目次
第1章 乾製品 第1節 素干し品

するめ

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保存方法

常温保存

キーワード

褐変/ベタイン/タウリン/縁起物/延喜式

備考

Surume/伝統的加工品

するめとは

 するめ(写真1、2)は、イカ類の内臓を取り除いて乾燥した素干し品であり、簡便な加工品・保存食品の1つとして、古くより親しまれてきたものである。平安時代には、すでに朝廷に献上されたとの記録があり、室町時代前後から昭和期までは中国などへの輸出品の花形でもあった。
(本文末尾のコラム「するめ」と「あたりめ」もご参照ください。)

主な生産地

 北海道が主な生産地であり、次いで長崎県(対馬、五島)での生産が多く、北海道のするめを北海するめ、長崎県対馬のするめを対州するめという。五島ではアオリイカを原料としたするめが製造されている。中国、台湾、韓国、ロシアなどからの輸入もある。

生産の動向

 平成15年から令和4年までの全国のするめ生産量の推移を図1に示した。近年の生産は、平成16年の15,668トンをピークに、令和4年には1,549トンまで減少している。この背景には、主な原料であるスルメイカの不漁がある。

図1 全国のするめ生産量(農林水産省 水産加工統計調査及び漁業センサスより)

原料選択のポイント

 原料として、スルメイカ、ケンサキイカ、ヤリイカ、アオリイカなどが使用される。スルメイカは中国、ケンサキイカはタイ等から輸入されることもある。最近ではアルゼンチンマツイカも使われている。
 ケンサキイカ、ヤリイカを原料としたするめは「剣先するめ」、アオリイカを原料とするものは「水イカするめ」と呼ばれる。
 原料の鮮度は品質を大きく左右するので、冷凍原料を含めて鮮度管理には注意を要する。スルメイカに関しては300 g程度の中サイズのものが、するめ加工に適しているとされる。

加工技術

 素干し品であり、乾燥により水分活性を低下させ、風味と保存性を付与する。

製造工程の概略

加工の実際

ここでは長崎県対馬における加工の実態を中心に述べる。

  • 原料 生鮮原料の場合、鮮度良好で透明感のあるものが良い。冷凍原料も使用される。

  • 開き加工  外套膜(胴体)の腹側中央部を、頭部からひれ側方向に向けて、内臓を傷つけないよう注意しながら先端まで切り裂く(写真3)。剣先するめの場合、先端より5 ㎜程度手前で止める。続いて、頭脚部も開き、軟甲を残して、内臓・眼球・くちばしを除去する。軟甲は形を保つうえで欠かせないものである。

写真3 開き加工の様子(提供:長崎県)

  • 剝皮 表皮の剝皮は地域・製品によって異なり、外観を重視する場合に行われる。ケンサキイカでは剝皮が容易であるため、手で剝くことが多い。一方、スルメイカでは皮下の薄皮が剝きにくいため、剝皮機で処理した後(写真4)、残った皮を手作業で除く(写真5)
    剣先するめの場合、後端部の表皮を1 cm程度残す習慣がある。これは、かつて流通時に他産地のものと区別するために行われていた名残だとされている。ベトナムやタイで作られる剣先するめも同様の方法がとられているが、これは対馬からするめ加工技術が伝播した結果であると推測される。

写真4 剝皮機で皮を剝く様子(提供:長崎県)
写真5 手作業で皮を除く様子(提供:長崎県)
  • 洗浄 海水や真水で丁寧に洗浄する。海水で洗浄する場合、塩分の付着によって乾燥が悪く、製品が吸湿しやすくなるほか、光沢も劣るという。そのため、最後に真水で塩分を洗い流すのが理想とされ、特に剣先するめは真水で洗う。

  • 乾燥・整形 竹さおなどに張ったロープに吊り下げる。剣先するめの場合、S字型の針金を吊り下げ、これにイカの先端部を掛ける。竹串で胴体を広げ、固定する(写真6)。ある程度乾燥したところで「手割り」とよばれる伸展・整形作業を行い、その後乾燥を再開する(写真7)。乾燥後は手作業による整形を行い(写真8)、再度冷風乾燥機にて乾燥させ、最後にロール機によって伸展・整形を行う(写真9)
     対馬地域では、円筒形乾燥枠のついた回転式乾燥機が用いられ、天気の良い日は屋外で5~8時間程度乾燥させる。夜間は室内で回転させながら乾燥させるが、最近では温風乾燥機を用いる場合もある。歩留まりは、剣先するめで14~18 %である。

  • 検品・包装   検品を行い、サイズ別にビニール袋で包装し、段ボール箱に詰め出荷する。

写真6 竹串でイカを吊るす様子(提供:長崎県)
写真7 手割作業(提供:長崎県)

写真8 整形している様子(提供:長崎県)
写真9 ロール機で伸展・整形している様子(提供:長崎県)

加工に用いる機器等

 剥皮機やロール機、温風・冷風乾燥機が用いられる。
 対馬地域では円筒形乾燥枠のついた回転式乾燥機が使われている(写真10)。回転式の乾燥機は遠心力等で水分がとびやすく、乾燥が早い(写真11)。また、動いているので蝿などもつかず衛生的でもある。これは、地元鉄工会社と水産加工業者が共同で開発したもので「カワキャンセ」という名称で知られる。カプセルトイとしても販売され、知名度を獲得している。

写真10 回転式乾燥機「カワキャンセ」(提供:長崎県)
写真11 回転している様子(提供:長崎県)

品質管理のポイント

 良い製品は、肉質のしまりが良く、美しい黄白色で、特有の香味を有し、脚部や吸盤の脱落がなく形が整っており、重量も揃っている。吸湿や褐変による品質劣化に注意が必要であり、-20 ℃以下の冷凍保管が望ましい。表面に白粉が浮き出ることがあるが、これはベタイン、タウリン、その他遊離アミノ酸の混合物とされる。

製品の形態

 姿のままの製品と、カットされた製品がある(写真1、2)。姿のままの製品はサイズ別に箱詰めされ出荷される(1箱あたり約10 kg)。

包装および保管方法

 常温保存可能であり、湿気が少ない冷暗所での保管がよい。低温保存であればより品質を保つことができることから、気温が高い時期などは冷蔵・冷凍で流通することもある。

調理方法および食べ方

 焼いて食べるほか、素材として多くの料理に利用される。縁起ものや飾りものとしての用途も多い。

コラム

「するめ」と「あたりめ」

 「するめ」は、平安時代中期に編纂された『延喜式えんぎしき』という法典の中に、朝廷への献上品として記載されている縁起物であり、当て字で「寿留女するめ」とも書く。現在でも大相撲では縁起を担ぐ意味で、勝栗・昆布・洗米・塩・かやの実・スルメの六品が、本場所初日前日に土俵の中央に埋められる。
 しかしながら、「する」が賭け事でお金を“する”を連想させることから、反対の言葉「当たる」に言い換えたのが「あたりめ」である。賭け事が日常の楽しみでもあった、江戸時代の庶民が生み出した言葉遊びの一つである。
 イカを乾燥した姿を残したままを「するめ」、それを裂いたものを「あたりめ」と区別するメーカーもあるが、「するめ」と「あたりめ」は同じ加工品を指す言葉としてどちらも使われている。

(著者:長崎県総合水産試験場 石崎 航一郎)