目次
第1章 乾製品 第3節 煮干し品

しらす干し

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保存方法

冷凍保存/冷蔵保存

キーワード

釜揚げしらす/ちりめん/しらす/常陸乃国しらす/「し」字率 

備考

Shirasuboshi/伝統的加工品

しらす干しとは

 しらす干しとは、カタクチイワシ、マイワシ、ウルメイワシ等の稚魚(シラス)を塩水で短時間煮熟して乾燥したものをいう。地域によってはイワシ類だけでなく、イカナゴの稚魚(関東ではコウナゴともいう)の煮干しのこともしらす干しというところもある。味は淡泊でくせがなく、そのまま魚体全部を食べることができるため、多くの人に好まれている食品である。
 しらす干しは明治初期から生産されており、当時、原料のシラスは地曳き網により漁獲されていた。現在は、一隻または二隻による曳き網で漁獲されている。
 煮熟後に放冷のみを行ったものを「釜揚げしらす」、乾燥したもののうち半乾燥品を「しらす干し」、上乾品(よく乾燥させたもの)を「ちりめん」と呼ぶ。同じ原料の製品であるが、乾燥度合いにより食感の違った加工品となる。関東地方では水分の多い柔らかい食感の「しらす干し」が好まれ、関西地方では水分が少ない固めの食感の「ちりめん」が好まれる傾向がある。
(本文末尾のコラム「常陸乃国しらす」もご参照ください。) 

主な生産地

 兵庫県、和歌山県、愛知県、静岡県、愛媛県、茨城県 ほか

原料選択のポイント

 原料のシラスの大きさは体長1.5~ 4.5cm、体重は50~450mg程度である。茨城県におけるシラス漁の主体はカタクチイワシのシラスで、主に春季と秋季に漁獲され、それぞれ春シラス、秋シラスと呼ばれる。
 しらす干しの生産量は原料の漁獲量の影響を大きく受け、年により変動する。
 シラスは魚体が小さくぜい弱であり、鮮度低下が非常に速いため、漁網からカゴに移す時に砕氷と混ぜ合わせて撹拌し、冷却して保管される。

加工技術

 しらす干しは、鮮度低下が極めてはやいシラスを、加熱・乾燥することで保存可能にした加工品である。まず煮熟工程により、原料の体内酵素や付着している微生物の働きを止め、さらに、タンパク質の変性により脱水・乾燥しやすくする。また、煮熟は塩水で行われるため、塩分も添加される。次に、乾燥工程により魚体の水分を蒸発、減少させ、貯蔵性を持たせる。近年は、減塩志向の消費者が増加していることに伴い、塩分含量が少なく、水分が多めの製品が好まれる傾向にある。このような製品は保存性が悪いため、加工後すぐに凍結または冷蔵保管される。
 原料のシラスは、漁場により魚体サイズの揃い具合や混獲物の量が異なり、入手できる原料の量や質が絶えず変化するため、加工作業はその日の原料の量や質に合わせて調整している。

製造工程の概略

加工の実際

  • 原料 シラスは魚体がぜい弱で鮮度低下が非常にはやいため、漁獲直後に砕氷と混ぜて冷却され、水揚げ・セリの後、速やかに加工される。特に、魚体の大きさが揃っていて混獲物が少なく、鮮度が良いものは高値で取引される。(写真1、2)

写真1 市場に水揚げされたシラス (提供:茨城県水産試験場) 
写真2 原料のシラス (提供:茨城県水産試験場)

  • 水洗い ぬめり、砂、細かな夾雑物などを除去するため、流水中で洗う(写真3)

  • 煮熟 以前はステンレス製丸釜・角釜で煮ていたが、現在は多くの加工場で全自動煮熟釜を使って煮熟している(写真4)

写真3 洗浄槽への投入(提供:株式会社 安重水産)
写真4 自動煮熟釜で煮熟されるシラス 
(提供:株式会社 安重水産)

  • 水切り・放冷 煮熟後は魚体が身崩れしやすいので丁寧に取り扱い、速やかに放冷する。煮熟後、乾燥させず、すぐに冷却したものが釜揚げしらすとなる。(写真5,6)

写真5 干し網に載せられた煮熟後のシラス 
(提供:株式会社 安重水産)
写真6 放冷のために冷却設備へ移動
(提供:株式会社 安重水産)

  • 乾燥 天日や機械により乾燥をする。魚体サイズや製品の種類に合わせて乾燥条件を調整するが、天日干しの場合、均一に乾燥させるため、途中数回、製品の撹拌を行い、乾燥具合を確認しながら干し上げる。(写真7)

  • 冷却 乾燥時の熱を持ったままだと変色、品質低下が起こりやすいので速やかに冷却する。

  • 選別 ここまでの工程で除去できなかったシラスに混じる夾雑物を除去する。シラスを漁獲する網は目合いが小さいものを用いるため、漁獲の段階からシラスに混じる夾雑物が比較的多い。例えば、小型の甲殻類、軟体動物などの海産生物であるが、それらを目視または機械で取り除く。

  • 凍結保管・出荷 製品は凍結保管され、出荷される。

写真7 天日干し (提供:株式会社 安重水産) 
写真8 しらす干しの製品 (茨城県水産物開発普及協会 提供) 

自動シラス加工装置による加工

 以上がしらす干し製造工程であるが、現在は自動シラス加工装置が多くの加工場で導入されている。
 自動しらす加工装置は、洗浄槽にシラス原料を投入すると、乾燥まで自動で加工され、製品となる装置である。シラスのほかにもいかなご煮干し等の加工も行われる。 自動しらす加工装置の主な機械は次のとおりである。

①  自動洗浄機 
原料のシラスを水の入った洗浄槽に入れると水流により洗浄される。次に水切りコンベヤーで水切りと同時に夾雑物が選別除去され、シラスのみが煮熟釜に投入される。

②  自動煮熟釜
自動煮熟釜(写真9)では、熱湯循環方式により熱湯が一定方向に流れている水路中を、シラスが流れながら煮熟される。シラスはコンベヤーにより釜揚げされ、水切り後、送風扇により放冷される。

③  バンド型乾燥機
コンベヤー上に均一に散らされたシラスはコンベヤー上で乾燥機内を移動しながら温風にさらされて乾燥される。

 自動しらす加工装置の導入によるメリットは、品質の一定した製品が低コストで大量に生産できるようになったことである。製品の品質が天気に左右されず、均一なものが生産可能になり、作業の軽減によりコストが下がった。大量の原料水揚げにも対応可となった。

写真9 加工機器(自動煮熟釜) (提供:株式会社 安重水産)

加工に用いる機器等

 洗浄槽、煮熟釜、乾燥機、送風機、急速凍結機 等

品質管理のポイント

 釜揚げやしらす干しはそのまま食べるので、煮熟・乾燥後速やかに冷却し、それ以降の衛生的な取り扱いと低温での保管により生菌数の増加を抑えることが、重要なポイントである。

特徴的な成分

 しらす干しは骨を含む全魚体を加工しているため、タンパク質、カルシウムが多く含まれる。(出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)
(水産物に含まれる各種成分の効能については、「この図鑑の使い方」末尾の【参考情報】をご参照ください)

製品の形態

 業務用はしらす干しを薄いビニールで包み段ボール箱に入れて出荷される。小売り用は、100 ~200g程度をトレーに入れラップで包装したり、蓋付きのプラスチックトレー等に入れる。(写真10)

 写真10 しらす干し製品の包装済みパッケージ(提供:株式会社 安重水産)

包装および保管方法 

 製品の購入後は、冷蔵(10℃以下)で保管する。

調理方法および食べ方

 そのまま食べるか、大根おろしとあえて食べる。あえものの他にもサラダ、吸い物、炒めもの、天ぷらなどの揚げ物、卵焼きやおにぎり、チャーハン、ピザやパスタの具としてなど、いろいろな食べ方で多くの人に好まれている。

コラム

「常陸乃国しらす」 

 茨城県は、令和6年から県産シラスの新たなブランドとして「常陸乃国しらす」を立ち上げた。このブランドは、漁獲から加工されるまでの鮮度を突き詰めることをコンセプトとし、4つの基準を設けている。

基準 ①漁師の自慢の一網のシラスを、低温維持管理して水揚げすること。
   ②短時間の網入れで生きたまま漁獲する一艘曳きで獲れたシラスであること。
   ③プランクトンが豊富な親潮と黒潮がぶつかる好漁場の茨城県沖で獲れたシラスであること。
   ④最終製品の「し」字率が95%以上となるよう、迅速に加工されたシラスであること。

 特に、④は鮮度の良いシラスを煮熟した場合、シラスの身が「し」の字を描くように曲がることに注目して設定した基準である。県水産試験場の研究でも、漁獲から加工までの保冷温度と「し」字率の割合に相関関係が確認されており、科学的根拠に基づく基準と言える。
 常陸乃国しらす製造者の1社である株式会社安重水産によると「高い『し』字率は、『品質』の証。」とのことである。

(著者:茨城県水産試験場 鈴木 美紀、矢口 登希子)
(執筆協力:株式会社 安重水産)