ほや調味乾燥品とは
ホヤを調味液に浸漬後、乾燥した製品である。
ホヤは原索動物に分類され、脊椎動物と無脊椎動物の中間に属する動物であり、世界に1,500種ともいわれるが、国内で食用とされるのは、マボヤとアカホヤなどに限られ、安定した産業基盤として定着しているのは、養殖されているマボヤのみである。本種は、その独特の香臭から嗜好の大きく分かれる食品でもある。宮城県では、鮮度の良いホヤをむき身にし、調味液に漬けたり、ボイル加工後に乾燥をした多くの製品が生産されている。
主な生産地
宮城県、北海道、岩手県、青森県
生産の動向・消費の動向
全国のホヤ生産量は2000年以降は10,000t前後でほぼ安定していたが、東日本大震災で養殖施設が大きな被害を受け、2011年からの3年間は1,000t以下まで低下した。一方、ホヤの養殖生産工程は比較的単純であり、人工採苗の生産も容易であったことから、他の養殖生産物に先駆けてホヤ養殖の早期の復旧が図られた(図1)。
全国生産量のうち半数以上が宮城県で生産され、宮城県の地域特産物的位置付けにある。利用の多くは生食が主であるが、ボイル製品、塩辛等の調味加工品なども増加している。
マボヤについては、東日本大震災以前は主に韓国への輸出の比率も高かったが、震災後の韓国側の禁輸措置により、国内向けの需要開拓が活性化した。その結果、調味乾燥品や加圧加熱殺菌食品などの常温流通加工品を中心に加工品開発が進んだ。

原料選択のポイント
マボヤは、他の水産物と同様に鮮度低下が速く、時間の経過とともに、その香臭も強くなることから、水揚げ後短時間で処理する必要がある。
また、固着生物であることから、その品質は漁場環境の影響を受けやすい。このため、身入りや呈味にこだわって、産地を特定する加工業者も少なくない。
加工技術
ほや調味乾燥品は、調味液浸漬後、送風乾燥により、水分を減らし保存性を高めるとともに、調味で多くの人が食べやすい風味としたものである。
製造工程の概略

加工の実際
- 原料 マボヤ(写真1)の冷凍むき身を原料とする。
- 洗浄 夏期の水揚げとなることから、腸炎ビブリオ対策として滅菌海水による洗浄を行う。
- 調味 調整した調味液に浸漬する。
- 液切り・乾燥 十分な液切り後、送風乾燥機により70℃前後で乾燥を行うが、製品の仕様に合わせ、乾燥時間を適宜調整する。(写真2)
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- 放冷・あん蒸 水分を均質化するため、常温で一日程度あん蒸する。
- 細断・目視検査 包装容器に合わせて細い短冊状に細断しつつ、異物等を目視で除去する。(写真3)
- 計量・包装・出荷 計量・包装後、金属探知機による検品を行い、箱詰め、出荷する。(写真4)
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機能性成分
マボヤには、亜鉛、タウリン、グリコーゲン等の成分が多く含まれていることが知られている。近年、ハロサイアミン(抗ウィルス活性、抗菌性、抗酸化性のある生理活性物質)やプラズマローゲン(リン脂質の一種で認知機能改善効果があるとされる)が豊富に含まれることも明らかとされ、マボヤ乾燥粉末や抽出物が健康食品素材として販売されている。
(水産物に含まれる各種成分の効能については、「この図鑑の使い方」末尾の【参考情報】をご参照ください)
製品の形態、包装および保管包装
製品のほとんどは、個人消費向けとされている。以前はポリプロピレン等の包材に脱気包装するのみであったが、コロナ禍以降の巣ごもり需要の増加に対応し、ガスバリア性能の高い包材にアルコール揮発材(鮮度保持剤)を封入して保存性を高めた製品が増えている。
同類製品例
本製品は40年以上のロングセラーとなっているが、製造会社では、近年、ほや調味乾燥品のみではなく、カキやホタテなどといった水産物を使用した製品がシリーズとして販売されている(写真5,6)。
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参考文献
・公開特許公報 ハロイサイアミンおよびその製造法 特願 昭63-13183
・公開特許公報 抗炎症剤及びその製造方法 特願2007-12532
・宮澤陽夫.ほや(海鞘)プラズマローゲンによる認知症予防への取り組み,日本水産学会2009年75巻2号
(著者:宮城県水産技術総合センター 三浦 悟・菅原 幹太)
(協力:水月堂物産 株式会社)
