くちことは
くちことはマナマコ(以後ナマコと書く)の卵巣を三味線のばちのような形状に乾燥させた「干しくちこ」と乾燥ぜずに生のままびん詰めにした「生くちこ」があり、製造に大変手間がかかる製品である。くちこの原料となる生殖巣は成熟したナマコからしか取れず、干しくちこ1枚を作るのに数キロから数十キロの成熟したナマコを必要とする。近年、ナマコの漁獲量が減少しているため、大きいものでは1枚5,000円程度の高価な製品である。
生産と消費の動向
主な生産地は七尾市石崎地区と穴水町中居地区で、生産者への聞き取りによると、両地区で生産量は年間約10,000枚である。漁獲されるナマコの減少によって生産量は減少している。
原料選択のポイント
マナマコはその体色によりアオ、アカ、クロの3系に分けられる。原料となるのは石川県七尾市、穴水町の地先の砂泥域に生息しているアオナマコの卵巣である。くちこの品質に大きな影響を与える要因の1つにナマコの生殖巣の成熟度合いがある。11月のナマコ漁解禁当初の生殖巣は未成熟であるため、製品の品質は劣る。また、3月下旬になると生殖巣は成熟して大きいが、味に渋みが出たり、乾燥時に縄に掛けてもすぐに落下したりするため原料として適していない。このため1月下旬から3月上旬に獲れたナマコの生殖巣が高品質のくちこ原料として最も適している。
加工技術
乾燥前の生殖巣には80%以上の水分が含まれていているが、これを乾燥させると水分は20%程度に減少する。このように乾燥することによって、くちこの旨味が凝縮される。
製造工程の概略

加工の実際
- 原料 2月から3月上旬に獲れたナマコの卵巣を用いる。サイズや厚みを確認する。
- 生殖巣採取 マナマコの腹を裂き、卵巣と精巣を取り出す。(写真1)
- 洗浄 海水を満たした容器内で卵巣を丁寧に洗う。
- 縄掛け整形 幅90cm程度の間隔に組んだ木枠の間に張った縄に、容器内の生殖巣を箸ですくってかけ、三味線のばち状に整形する。(写真2)
- 乾燥 天候が良ければ直射日光を避け屋外で自然乾燥させ、悪天候のときはで空調設備が整った室内で乾燥を行う。寒風に当てることで旨みが増す。乾燥が進むにつれて卵巣間に隙間ができるので、新しい卵巣を補い形を整える。乾燥に要する時間は気温や湿度によって異なるが、およそ1週間程度で終了する。
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(撮影:石川県水産総合センター)
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(撮影:石川県水産総合センター)
品質管理のポイント
2月~3月上旬に獲れたナマコの卵巣を用いる。内臓を傷つけないようにナマコを捌く。乾燥機で干すとパリパリになり食感が悪くなるため外気で乾燥するのが好ましい。
特徴的な成分
干しくちこにはうま味が凝縮されており、遊離アミノ酸、有機酸が多い。特に旨味や甘味を有するグルタミン酸、アラニンが多く含まれている。
製品の形態・包装及び保管方法
フィルムパックで包装され冷凍や冷蔵で流通している。賞味期限は冷凍で1年、冷蔵で6か月である。
調理方法および食べ方
そのまま軽く火にあぶり、細かく短冊形に切り、酒の肴や高級料理に使用される。熱燗やお吸い物に1~2片入れるとうま味を引き立たせる。
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(提供:(有)大根音松商店/能登珍味 なまこや)
参考文献
・森真由美他.伝統水産加工品の成分.水産物の利用に関する共同研究第44集 2004;20-25
(著者:石川県農林水産部 水産課 小柳 真由美、石川県水産総合センター 西田 光希)
