蒸し板かまぼことは
蒸し板かまぼことは、練り上げた調味すり身(すり身を塩ずりして副原料を混合したもの)を板上に山形に成形し、蒸気により加熱したものの総称であり、一般にかまぼこ(蒲鉾)と言えば、このタイプの製品を指すことが多い。かまぼこは、古い時代にはすり身を焙焼して作られていたが、江戸時代になってから蒸すという加熱方法が用いられるようになったと言われている。
(本文末尾のコラム 「みそ汁の具にかまぼこ?」もご参照ください。)
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(提供:全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会)
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(提供:全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会)
主な生産地
蒸し板かまぼこは、ほとんどの都道府県で生産されているが、代表的な製品には小田原かまぼこがある。東日本では、山高に板に盛り(250g程度)、表面が滑らかなもちっとした弾力のかまぼこが代表的であるが、西日本では山の小さい盛(150g程度)で表面にシワのある蒸しかまぼこが多くみられる。
原料選択のポイント
原料魚として、白身の魚を中心に50種類以上の魚種が使われている。生鮮魚では、グチ類、エソ類、オキギス、ムツ、キンメダイ、コウイカ類が多く使用されるほか、地元で漁獲されるその他の生鮮魚も用いられる。すり身としては、スケトウダラを代表にイトヨリダイ、キントキダイの冷凍すり身のほか、上記生鮮魚と同様の魚種の冷凍すり身が使われている。
加工技術
蒸し板かまぼこの代表として、以後小田原かまぼこを中心に記述する。
小田原かまぼこの加工技術の特徴は、一つに丁寧な魚体処理と徹底的な水晒しがある。小田原かまぼこはもともと相模湾で漁獲されるムツ、イサキ、オキギスやトラギスなどを原料としていたが、1920年代になって、かまぼこの需要拡大に伴って原料が不足するようになった。そこで小田原の蒲鉾組合は、当時東シナ海で以西底びき網により多く漁獲されていたシログチを鉄道輸送で入手し原料にしようとした。しかし、冷蔵技術が不十分なこの時代に長時間の輸送によって発生する魚の臭気を除去することが課題となり、水晒しが不可欠な技術として定着した。小田原の地下水が原料魚の水晒しに向いていたこともあって、今日の小田原かまぼこの技術的基盤が築かれた。冷蔵技術が発達した現在では、水晒しは臭気の除去よりも、かまぼこの弾力強化を目的として行われている。
製造工程の概略
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加工の実際
原料として生鮮魚を用いる場合は、丁寧に頭と内蔵を除去し、二枚または三枚おろしにする。 魚体処理した原料を魚肉採取機にかけて骨と肉を分離する。分離した魚肉を水晒しするが、小田原かまぼこの神髄である弾力を引き出すために、丁寧に徹底的といえるほど十分に行う。この際用いられる小田原の水はやや硬度の高い水でかまぼこの製造に最も適した水質であったことも、水晒し技術の発展を促した要因になっているといえる。
坐りは30~40℃の温度で短時間行い、小田原かまぼこの特徴であるつやのある表面のみずみずしさと、のど越しの良い弾力を与えている。加熱後の冷却水による冷却により、冷却後の表面のしわよりを防いでいる。
加工に用いる機器等
魚洗機、魚体処理機、魚肉採取機、脱水機、裏ごし機、擂潰機、成形機、蒸気釜、冷却器、包装機
特徴的な成分
蒸し板かまぼこの一般成分を表1に示した。タンパク質のほか、炭水化物を多く含んでいるが、これは冷凍すり身に添加されている糖類と副原料として加えられるでん粉に由来するものである。食塩相当量はナトリウムの含量から計算されるので、調味料由来のものも含まれている。

製品の形態
簡易包装で1本ずつ小売りされる。高級品では紅白2本1組で販売されている。
包装および保管方法
簡易包装された製品の賞味期限は10℃以下の保存で2週間程度である。
調理方法および食べ方
12~13mmの厚さに切ってわさび醤油で、いわゆる「板わさ」にすると弾力と風味が際立ち、最もおいしく食べられる。そのほか、雑煮や吸い物の具材としてもよい。チャーハンに入れてもおいしく食べられる。
コラム
「みそ汁の具にかまぼこ?」
江戸時代に和歌山県のとある藩の下級武士が江戸勤番を仰せつかって江戸に来た時の食生活を書いた文書の中にかまぼこが登場し、みそ汁の具材として使ったとある。現在では、かまぼこがみそ汁の具材とされることはほとんどないが、江戸時代からかまぼこがなじみ深い食べ物であったことがわかる。
(出典:青木直己.幕末単身赴任.「下級武士の食日記 増補版」筑摩書房.2017)
(著者:元全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会蒲鉾研究所 石内 幸典)
