目次
第7章 水産漬け物 第2節 なまなれずし

ますずし

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主生産地

保存方法

冷凍保存/冷蔵保存/常温保存

キーワード

曲げ物/押し寿司/早ずし

備考

Masu-zushi/伝統的加工品

ますずしとは

 ますずしは、薄く削り取った木材を円形に曲げて作った「曲げ物」と呼ばれる容器の底に放射状に笹の葉を並べ、味付けした酢飯を詰め、この上に調味したサクラマスの身を並べ、笹の葉をかぶせ蓋をした後、上から重石を乗せて押しをした寿司であり、富山県の代表的な特産品である。現在は県内約30数社で製造されている。
(本文末尾のコラム「ますずしの今昔」もご参照ください)

主な生産地

 富山県

原料選択のポイント

 原料となる魚は、サケ属(サクラマス、シロザケ)に固執する業者も多いが、県内の河川に遡上するサクラマスだけでは需要に応えられないことから、日本海近辺や北海道周辺を回遊するサクラマスを中心とした県外産の冷凍マスも多量に用いられている。また、ノルウェーやチリなどのサルモ属(大西洋サケ)を用いるところもある。
 米は、酢飯に合うよう富山県産コシヒカリや複数の銘柄米をブレンドする業者もある。 

加工技術

 ますずしは「早ずし」(なまなれずし)の1つと考えられる。早ずしとはなれずしに対する呼び方で、発酵期間の短い「なれずし」である。なれずしは、魚介類を塩蔵した後米飯に漬け込み、自然発酵によって生じた乳酸などの有機酸やアミノ酸によって酸味とうま味を付与するとともに、発酵によって生じたアルコールなどによって保存性を高めたものであるが、早ずしは自然発酵による酸類のほかに原料として食酢なども用いられる。

製造工程の概略

加工の実際

 製造工程を機械化して大量に生産している業者もあるが、現在も昔ながらの手作りで製造している業者が多く残っている。いずれも以下の工程で製造している。

  • 原料 マスは寄生虫がついている場合があるので、殺虫のため冷凍してから用いる。

  • 調理 3枚におろし、皮、骨などを取り除いた後薄くスライスする。

  • 塩じめ 軽く塩を振り、数時間おく。(写真1)

写真1 塩じめ (吉田屋鱒寿し本舗協力、田中広告写真提供)

  • 酢洗い 砂糖、食塩などを添加した調味酢で洗う。(写真2)

写真2 酢洗い (吉田屋鱒寿し本舗協力、田中広告写真提供)

  • 笹漬け 曲げ物の底に笹の葉を放射状に並べる。(写真3

写真3 笹漬け (吉田屋鱒寿し本舗協力、田中広告写真提供)

  • 酢飯、身入れ やや硬めに炊いた米飯に食塩、砂糖、調味料、食酢を混ぜ冷却してから、笹を詰めた曲げ物の上に詰め、その上に薄くスライスしたマスの切り身を隙間なく並べ、そこに敷いた笹を折り曲げ蓋をする(写真4、5、6。マスの身は、笹をはずしたときに表面に見えるよう前述のように酢飯を入れてから入れる場合と、マスの切り身を入れてから酢飯を詰めることで、笹をはずしたときに、ご飯が見えるように入れる場合とがある。

  • 重ね 重石をして数十分~数時間おく(写真7)

写真7 重ね (吉田屋鱒寿し本舗協力、田中広告写真提供) 

  • 熟成 曲げ物の上下に青竹を2本ずつ並べ、ゴム輪で固定し、熟成させる(写真

写真8 ゴム輪で固定し、熟成 (吉田屋鱒寿し本舗協力、田中広告写真提供)

  • 包装 一般的には掛け紙をかける(写真。または紙箱に入れる。

写真9 包装 (吉田屋鱒寿し本舗協力、田中広告写真提供) 
写真10 ますずし製品
(撮影:富山県農林水産総合技術センター食品研究所)
写真11 簡易包装されたますずし(円形と半円型)
(撮影:富山県農林水産総合技術センター食品研究所)

品質管理のポイント

 2~3日以内に消費するが、低温保存すると飯が硬くなるので夏期以外は室温で保存するのが望ましい。

製品の形態

 一般的には前述のように曲げ物に入れ押した製品を紙または紙箱で包装したものが多い。最近では、笹のついていない製品(円形を半分にした半月型のものもある)を発泡スチロール製のトレーに入れラップで包装したものや、おにぎりのように小さくラップ包装したものも、コンビニエンスストアやスーパーマーケットで販売され好評である。

包装および保管方法

 曲げ物またはトレーに入れラップ包装。多くは常温だが、冷凍流通するものもある。

調理方法および食べ方 

 笹に包まれたまま器から取り出し、8等分程度に切った後、笹をはがして食べる。好みによっては、少量の醤油をつけて食べてもよい。

コラム

「ますずしの今昔」

 享保年間に富山藩三代藩主前田利輿の家臣吉村新八が将軍徳川吉宗に鮎ずしを献上したときの調理法が早ずしだったことが記載されている。その後、神通川で捕れた一番鱒を塩漬けにし、春の祭礼に供えていたのが、江戸期に現代風の鱒の早ずしに代わったと言われている。今でも松川(昔は神通川が、この川であった)沿いにはますずし屋が多く、店先でマスの切り身をそぐ光景も見られる。
 塩味、酸味、マスの身の締め具合は業者により異なり、自分の「推し」とする業者にこだわる県民も多い。
 最近、笹をつけずに半円型に切断してパック包装の製品を製造している業者では、衛生面を重視してアクアジェットカッター(ポンプを用いて高い水圧を発生させ、これを細いノズルの先から噴射し、その力で切断を行う機械)を導入しているところもある。

(著者:富山県農林水産総合技術センター食品研究所 鍋島 裕佳子)
(協力:富山ます寿し協同組合)