目次
第14章 生食製品 第1節 生食製品

かつおのたたき

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主原料

保存方法

冷凍保存/冷蔵保存

キーワード

一本釣り/藁焼き/ブライン凍結/アニサキス/アンセリン

備考

Katsuo-tataki

かつおのたたきとは

 かつおのたたきとは、カツオを3枚におろした半身を背と腹に切り分け、わらなどを燃やして表面だけを焼いて刺身のように切ったものに塩やタレを振ってたたき、味をなじませたもの。高知県の郷土料理で土佐造りとも呼ばれる。近年では冷凍商品の普及もあり、全国的に食べられている。
(本文末尾のコラム「土佐から全国へ かつおのたたき 今、むかし」についてもご参照ください)

主な生産地

 静岡県、高知県、鹿児島県、宮崎県 等

消費の動向

 冷凍商品の普及により贈答用や家庭用の通信販売が多くなっている。

原料選択のポイント

 高知県においてカツオは主に「ひき縄漁」と「一本釣り漁」写真1で漁獲されている。鮮度の良いもので製造するため、生原料を使用する際は日戻り(漁獲当日の)カツオ、冷凍原料を使用する際はB1(ブライン凍結1級品)のカツオ写真2を使用することが多い。カツオは1年中食べられているが、特に、春から初夏にかけての初カツオで作るたたきはさっぱりとした食味であり、また秋の戻り鰹と呼ばれる脂の乗ったカツオで作るたたきもそれぞれ美味とされる。 

写真1 一本釣りの様子 
(提供:明神水産㈱) 
写真2 ブライン凍結されたカツオ 
(提供:明神水産㈱)

加工技術

 カツオ表面をあぶる際に藁を使用することで炎が高温となり、短時間で加熱できると同時に、香ばしい香りが付与され、魚臭がマスクされる。また、皮をあぶることで皮が食べやすくなる上に、皮面にある脂を落とさずに食することができるため食味も良好である。生原料を用いた場合、表面を加熱したのち、内部まで熱が入らないようすぐに氷水で冷却する。

製造工程の概略

加工の実際

 かつおのたたきは加工品であるが、加熱は表面のみであり生食用の刺身商材と同等の温度管理が必要となっている。また冷凍で流通されるものがほとんどである。

  • 原料 鮮度の良いもので製造するため、生原料を使用する際は日戻りカツオに、冷凍原料を使用する際はB1(ブライン凍結1級品)のカツオ(写真2)を使用することが多い。

  • 調理(整形) 製品の形態に合わせて半身や節などに整形する(写真3)。冷凍原料は解凍せず凍結状態のままバンドソーにて切り分ける(写真4)

写真3 生原料の整形 
(撮影:阿部祐子)
写真4 冷凍原料のバンドソーによる整形 
(提供:明神水産㈱)  
  • 焙焼 手焼き写真5や焙焼機写真6にて表面を加熱し焼き目をつける。冷凍原料を使用する場合は凍結状態のまま表面のみを焙焼するため、内部は凍ったままであり、完全に解凍しないことで品質の劣化を防ぐことができる。また、藁を用いて焙焼したものを「わら焼きたたき」として販売している。

写真5 手焼きでの藁焼き (撮影:阿部祐子)
写真6 藁焼き焙焼機 (提供:明神水産㈱)   

  • 包装 生原料のものは焙焼後すぐに氷水に入れて冷却した後に、また冷凍原料では粗熱を取った後に、真空包装する。

  • 急速凍結 包装後ブライン凍結機などにより急速凍結する。完成品は-40℃以下で冷凍保管する。

  • 出荷 冷凍状態で出荷する。

加工に用いる機器等

 焙焼機(藁焼き台) 急速凍結機 真空包装機 金属探知機

品質管理のポイント

 鮮度の低下を防ぐため加熱後品温が上がりすぎないようにすることが重要である。そのため焙焼後の冷却を速やかに行っている。また冷凍原料の場合には完全に解凍せずに仕上げることで鮮度が保たれている。 

安全衛生管理のポイント

 製品は冷凍状態とすることでアニサキスなどの寄生虫の危害を防ぐことができる。また、異物混入防止に金属探知作業が必要である。

健康機能性成分

 カツオやマグロ類など表層回遊性の魚類の普通肉中にはアンセリンなどのイミダゾールジペプチドが多く含まれている。イミダゾールジペプチドはイミダゾール環を持つヒスチジンを構成成分とするジペプチドであり、抗疲労効果や生活習慣病改善効果が期待される成分である。
(水産物に含まれる各種成分の効能については、「この図鑑の使い方」末尾の【参考情報】をご参照ください)

製品の形態

 冷凍したものを真空包装する。(写真7)

調理方法および食べ方

 生のニンニクや薬味とともにポン酢醬油などのタレをつけて食することが多いが、タレのかわりに塩をつけて食することもある。写真8 

写真7 かつおのたたき (提供:明神水産㈱)
写真8 かつおのたたき (提供:(有)土佐佐賀産直出荷組合) 

参考文献

・上野友哉他.海洋性アンセリンの健康機能.日本食生活学会誌2014; 25:157-160
・受田浩之他.高知県の地域食材が有する機能性の解明とその検証.FFIジャーナル2017; 222:27-34
・宮川逸雄.「カツオのたたきのルーツを探る」 土電印刷高知営業所出版室.1993.
・総務省統計局統計調査部消費統計課局 1世帯当たり年間の品目別支出金額,購入数量及び平均価格  
 魚介類(https://www.stat.go.jp/data/kakei/rank/singleyear.html)

コラム

「土佐から全国へ かつおのたたき 今、むかし」

 かつおのたたきについて、最初の記録が確認できるのは江戸時代の文化・文政期(1804~1830年頃)のものである。高知県の郷土料理であるかつおのたたきの起源については諸説あるが、高知県西部の足摺岬や土佐清水市周辺で磯魚を焼き切り(表面をあぶってさしみにする料理法)にしたものを「塩だたき」と呼んでいたものがたたきの発祥と考えられている。
 和歌山県や鹿児島県などの他の地域でも魚をあぶって刺身にする食習慣があるなかで、塩やタレをふってたたくのは高知県のみでみられた。さらにカツオが自由に手に入るようになった前出の江戸時代には、あぶったカツオに塩やたれをたたきつけて食べる現在の形に近いかつおのたたきが出現したとされており、それ以降の高知県の祝宴料理の記録に出現するようになるなど、ハレの日のもてなし料理として定着してきた。
 カツオは高知県の県魚であり、高知市ではカツオの1世帯当たり年間購入額および年間購入量で1976(昭和51)年より常に全国1位となるほど食生活に欠かせない食材である。特にかつおのたたきは昔から今も変わらず高知県民に親しまれており、近年では全国的に広く食されている。

(著者:高知県工業技術センター 阿部 祐子・竹田 匠輝)