焼きえびとは
主に熊本県の八代海で打瀕網により漁獲される小型のアカヤマエビ(主にアカエビのことを指し、トラエビやサルエビ等を含めたエビの総称)や大型のクマエビを、正月の雑煮の出汁に用いるために、焼いて保存可能な状態にした製品である(写真1)。これらのうち、エビを焼いた後にわら縄でまとめて縛り、吊したものは「吊しえび」と呼ばれる。
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主な生産地
熊本県芦北地方
生産の動向・消費の動向
「焼きえび」は芦北周辺の2業者が、主に地元原料を用いて生産している。
「吊しえび」は、八代海で打瀬網によって生きたまま漁獲されたクマエビだけを使い、地元の(株)みやもと海産物が年間およそ1,500個を手作業で生産している。いずれも出荷先の主体は鹿児島県である。秋に製造し、年末の歳暮用や雑煮の出汁用としての出荷が大部分である。
原料選択のポイント
アカヤマエビは原料の鮮度が重要なポイントである。エビ類は鮮度が低下すると酵素(エビの体液中にあるフェノラーゼが、アミノ酸のチロシンを酸化して黒色色素のメラニンを生成する)により黒くなることや、頭胸部が脱落し、商品価値が落ちることから、水揚げ後の鮮度保持が重要になる。
地元で漁獲がない場合は徳島県から冷蔵品で調達しているが、体色が黒くなっていない鮮度の良いエビを使用している。
クマエビは水揚げ時に生きている個体のみを使用する。
加工技術
エビは加熱することによって赤色になる。焼きえびは、火の通し方で鮮やかな赤色が出せるかが大きなポイントである。
製造工程の概略

加工の実際
焼きえび
- 原料 基本的には、熊本県八代海で、打瀬網で漁獲されたアカヤマエビを用いる。また、アカヤマエビが地元で調達できない場合は徳島県産(冷蔵)を使用する。
- 手並ベ 加熱時の曲がりを防止するために、アカヤマエビは脚を向かい合わせにし、手作業で1尾ずつ背を伸ばしながら並べていく。
- 焼き 焼きえびは1cm目開きの焼き網(1m×0.5m)に並べて薪ガスの火による加熱を行う。
- 熱風乾燥 熱風乾燥器を使用して、45℃~50℃で、5~7時間乾燥する。
- 包装 袋に入れて、含気包装を行う。
- 製品 梱包して出荷する。
吊るしエビ
- 原料 生きているクマエビだけを使用する。
- 氷締め 鮮度を保つために、生きたエビを冷たい潮氷(海水と氷を混ぜたもの)に入れて、エビを仮死状態にする。
- 串うち エビに串を打って真っ直ぐに伸ばす。
- 焼き 薪火の周囲に串を立てて約3時間で焼き上げる(写真2)。
- 縛り 吊しえびに用いる縄は、稲刈りが済んだ後の稲藁を使用する。これを用いることでエビにカビが増殖するのを防止する効果がある。
- 保存 吊るして保存する(写真3)
- 包装 袋に入れて含気包装を行い、化粧箱に入れる。
- 製品 梱包して出荷する。
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(提供:(株)みやもと海産物)
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(提供:(株)みやもと海産物)
加工に用いる機器等
熱風乾燥器
品質管理のポイント
製造後は湿気に注意する必要があり、冷凍で保管されている。賞味期限は常温で約2カ月間である。
製品の形態・包装及び保管方法
焼きえびは、100gずつトレーに入れた後、ポリ塩化ビニル樹脂系包材で包装し、他に35g入りを手頃な商品としてポリ塩化ビニル樹脂系の包材に入れて販売している。吊しえびは、20尾ずつわら縄で縛った状態で化粧箱に入れて販売している(写真4,5,6)。常温流通可能である。
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調理方法および食べ方
正月の雑煮やにゅうめんなど、姿のまま使用しても良いし、味噌汁、茶碗蒸し、おでん、炊込みご飯等の出汁として使用しても、エビ特有の甘味、旨味が出て美味しい。
(著者:熊本県水産研究センター 岡田 丘)
