竹ちくわとは
竹ちくわとは、竹に魚肉すり身を巻きつけて焼くという、かまぼこの原型に近い製造方法で作られるねり製品である(写真1)。この製品の特徴は、ちくわ本来の風味に加えて竹の香りが感じられることである。竹の風味がうまく融合することで、独特のおいしさが楽しめる。
竹ちくわは、小松島の漁師が浜で新鮮な魚の身を青竹に巻きつけて食していたものとされているが、現在では徳島県を代表する伝統的なねり製品であり、県内の多くのかまぼこメーカーが製造している(写真2~4)。1960年頃からは機械化が進み、近代的な製造が始まった。1970年代まで、徳島と関西方面を結ぶ主要な交通手段が航路であり、その玄関口となる小松島港周辺では、焼きたての竹ちくわが売られていた。この竹ちくわは、港を利用する乗客の土産物として人気を集め、その名が広まった。
(本文末尾のコラム 「義経も推した!? 小松島の焼きちくわ」もご参照ください。)
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(提供:(有)谷ちくわ商店)
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(提供:(有)谷ちくわ商店)
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((有)谷ちくわ商店提供)
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(提供:(有)谷ちくわ商店)
主な生産地
徳島県徳島市、小松島市、阿南市
生産と消費の動向
製造開始当初は直販のみで販売されていたが、その後、輸送手段や保存技術の進歩により、県内の量販店を中心に販売網が拡大した。これにより、現在では四国や関西を中心に、県外にも広く流通するようになった。
鳴門海峡大橋の開通に伴い、主な移動手段が航路から陸路へと変わり、竹ちくわの販売場所も変化した。以前はフェリー乗り場で主に売られていたが、現在では高速道路のサービスエリアや道の駅など、移動途中で購入できる場所に販売場所がシフトしている。このような変化により、竹ちくわは観光客や地元の人々にとって、より手軽に購入できる商品となった。
生産量については、現在は横ばいの状態が続いており、大きな変動はないが、地域に根付いた特産品として年間約100tが製造されている。
原料選択のポイント
製造開始当初は近海で水揚げされるタチウオ、エソ、グチ、ハモ等々さまざまな魚種が主原料として用いられていた。近年では安定した品質と供給の確保を目的として、主にスケトウダラとグチの冷凍すり身を組み合わせて製造されるようになった。竹は青竹を利用しており、新鮮な竹の香りが魚肉すり身に移り、独特の風味を生みだしている。
加工技術
竹ちくわの加工技術において、塩ずり工程は非常に重要な役割を果たす。塩ずりでは、魚肉中の塩溶性タンパク質を十分に溶出させ、適度な粘りを引き出す。塩ずり中の肉糊の温度を低温に保つことで、製品の食感を安定させ、品質を維持することができる。
かまぼこの製造工程では肉糊を低温もしくは中温で長時間放置する坐りが行われることが多い。坐りによって、魚肉タンパク質が網目構造を形成し、強い弾力を生じる。しかし、竹ちくわでは一般的なかまぼこ製品よりも坐りの時間が短い。このため、加水量を少なくして、短い坐り時間でも弾力を増強する工夫が施されている。また、加水量が少ないので、魚本来のうま味が引き立ち、濃い味わいを生み出すことができる。
製造工程の概略

加工の実際
- 原料 スケトウダラ・グチの冷凍すり身が使用される。
- 塩ずり 魚肉には約2%の食塩を加え、サイレントカッターなどの擂潰機で塩ずりを行う(写真5)。この工程では、魚肉中の塩溶性タンパク質を十分に溶出させ、適度な粘りを引き出す。製品の安定性を確保するため、塩ずり中の肉糊の温度は低温に保ち、塩ずり時間は季節や原料に合わせて調整する。
- 副原料混合 でん粉に加えて、みりんやタイエキスなどの複合調味料を加える。
- 成形 調味すり身と青竹を竹ちくわ専用成形機に入れると、青竹に調味すり身が巻きつき、成形される(写真6~8)。
- 焼き(焙焼) 竹ちくわ専用焼き機のレーン上で回しながらガスバーナーで焼かれる。この工程では、竹ちくわに香ばしい焼き色がつき、風味が引き立てられる(写真9~12)。
- 冷却 扇風機などで粗熱を取り、その後冷蔵して中心温度を10℃以下に冷却する(写真13)。
- 包装 ポリ袋に袋詰めする。
- 検査 金属探知機および目視による外観検査を行い、異物混入や外観の不良がないか確認する。
- 出荷 主に冷蔵で出荷する。
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(提供:(有)谷ちくわ商店)
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(提供:(有)谷ちくわ商店)
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(提供:(有)谷ちくわ商店)
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(提供:(有)谷ちくわ商店)
加工に用いる機器等
擂潰機(サイレントカッターなど)、竹ちくわ専用成形機、竹ちくわ専用焼き機
品質管理のポイント
中心温度が90℃に上昇するまでしっかりと焼き、その後は速やかに冷却し、中心温度を10℃以下に保つことが重要である。特に、10~50℃の温度帯は生菌が増殖しやすいため、この温度帯を素早く通過するように極力短時間で冷却する。また、異物混入を防ぐために金属探知機を使用するとともに、目視による確認も徹底して行うことで、製品の安全性と品質を確保する。さらに、HACCPに基づき、記録を取りながら衛生管理を行い、「細菌をつけない」「細菌を増やさない」「細菌をやっつける」の3原則を徹底することで、製品の安全性を保っている。
製品の形態
土産物としては8本または10本入りの包装が主流であるが、スーパーなどでは3本入りの包装が多い。
包装および保管方法
ポリエチレン系の包材による簡易包装を行う。 土産物として販売される場合は、包装後に竹かごや箱に入れて、さらに包装が施されることがある。製品の保管は冷蔵で行い、賞味期限は7日間程度である。
調理方法および食べ方
竹を持って、生のまま食べる。竹がついていることで、手に取って食べることができるため、手軽さが魅力となっている。また、竹を持ちながら食べることで、竹の香りを感じることができ、ちくわの風味が一層引き立つ。
コラム
「義経も推した!? 小松島の焼きちくわ」
阿波小松島の焼きちくわは、源平屋島合戦の寿永年間、源義経の軍勢が小松島に上陸した際に食したとの伝説が残っている。小松島の漁夫が海岸で獲れたての小魚の身を練り合わせ、青竹に巻き付けて焼いていたところ、その香ばしい芳香に惹かれた源義経の軍勢が、そのひとつを賞味し、味と香りを称賛したと言われており、この逸話の伝わる徳島県では今もなお焼きちくわの素晴らしい味と伝統が受け継がれ、地元の特産品として愛され続けている。
(著者:徳島県立工業技術センター 田中 咲衣)
(協力:有限会社 谷ちくわ商店)
