目次
第1章 乾製品 第5節 調味乾燥品

いわしみりん干し

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保存方法

冷凍保存/冷蔵保存

キーワード

さくら干し みりん干し カルシウム

備考

Iwashi-mirin-boshi/伝統的加工品

いわしみりん干しとは

 いわしみりん干しは、マイワシ(写真1)、カタクチイワシ(写真2)を開きにし、甘めの調味液につけ込んだ後に乾燥させたものをいう。砂糖や食塩、醤油、みりん等で味をつけたあっさりとした甘みの中にイワシのうま味が凝縮された製品である。
 いわしみりん干しは大正時代初期、九州地方でイワシを醤油に浸けて乾燥した製品が始まりと言われており、その後製法が改良され、調味液に砂糖、水飴、食塩、みりん等が使われるようになり、現在では全国各地で多くの魚種を原料に生産されている。
(本文末尾のコラム「さくら干しの名前の由来」もご参照ください。)

写真1 いわしみりん干し(マイワシ)の商品(提供:株式会社鴨安商店)と原料魚(提供:茨城県水産試験場)
写真2 いわしみりん干し(カタクチイワシ)の商品(提供:茨城県水産物開発普及協会)と原料魚(提供:茨城県水産試験場)

主な生産地

  茨城県、千葉県、長崎県、富山県 ほか

原料選択のポイント

 近年、茨城県ではイワシ類の漁獲傾向が変わってきており、カタクチイワシよりマイワシの漁獲量が多い(漁業・養殖業生産統計より)。みりん干しの原料には、その年に多く漁獲される魚種を用いるが、最近は一次処理の一部を機械化できるマイワシのみりん干し製造が主流である。カタクチイワシを原料とする場合、一尾ずつ手作業でみりん干しに加工する必要があり、製造の継続が難しくなっている。
 原料のイワシは、乾燥、貯蔵中に脂肪の酸化が進んで油焼けが起きやすいため、主に脂肪の少ない時期のものを選ぶことが基本であるが、近年は冷凍物流機能が確立されたため、マイワシを原料に用いる場合、脂乗りの良い魚をソフトに乾燥し冷凍して出荷する製品が主流になっている。鮮魚の原料よりも冷凍した原料の方が調味液の浸透が容易なため冷凍原料を用いるのが主流ではあるが、「朝獲れ」、「ワンフローズン」等をこだわりとする商品は鮮魚で加工する。

加工技術

 いわしみりん干しは、イワシの開きを砂糖と食塩を主体とした調味液に浸漬して乾燥した製品である。調味液に浸すことによる脱水作用、その後の乾燥によりさらに水分を減少させ保存性を持たせた製品である。

製造工程の概略

加工の実際

  • 原料 茨城県内や千葉県に水揚げされるマイワシ(写真1)やカタクチイワシ(写真2)が使用されている。カタクチイワシは、脂肪の少ない時期の魚が使われる。鮮魚よりも解凍魚の方が調味液が浸透しやすい。

  • 頭部等の除去、開き加工 マイワシのように大きい魚は頭と内臓、頭部よりの中骨2/3を取り除いた開きの形にする(写真3,4)。カタクチイワシは親指で腹開きし、中骨1/2程度、内臓、頭を除去する。

写真3 製造風景1(ヘッドカッター投入)
(提供:株式会社鴨安商店)
写真4 製造風景2(フィーレマシンで開きにしたマイワシ)
(提供:株式会社鴨安商店)

  • 配列 カタクチイワシが原料の場合に行う工程であり、カタクチイワシを開いたあと漬け込み用の型網(合成樹脂製)に魚体の一部が重なる形で並べる。マイワシは魚体が大きいので特に配列しない。

  • 血抜き・洗浄 マイワシはそのままで水洗いし、水切りするが、カタクチイワシは配列した型網を押さえ用の網で束ねた状態で行う。

  • 調味液漬け込み 調味液の配合は加工業者毎に異なるが一例を示すと、水、砂糖、食塩を混ぜて溶かし、薄めたものを使用する。その他の調味料としてみりん、醤油、水飴、化学調味料を使用する場合もある。0~5℃の冷蔵庫で一晩調味液に漬け込んだら、翌日手を入れて魚を動かし、液をなじませさらにもう一日漬け込む。

  • 乾燥 液を切った後1枚ずつセイロやすのこに並べ(写真5)白ごまをふりかけ、乾燥機または天日等で乾燥する。均一に乾燥するため、カタクチイワシは途中何度か簀を裏返して十分に乾燥させるが、マイワシ等は現在の嗜好に合わせたソフト製品が多い。

  • つや出し(※ 製品により工程が追加される場合もある) カタクチイワシの場合デンプン溶液を噴霧しつや良く仕上げる。ゴマが剥がれるのを防ぐため乾燥前ではなくデンプン溶液噴霧の後にゴマをふることもある。マイワシ等、ソフトな製品の場合はつや出しを用いない場合もある。

写真5 製造風景3(乾燥機庫内)
(提供:株式会社鴨安商店)
写真6 製造風景4(重量選別機投入)
(提供:株式会社鴨安商店)
写真7 製造風景5(トンネルフリーザー投入) 
(提供:株式会社鴨安商店)
写真8 製造風景6(箱詰め作業) 
(提供:株式会社鴨安商店)

加工に用いる機器等

 解凍機、ヘッドカッター(写真3)、フィーレマシン(写真9)、貯蔵庫、乾燥機(写真10)、冷凍機ほか

写真9 加工機器1(フィーレマシン)
(提供:株式会社鴨安商店)  
写真10 加工機器2(乾燥機 外観)
(提供:株式会社鴨安商店) 

品質管理のポイント

 品質が低下しないよう、出荷までは冷凍(-18℃以下)で保管する。販売は冷凍もしくは冷蔵で行われる。

特徴的な成分

 調味液に漬込み、乾燥しているため水分が少なく、他の成分の含有率が生の魚よりも高くなる。例えば、マイワシのカルシウム含量は、100g当たり、生で74mg、みりん干しで240mg。カタクチイワシのカルシウム含量は、100g当たり、生で60mg、みりん干しで800mgである。(出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)
(水産物に含まれる各種成分の効能については、「この図鑑の使い方」末尾の【参考情報】をご参照ください)

製品の形態

 1~数枚ずつフィルム包装したり、トレーにのせラップで包装したりしたものを箱に入れて出荷する。

包装および保管方法

  購入後は、冷凍(-18℃以下)または冷蔵(10℃以下)で保管する。

調理方法および食べ方

 焼いて食べる。焼くときにとても焦げやすいので弱火でじっくりと焼く。焼いたときの香ばしさが特徴的な加工品である。

写真11 昭和30~50年代の製造風景①
(提供:株式会社鴨安商店) 
写真12 昭和30~50年代の製造風景② 
(提供:株式会社鴨安商店)
写真13 昭和30~50年代の製造風景③
(提供:株式会社鴨安商店)
写真14 昭和30~50年代の製造風景④
(提供:株式会社鴨安商店)
写真15 昭和30~50年代の製造風景⑤
(提供:株式会社鴨安商店)

コラム 

「さくら干しの名前の由来」

 みりん干しは別名「さくら干し」とも呼ばれ、その名の由来は諸説ある。さくら干しの原料とされていたマイワシは桜の季節(3~4月)のものが脂肪が少なく、みりん干しに最適だったうえ、昔は冷凍技術がなくこの時期が製造の最盛期であったこと、魚を開いて干したその形が桜の花びらに似ていることから名づけられたともいわれている。また、茨城県神栖市波崎の㈱鴨安商店によると、1931(昭和6)年頃「みりん干し」は嗜好品扱いの食品であったため鉄道の輸送費が高かったが、当時の鉄道省に陳情し、「さくら干し」として輸送費の安い惣菜品として出荷できるようになり、各業者も同名称を使用したことから、さくら干しの名称が定着していったとのことである。その後の昭和30~50年代の製造風景を写真11~15に示した。

(著者:茨城県水産試験場 鈴木 美紀、矢口 登希子)
(執筆協力:株式会社 鴨安商店)