目次
第1章 乾製品 第2節 塩干品

あじ開き干し

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保存方法

冷凍保存/冷蔵保存

キーワード

あじ干物

備考

Aji-hirakiboshi/伝統的加工品

あじ開き干しとは

 あじ開き干しはアジを開きにして、塩水に浸けて干したものである。日本の食卓に並ぶもっともポピュラーなおかずの1つであり、海辺の観光地の土産品としてもすぐに思い浮かぶ製品である。
 近年では消費者の嗜好の変化から、塩味の薄いものが好まれる傾向にある。三訂版日本食品標準成分表(1963)によると、あじ開き干しの塩分は3%となっているが、日本食品標準成分表八訂(2020)では1.7%となっている。

生産と消費の動向

 2022年のあじ開き干しの全国生産量は20,529tで、近年の生産量は減少傾向にある。都道府県別の生産量は静岡県が多く、そのシェアは4割強となっている。そのほかでは神奈川県、大分県、佐賀県などが続く(図1)

図1 あじ塩干品の生産量(平成30年~令和4年水産加工品の加工種類別品目別生産量)

原料選択のポイント

 あじ開き干しの原料は、現在はほとんどがマアジとニシマアジとなっており、ムロアジが多少ある程度である。
 マアジは東シナ海や五島列島、対馬近海産(長崎、佐賀県唐津、福岡で水揚げ)や日本海の境港、浜田、千葉県の銚子などで水揚げされた天然魚が用いられる。ニシマアジは1970年代から使われ始め、安定的に供給されるという利点があり、主な産地はオランダ、アイルランド産等となっている。
原料はある程度脂肪が乗っているものが好まれ、脂肪量が7~16%くらいの原料が使われているが、10%以上のものが良質といわれている。

加工技術

 食塩を主体とした調味液(「塩汁しょしる」と呼ばれている)に浸けることによって調味するとともに、水分活性を下げ、雑菌の増殖を抑制する。また乾燥によっても水分活性は下がり、保存性が増すとともに、色合いがよくなる。

製造工程の概略

加工の実際

  • 原料 水揚げ後、-30℃で急速凍結し、搬送する。原料は-30℃以下で保管する。ニシマアジも漁獲直後に急速凍結されたものが輸入されている。

  • 解凍 解凍庫や流水を使った解凍機を用いて解凍する。また塩汁によって解凍する業者もある。

  • 開き 内臓・鰓を除去して開きにする。この工程は手作業で行われるが、割裁機を用いることもある。なお、沼津地域では腹開きが主流である。

  • 洗浄 残った腎臓やその他の内臓、体表の汚れなどを除去する。バキュームポンプに接続したチューブで吸い取る業者もある。

  • 塩水浸け 「塩汁」の濃度は約10~20%、漬け時間は5~40分間となっており、この時間は原料の質や各業者の味付けの仕方に左右される。「塩汁」は食塩が主であるが、食塩以外については各業者によって独自の工夫がされている。「塩汁」は5℃程度の低温で循環させるなどして管理され、1ヶ月程度使用できる。業者によっては加熱処理して長期に使用する業者もある。また、酸化防止剤として、ビタミンC(アスコルビン酸)を塩汁に添加するか、もしくは後述の乾燥後に噴霧する場合もある。

  • 洗い 余分な塩汁を洗い流す。

  • 乾燥 天日乾燥はほとんど用いられない。25~30℃の温風で30~100分間乾燥させるか、30℃以下で除湿乾燥をかける。乾燥後は放冷する。

  • 包装 最近では、市場出荷の場合はトレーパック(写真1)に並べるか、袋入り、バラ凍結の状態で出荷する。小売店に直接おろす場合はトレーパックに並べるか、真空包装(写真2)して出荷することが多い。

  • 凍結 完成した製品は急速凍結して-30℃以下で保管する。

写真1 あじ開き干しの出荷形態(トレーパック)
(提供:長庄水産株式会社)
写真2 あじ開き干しの出荷形態(真空パック)
(提供:長庄水産株式会社)

加工に用いる機器等

 割裁機、冷風乾燥機、冷蔵庫、冷凍庫、真空包装機 等

品質管理のポイント

 原料魚は基本的に冷凍魚を用いているが、原料魚の鮮度や脂の乗りによって塩の入り方が異なるため、製品の品質が一定となるよう、浸漬液の塩濃度や浸漬時間を調整している。

安全衛生管理のポイント

 食品衛生法改正に伴い営業許可制度の見直し及び届出制度が創設(令和3年6月1日施行)され、アジの開き等の干物を製造している業者も対象となった。現在では、食品衛生責任者の設置や「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理の手引書(小規模な水産加工業者向け)」等を参考にして、衛生管理を行っている。

製品の形態・包装及び保管方法

 トレーパック(写真1)、真空包装(写真2)、袋入りまたはバラ凍結し、冷凍した状態で出荷する。

調理方法および食べ方

 グリルやトースターで焼いて食べるのが一般的であるが、ほぐしてパスタや炊き込みご飯の具に用いるなど、各種料理に利用できる。

(著者:静岡県水産・海洋技術研究所 二村 和視・岡田 裕史)