鮒味噌とは
「鮒味噌」とは、フナ(マブナ,ヘラブナ)と大豆を豆味噌(赤味噌)で長時間かけて煮詰めた「嘗味噌」の一種である。かつては岐阜県、愛知県、滋賀県等の冬の家庭料理であったが、川や池の埋立て、さらにはブラックバス等の外来魚による食害でフナが激減し、また手間暇がかかるため家庭ではほとんど作られなくなった。フナの姿を残した製品と、柔らかくしてほぐして味噌に混ぜ込んだ製品がある。また、鯉を用いた製品も一部で作られている。
主な生産地
岐阜県(海津市、養老町等)、愛知県、滋賀県 等
生産・消費の動向
フナの資源量が減少し、専門業者では養殖魚(マブナ,ヘラブナ)が用いられている。また、製造時期も11月から翌年4月と限定されるが、市場などへ納める専門業者のほか、川魚料理店等でも広く製造されている。
消費は大部分を地元で占めるが、近年では他県へ越した人からも毎冬注文があり、伝統食品として根強い需要がある。岐阜県海津郡、養老郡に年間10 t程度を製造する専門業者が2社ほどある。
原料選択のポイント
脂の乗った国産の寒ブナ(1月下旬~2月下旬)を用いた製品が最上品とされている。
使用する副原料
大豆(北海道などの国産品)、豆味噌(赤味噌)が用いられる。
加工技術
佃煮と同様、弱火で煮詰めることにより魚を柔らかくし、貯蔵性を付与したものであるが、大型のフナを用いるため長時間を要し、塩分も2%程度と低いため貯蔵性は高くない。一方、豆味噌(赤味噌)は東海地方で伝統的に生産されており、コクと渋味に加え、肉や魚の臭味を消す効果があるとされ、煮込み料理に適している。また、近年になり豆味噌にだけ特有に含まれるオルトジヒドロキシイソフラボン類が強い抗酸化能を持つことが明らかになり、フナや大豆に含まれる脂質の酸化劣化抑制に寄与していると考えられる。
製造工程の概略

加工の実際
国産の養殖フナ(マブナ,ヘラブナ)を用いたメーカーの製造例を示す。
- 原料 原料魚の寒ブナは、体長約20cmの大きさで、一釜に約20kg使用する(写真1)。
- 下処理 鱗、内臓等を丁寧に取り除き、よく洗う。下処理後、一旦冷凍保存するものもある。
- 素焼き 金串を打ち、皮が剥がれないように水分を取ってから両面をガスオーブンで素焼きにし、一晩放冷して身を締める(写真2)。
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(取材協力:株式会社かね善)
- 煮熟 大豆2.5kgを一晩吸水させておき、竹製のサナを敷いた鍋に入れる。その上に素焼きにしたフナを重ねて並べ、ザラメ糖を全体に塗して砂糖、豆味噌等を水で緩めたものを加える(写真3)。弱火で3日間かけて煮込むことで骨まで柔らかく、味がしっかりと浸み込む(写真4)。
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- 製品 製品の賞味期限は冷蔵で6日が目安である(写真5)。土産品として常温流通させるものは包材に入れて真空包装し、加熱殺菌(沸騰水中で50分間)を行う。
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加工に用いる機器等
ガスオーブン、煮釜、真空包装機 等
品質管理のポイント
貯蔵性が高くないため、作り置きをしない。また、夜間は火を止めるため、温暖な季節の製造は避ける。
製品の形態
発泡トレーにフナ1尾と煮豆が盛り付けられ、ラップで包装される(自家用品)。また、ビニールシートに包まれ、プラスチック容器に折詰めされたもの、或いはナイロン袋に真空包装され、加熱殺菌されたものが土産品として販売されている。
包装および保管方法
折詰め品と発泡トレー包装品は、冷蔵で流通される(賞味期限6日程度)。真空包装した加熱殺菌製品は、常温流通される(賞味期限180日)。
調理方法および食べ方
酒の肴、ご飯の菜としてそのまま賞味される。
(著者:岐阜県食品科学研究所 加島 隆洋)
