高知県の焼き板かまぼことは
魚肉に塩を加えて練った肉糊を板に付け、蒸しと焼きを併用した方法で製造したかまぼこで、主に関西地方以西で生産されている。愛媛宇和島地方では焙焼だけで仕上げる「焼き抜き」、小田原地方では「蒸し」だけで加熱する蒸し板が生産されているが、「焼き板」は両者の加熱法を取り入れている。
板付きの形は地方によって異なるが、焼き板の場合、両端が高く、中央が低い形をしている。また、すり身を下にして焙焼するときに焙焼機に引っかけやすくするために板の両端1~2cmにはすり身を付けない。その部分を地方によっては「みみ」と呼び、機械で自動生産される板付きかまぼこにも「みみ」が残されている。また、熱が通りやすいように板に盛ったすり身の高さが他の地方と比べて低い特徴がある(写真1)。
味付けは高知県では沿岸魚を多く用い、魚のうま味を強く引き出すために砂糖の添加量は少ない。
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主な生産地
高知県
原料選択のポイント
かまぼこの原料として筆頭に挙げられるのはエソであり、特にマエソが重要である。ねり製品に用いられるエソには3種類あり、マエソ(全長30cm程度)が最も適しており、大型のワニエソ(60~70cm)も用いられる。もう一種のトカゲエソは無晒肉も晒肉も火戻りが強く誘発され、焼き板かまぼこ等の高級かまぼこには用いられない。エソ以外にはグチ類、コチ類やハモが、その他雑魚としてヒメコダイ、ワキヤハタ、クラカケトラギス等が混合される。
生産量の多い企業では生鮮原料だけで製造するのは価格面や量の確保等で難しいので、スケトウダラやミナミダラの冷凍すり身を混合する。その割合は企業あるいは製品によって異なる。
加工技術
水晒しによって血液等を除去するとともに製品のなめらかさを出すために水溶性タンパク質を除去する。魚肉に塩を加えることで筋原線維タンパク質を溶解し、加熱してゲル化させる。ゴリゴリした足は好まれないので、魚種によって坐りの温度帯や時間は異なる。食欲を増すような黄褐色になるように焙焼し、最終的に中心温度が75℃以上になるように蒸し上げて仕上げる。
製造工程の概略

加工の実際
- 原料 沿岸海域で釣りまたは底びき網で漁獲されたエソ、グチ、その他雑魚を使用する。死後硬直初期のものがよい。
- 調理採肉 内臓を完全に除去することがポイントである。ここで内臓を完全に除去しておかないと消化酵素によって加熱時に戻りに類似した現象が誘発され、弾力のないぼそぼその製品になる。調理後は冷水できれいに洗浄する。
- 水晒し 鮮度のよい魚の場合には魚肉に対し数倍の冷水を加え、一回晒すだけで十分である。
- 空ずり・塩ずり すり始める前に魚肉や器具を十分に冷やしておくことがポイント。品温が高くなるとこの工程中に坐りが起こり、かまぼこにならない(写真2)。
- 成形 つけ包丁を用い、塩すり身を板に付ける(写真3)。
- 焙焼 手作りの場合は焙焼機(写真4)で角度を変えながら焼き上げる。機械を使って焙焼する場合はトンネル型のヒーターの中をくぐらせて焼く。なお、焙焼前に、生け花で使う剣山のような道具で、予備加熱によってゲル化した塩すり身に小さな穴をあけることで焙焼中の膨れを防止する。焙焼と蒸しの順序はそれぞれの企業が見出した方法によっている。
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加工に用いる機器等
採肉機、擂潰機、蒸し器(せいろ)、焙焼機
品質管理のポイント
品質で重要なのは表面の焼き上がりが均一で、しなやかな弾力を有することである。また、加熱時の中心温度が目標の温度(75℃以上)に達していること、加熱終了後は低温(10℃以下)で保管することも重要である。
製品の形態と保管方法
店売りの場合は冷蔵ショーケースにフィルム包装し陳列して販売する。土産物店、デパート等で販売している製品は焙焼後、包装し、殺菌を兼ねて蒸し上げる。流通は10℃以下の要冷蔵で、賞味期限は1週間から10日間前後である。
調理方法および食べ方
冷蔵庫から出し、室温に戻してから食べる。冷たいまま食べると、焼きと蒸しを併用して加熱した焼き板独特のしなやかな弾力や風味が味わえない。また、でん粉含有量が少ないことから、でん粉の老化の影響は小さいので加熱調理せず、そのまま食べるのが通例である。
参考文献
・岡田 稔.「かまぼこの科学」 成山堂書店.2000.
・加藤 登 .魚肉ねり製品.「水産食品の加工と貯蔵」(小泉千秋他編)恒星社厚生閣.2005;201-243.
(著者:元高知県工業技術センター 野村 明 高知県工業技術センター 竹田 匠輝)
(取材協力:有限会社 松岡かまぼこ店)
