目次
第1章 乾製品 第1節 素干し品

げんげ干物

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保存方法

冷蔵保存

キーワード

素干し品/幻魚/寒風干し/混獲

備考

Genge-himono/伝統的加工品

げんげ干物とは

 げんげ干物は、ゲンゲを丸ごと乾燥して干物とした製品である。一般的には「ゲンゲ(幻魚)」と呼ばれている魚には数種類あるが、干物に用いられるのは主に「ノロゲンゲ」という種類である。地方名ゲンギョ、ミズゲンギョなどいろいろな呼び名があり、体の特徴としては細長く白っぽい色をしている。何よりの特徴は全身がゼラチン質(※)で覆われ、「ズルッ」「ヌメッ」とした触感があり、かなり「水っぽい」魚である(写真1)
 げんげ干物は、かつては、自家消費中心であったが、上越市の漁業協同組合の職員が受注生産から販路を拡大し、県内での知名度を上げた実績があり、県内の糸魚川市と上越市名立区(旧西頸城地区全体)で生産が行われるようになった。軒先で寒風干しする風景が当地域では冬の風物詩であった時代もあったが、現在では機械乾燥により生産されるようになってきており、そのような光景は少なくなってきている。また、隣県の富山県でもほぼ同じ形態の製品が製造されている。また、近年では干物を焼成し加工することで常温保存でき、そのまま食べられる商品も販売されている。
(※ “ゼラチン質”の物質は、正確にはゼラチンではなく、粘液糖タンパク質のムチンである)

写真1 原料のノロゲンゲ(提供:㈱ゆめ企画名立)

主な生産地

 新潟県(糸魚川市、上越市)、富山県、石川県

生産と消費の動向

 日本海においてノロゲンゲは山陰以北の水深150m以深に分布し、新潟県での主生息域は水深300~600mで、ズワイガニやホッコクアカエビ(アマエビ、ナンバンエビ)の底曳網漁で混獲される。漁獲がある地域ではポピュラーな魚であるが、それ以外の地域では魚屋やスーパーにはほとんど並ぶことはない。
 大型の個体は鮮魚として汁物の具などに用い、小型の個体は干物に利用している。干物に用いる小型のゲンゲは主にホッコクアカエビを漁獲する時に混獲される(水深400~500m)。鮮魚が市場に姿を見せる主な時期は10月から4月となる。

原料選択のポイント

 漁獲直後で高鮮度の原料を用いる。

加工技術

 水分が多く、鮮度低下が比較的速い。乾燥により原料魚の水分を低下させることで、うま味等の成分を凝縮し、保存性の確保を行う。

製造工程の概略

加工の実際

 げんげの干物は、自家消費用であれば、自然乾燥で5日間程度乾燥し、内臓の水分が抜けたら乾燥終了ととなる写真2が、販売用の製品については冷風乾燥機を使用して製造する。

写真2 自家消費用のげんげ干物の乾燥風景 (提供:㈱ゆめ企画名立)

  • 原料 漁獲直後で高鮮度の原料(ノロゲンゲ)を用いる。

  • 洗浄 水道水で洗浄し、ぬめりを取る。

  • 漬け込み 次亜塩素酸ナトリウム水を用いて洗浄と殺菌のための漬け込みを行う。

  • 水洗い 水洗により漬け込み液を落とす。

  • 冷風乾燥 頭部を串に刺して乾燥棚に並べ、冷風乾燥機を用いて28℃で約24時間乾燥する写真3。乾燥後は冷凍保管し、包装して「げんげ干物」の製品とする写真4

写真3 販売用の干物製造時の様子
(提供:㈱ゆめ企画名立)
写真4 販売されている商品例:幻魚の干物
(提供:㈱ゆめ企画名立)

加工に用いる機器等

 冷風乾燥機

品質管理のポイント

 原料の鮮度保持、ぬめり取りのための前洗浄やその後の次亜塩素酸ナトリウムによる洗浄と殺菌のための漬け込み、乾燥工程の温度と時間の調製が品質管理上重要である。

包装及び保管方法

 袋詰め、または発泡スチロールトレーに入れてラップ包装し、常温保管する。

調理方法および食べ方

 軽く火で炙ったり、天ぷらなどにして食べるのが一般的である。

(著者:株式会社 ゆめ企画名立 細谷 貴雄・新潟県水産海洋研究所 松原 祐樹)