛んに作られている。愛媛県のかまぼこは、1600年代、宇和島藩主となった伊達秀宗公が、仙台からかまぼこ職人を連れてきたことに由来すると言われている。その後、瀬戸内海や豊後水道の豊富な水産物を原料として発展し、様々なねり製品が製造されるようになった。
参考文献
・農林水産省、都道府県別水産加工品生産量の推移.
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/suisan_ryutu/suisan_kakou/ (2025年3月10日参照).
・総務省統計局家計調査(都道府県庁所在市の1世帯当たり年間の品目別支出金額,購入数量(二人以上の世帯).https://www.stat.go.jp/data/kakei/5.html (2025年3月15日参照).
・城敦子.練り製品製造工程における微生物の増減挙動と温度管理.愛媛工試研究報告1999;.38:45-48.
・平岡芳信.水産練り製品の原料魚と品質に関する研究(第5報)「市販のじゃこ天ぷらの品質・成分調査(3)」.
愛媛工試研究報告2006;.44:79-84.
(著者:元愛媛県産業技術研究所 平岡 芳信)
(協力:有限会社 安岡蒲鉾)
