目次
第3章 調味加工品 第1節 佃煮

まぐろ・かつお角煮

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保存方法

冷凍保存/冷蔵保存/常温保存

キーワード

佃煮/角煮/賽の目/ソフト角煮/乾燥包装角煮/メイラード反応/焙乾

備考

Maguro/katsuo-kakuni

角煮とは

 一般に角煮とは、マグロまたはカツオの煮熟肉を1~2cm角程度のさいの目状に裁断し、醤油、砂糖などの濃厚な調味液で煮熟した佃煮の一つをいう。生肉を賽の目状に裁断し、調味煮熟した“生炊き角煮”や生肉を練り固め裁断し、調味煮熟した“練り角煮”、角煮を乾燥し、一個ずつ個別包装した“乾燥包装角煮”もある。
 角煮は各企業独自の方法で製造されており、特に、調味液(たれ)に関しては秘伝といえるものである。ここでは角煮製法の一例を紹介する。
(本文末尾のコラム「角煮の由来」もご参照ください。)

生産と消費の動向

 現在、製品の種類では練り角煮の生産が最も多く、乾燥包装角煮においても練り角煮を乾燥し、個包装したものが主流となっている。
 過去と比較すると、嗜好の変化、健康志向の高まりなどから減塩、薄味の製品や軟らかい製品が好まれており、この傾向が定着している。
 2022年の統計によると、静岡県のまぐろ角煮の生産量(業者調べ)は798トン、かつお角煮は18トンとなっており、そのほとんどは焼津及びその周辺地域で製造されている。  

原料選択のポイント

 角煮には、主としてマグロ、カツオが用いられる。カツオは地元で水揚げされたものを、マグロは輸入物も原料としている。マグロは軟らかく仕上がるメバチが用いられ、キハダは硬くなるので使わない。マグロでは30~50kg、カツオでは7kg以上の魚体の大きなもので、それぞれ比較的脂肪の少ないものがよい。

加工技術

 角煮は醤油、砂糖、水あめなどから作られる濃厚な調味液で煮熟するので、調味料による脱水と浸透、煮熟による蒸発によって水分活性(Aw)が低下すること、また、煮熟による耐熱性細菌以外の細菌類が死滅することなどから、保存性はかなりよく、以前は保存食の一つであった。乾燥包装角煮は乾燥によって水分活性が低下するため、さらに保存性はよい。
 近年では煮沸やレトルトなどの殺菌工程により、薄味でも保存性が良いものが主流になっている。賞味期限は、角煮、乾燥包装角煮ともに約90日間となっているが、それより長い場合もある。
 製品の色調は調味液や魚肉の糖類とアミノ酸が加熱することにより、メイラード反応が進行し、褐色~黒褐色となりやすい。

製造工程の概略

加工の実際

 角煮

  • 原料 冷凍のカツオ、メバチが主体である。

  • 解凍 水槽で解凍を行う。

  • 生切り カツオは、魚体を四つ割りとする。マグロは、さらに、四つに切断する。

  • 煮熟 ブロック肉を沸騰水で約1時間、煮熟する。

  • 焙乾(燻煙) 煮熟したブロック肉はセイロに並べ、かつお節やなまり節などの製造に使われている手火山てびやま式焙乾装置(薪には堅木のカシが使われる)で約30分間くん煙をかける。これによって、表面の水分を除くとともに、くん煙臭を付加する。

  • 冷蔵 焙乾後放冷し、5℃で約3日間冷蔵する。これにより水分を均一にするとともに、煮熟肉を固め裁断を容易にする。

  • 裁断 煮熟肉を手切りまたは角煮用裁断機で約0.9~2.0cm角の賽の目状に裁断する。生炊き角煮では約2cm角に、乾燥包装角煮では約1.2cm角にすることが多い(写真1)

  • 調味煮熟 調味液(たれ)はそれぞれ各企業独自のものが作られているが、一般的には醤油、砂糖、水あめ、みりん、日本酒、アミノ酸及び核酸系調味料、生姜またはその汁などが使われる。ソルビット、ソルビン酸カリウム,酸化防止剤、甘味料(ステビア)などの食品添加物を用いた製品もあるが、無添加にこだわったものもある。調味液を沸騰させ約40分間煮熟するが、煮詰めないことが多い(写真2)。特に、乾燥包装角煮では乾燥しにくくなるので煮詰めないことが大切である。
    生炊き角煮では生肉を裁断した後、醤油、砂糖等で約40分間煮熟し、翌日二度目の調味煮熟を約60分間行う。

写真1 角煮用裁断機(提供:カクニンベンうさぎ屋食品)
写真2 調味煮熟装置 
(提供:カクニンベンうさぎ屋食品)

  • 冷却 扇風機等の風を当てて冷却する。

  • 包装 真空包装する。

  • 殺菌 高温高圧殺菌装置を使用してレトルト殺菌(120℃で6分間)を行う。

  • 検査 金属探知機で検査を行う。

  • 出荷 梱包して出荷する。

 乾燥包装角煮

  • 一次乾燥 熱風乾燥機を使用して60~70℃で、約6時間、乾燥する。

  • あん蒸  内部の水分を拡散作用を利用して表面に導くために一晩放置する。

  • 二次乾燥 熱風乾燥器を使用して60~70℃で、約1時間、乾燥する。

  • 個包装 乾燥後、振動式選別機で形の整ったものだけを選別し、自動ひねり包装機でキャンディー風に個別包装する。包材としてはアルミ箔とセロファンをラミネートしたものを使用している。

  • 包装 袋に詰めて、含気包装を行う。

  • 検査 金属探知機で検査を行う。

  • 出荷 梱包して出荷する。

加工に用いる機器等

 手火山式焙乾装置、冷蔵庫、角煮用裁断機(スライサー)、調味煮熟装置、
 自動ひねり包装機、高温高圧殺菌装置、金属探知機 等

品質管理のポイント

 新鮮な原料を選定し、製造過程では温度管理や衛生管理を徹底している。
 佃煮は保存期間の高い食品のため、水分活性やpH等で品質管理をしている。

安全衛生管理のポイント

 佃煮の製造は食品衛生法第55条、同施行令第35条の定める「そうざい製造(通常副食物として供される煮物(つくだ煮を含む。))」に該当するため、都道府県知事の許可が必要であり、建物の構造など施設基準が適用される。また、添加物は食品衛生法第12条及び第13条の規定に基づき定めた「食品・添加物等の規格基準」が適用される。

特徴的な成分

 まぐろ角煮、かつお角煮の栄養成分を、表1に示す。 まぐろ角煮、かつお角煮とも、醬油や砂糖等で煮込んでいるため、炭水化物が多い。

製品の形態・包装等

 市販用と業務用とに分かれるが、市販用は130~500g詰めで真空包装されるものが多い。箱詰めや他の佃煮との詰め合わせにしたものもある。業務用は1~2kg詰めされている。
 乾燥包装角煮は、市販用は80g詰め、業務用は500g詰めとされている。業務用は販売先でさらに小袋詰めや他の珍味類との詰め合わせにされ、市販される。

調理方法および食べ方

 一般にはそのままそうざい(副食物)として供されるが、おにぎりやお茶漬けにもよい。乾燥包装角煮はおつまみに適している(写真3)

写真3 角煮(提供:静岡県水産・海洋技術研究所)

コラム

「角煮の由来」

 角煮が開発されたのは、1931年のことで、当時、静岡県焼津に大量に水揚げされたカツオを処理する方法の一つとして開発されたとされている。原料にマグロが用いられるようになったのは1949年頃である。マグロはカツオに比べ製品が軟らかく仕上がる上、魚体が大きいことから作業効率がよく、生産は飛躍的に増大した。1968年頃には、マグロなどの生肉を練り固めた練り角煮(ソフト角煮など)が出回り、1971年には、簡便性を持たせた乾燥包装角煮が開発された。この製品は、消費者の嗜好とがマッチしたことや機械化などにより生産は爆発的に増え、当時のヒット商品の一つといえるものであった。現在は、一時ほどの生産量は見られないが、根強い需要がある。

(著者:静岡県水産・海洋技術研究所 隈部 千鶴、元静岡県水産・海洋技術研究所 長谷川 薫)