ブリ味噌とは
ブリ味噌とは、ブリ(写真1)の身に米麹、塩を加えて混合・攪拌後、味噌と同様に発酵・熟成させた味噌様の発酵調味料(魚味噌)である。低利用魚を有効活用した魚醬油の製造副産物(搾り粕)の発生を抑制した発酵調味料の製造技術開発を目的として、富山県農林水産総合技術センター食品研究所により開発された。
魚味噌の研究開発は日本各地で進められており、北海道、秋田、長崎等でも特徴のある地元の魚介類を用いた魚味噌が製造販売されている。
(本文末尾のコラム「醤油・味噌の起源から顧みた魚味噌」もご参照ください。)
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主な生産地
富山県
生産の動向
2017年の販売開始以来、販売量は増加傾向にあり2024年度の販売量は約900本(180gの瓶入り)である。
原料選択のポイント
富山湾において春~夏に漁獲される脂質の少ないブリを用いる。
使用する副原料
塩、米麹
加工技術
米味噌の製造技術を応用したものである。すなわち、米味噌の原料である大豆の代替として魚肉(ブリ)を用いて米味噌製造方法に類似した製造技術により発酵・熟成させる。
製造工程の概略

加工の実際
- 原料魚 春~夏頃に漁獲された脂質の少ないブリを使用する。
- 採肉 頭部、内臓を除去して水洗後、三枚に卸して身をぶつ切りにする(写真2)。
- 原料混合 塩、米麹と混合する。塩が15%、米麹が50~60%程度となるように混合する(写真3,4,5)。
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(提供:富山県食品研究所)
写真③-1024x794.jpg)
(提供:富山県食品研究所)
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(提供:富山県食品研究所)
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(提供:富山県食品研究所)
- 発酵・熟成 室温で12ヶ月以上、発酵・熟成させる(写真6)。
- 容器詰め ビンに詰める。
- 殺菌 90℃で30分間湯煎殺菌する。
- 製品 梱包して出荷する。常温で流通する(写真7,8)。
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(提供:㈲片口屋)
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(提供:富山県食品研究所)
加工に用いる機器等
攪拌機 等
品質管理のポイント
発酵を止めるため、90℃で30分間湯煎殺菌を行う。
製品の形態・包装及び保管方法
製品の形態は、主にビン詰めである。常温での流通・保存が可能であり、製造後の賞味期限は約1年間である。
調理方法および食べ方
各種料理、焼き肉のタレ、パスタソース等の隠し味(写真9)、焼き鳥のトッピング(写真10)、魚漬の漬け床(写真11)、ナッツ類の調味(写真12)等として用いられる。
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同類製品例
鰤味噌豆板醤(写真13)は、魚味噌に豆板醤等を混合した調味魚味噌である。
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参考文献
・包 啓安.醤と醤油の淵源とその生産技術について. 日本醸造協会誌 1982; 77: 365-371.
・原田恭行,横井健二.クエン酸添加による魚味噌熟成中のヒスタミン蓄積抑制効果について. 日本醸造協会誌 2018; 113: 85-93.
コラム
「醤油・味噌の起源から顧みた魚味噌」
醤油・味噌の明確な起源は不明であるが、中国(殷代)の醤であるという説がある。殷代初期の醤は、農耕文明が発達する以前に、肉や魚を原料に麹と食塩を加え醸造したもの(肉醤・魚醤)であり、麹の発見後と考えられている。農耕文明の発達とともに、肉や魚を原料とした肉醤・魚醤は衰退し、大豆を原料とした醤が盛んに造られるようになり、現代の醤油へ変遷したと考えられている。
醤油や味噌が、日本に伝来した時期については諸説あるが不明である。醤油や味噌の記録が残る最古の書物は701年の大宝律令であり、大豆を原料とした醤の他に、味噌を指すと考えられる「未醤」の記載があり、味噌の起源は中国の醤から変遷した未醤(未熟の醤)であると考えられている。
魚味噌は、日本ではあまり馴染みが無いが、「醤」を起源とする味噌の変遷を顧みると、魚を原料とした未醤(未熟の醤)に近く、太古に使われていた発酵調味料が再現されたものであるかもしれない。
(著者:富山県農林水産総合技術センター食品研究所 原田 恭行)
(協力:有限会社 片口屋)
