はじめに
節類はカツオ肉等を煮熟、焙乾、カビ付けして製造した乾製品で、食品表示基準ではカツオ、サバ、マグロ等の魚類について、その頭、内臓等を除去し、煮熟によってタンパク質を凝固させた後冷却し、水分が26%以下になるように燻乾したもの(節)、または、これに2番カビ以上のカビ付けを行ったもの(枯節)と定義されている。保存性と良好な香味に富んだ天然の調味料で、主に削った状態のもの(削り節)を煮出して出汁をとる際に用いられ、和食には欠かすことのできない重要な食品の一つである。
節類の歴史は古く、古代までさかのぼる。701年に大宝律令、賦役令により「堅魚(かたうお、かつお)」、「煮堅魚」、「堅魚煎汁」が重要貢納品に指定されている。「堅魚」はカツオを干し固めたもの、「煮堅魚」はカツオを煮てから干し固めたもの、堅魚煎汁は煮汁を煮詰めた調味料である。焙乾法が登場したのは室町時代、かつお節が本格的に製造されるようになったのは江戸時代に入ってからで、さらに明治時代になってカビ付けの技術が普及し、本枯節が製造され始めた。
加工技術の原理
魚体を丸ごと、常温流通可能な程度まで乾燥させるため、節類の製造には長い期間と多くの工程を要する。節類の製造で特に重要な工程とその意義を図1に示した。煮熟は3枚または5枚(節)におろした魚肉を長時間ボイルする工程で、タンパク質の凝固と自己消化酵素の失活、微生物の死滅を目的としている。焙乾は薪を燃やして発生する煙と熱で燻す工程で、乾燥と香り付けを同時に行う。また、焙乾とあん蒸(あんじょう、焙乾後に放冷する工程)を交互に行うことで、魚肉の内部に残っている水分を表面に拡散させ、乾燥が促進する。カビ付けはカビの力により、内部に残っている水分をさらに減少させるとともに脂肪も分解させることで、風味がよく、透明なだし汁が得られる。

原料と一般的な製造方法
カツオは主に遠洋のまき網で漁獲された冷凍原料が、サバ等その他の魚は主に近海のまき網等で漁獲された生原料が用いられる。また、脂質含量の少ない原料が好まれる。すなわち、脂質含量が少ない原料で製造された節からは良好な削り節が得られるのに対し、脂質含量が多い原料を用いると、脂質酸化により黄変しやすく、また、削り節にした際に粉状になりやすい。
節類の一般的な製造方法は次のとおりである。カツオの場合は解凍後、その他の魚は生で頭、内臓を除去し、丸ごとまたは三枚(大型の場合は節まで)におろしてから煮熟する。なまり節は煮熟後、放冷したものである。その後、焙乾工程ではかつお節の場合は乾燥庫(急造庫、焼津式乾燥機)で2週間程度、さば節の場合は薪式の乾燥機で概ね1週間程度の乾燥を行う。焙乾工程を終えた節は荒節と呼ばれる。荒節の表面のタールを削ったもの(裸節)を用いてカビ付けを行う。カビ付けが終わった節は本枯節とよばれる。(図2)

製品の種類
表1に本章で紹介する節類の一覧を示した。第1節(かつお節)では、カツオを煮熟、焙乾して製造される「かつお節」を、第2節(なまり節)では、カツオやマグロの節を煮熟、放冷して製造される「なまり節」を取り上げた。第3節では、その他の節類を取り上げた。

生産の現状
国内における節類の生産量の推移を図3に、削り節の生産量の推移を図4に示した。節類の生産量は2004年と2009年では67,000トンであったが、それ以降は減少傾向となり、2024年の生産量は43,000トンであった。節類全体に占めるかつお節の生産量は平均で56%、さば節の生産量は平均で21%となっている。削り節の生産量は2004年の43,000トンから減少傾向を続け、2024年の生産量は26,000トンであった。削り節全体に占めるかつお削り節の生産量は平均で57%となっている。図5にかつお節・削り節の一世帯当たりの年間購入金額の推移を示した。2015年までは800円を維持していたが、それ以降減少傾向が続き、2021年以降は700円を下回っている。



安定した製造に向けた課題
節類の安定的な製造に向けては原料入手、製造技術の伝承、焙乾工程で生じる多環芳香族炭化水素(PAHs)等、幾つかの課題を抱えている。かつお節の原料入手は以前よりも厳しい状況におかれている。カツオの主要な漁場である太平洋の赤道周辺海域は大部分が島しょ国の200海里水域内である。2012年にナウル協定国グループが排他的経済水域名で操業する漁業者に対して従来よりも高額な入漁料を設定した。このため、カツオのまき網漁船の操業経費は人件費、燃料代に加えて入漁料の負担も大きくなり、経営を圧迫している。
節類の製造は長期間にわたる。良い製品に仕上げるためには焙乾やカビ付けといった特殊技能が必要となり、省力化や効率化は容易でない。このため、後継者にこれらの技能を継承することが重要である。
一方、PAHsには発がん性があることが指摘されている。欧州連合(EU)、カナダ、韓国等ではベンゾ[a]ピレン(BaP)の基準値が設定されている。日本では食品中のPAHsについての基準値は設定されていないが、節類のPAHs低減策が検討されている。
参考文献
・農林水産省大臣官房統計部. 水産加工統計調査結果. 「農林水産統計」2004-2024.
・総務省統計局. 家計調査年報. 2008-2024.
・宮下 章. 鰹節(ものと人間の文化史). 法政大学出版局. 2000.
・一般社団法人日本鰹節協会・全国鰹節類生産者団体連合会. HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(小規模な節類製造事業者向け). 厚生労働省. 2021.
・食品表示基準. 平成二十七年内閣府第十号. 2015.
・鈴木たね子.魚の味.共立出版, 112, 1983.
(著者:東海大学海洋学部水産学科 平塚 聖一)
