焼にぎすとは
魚釣りなどの対象魚として知られるシロギスを利用した焼き加工品ではなく、ニギスを素焼きにした製品をいう。焼きにぎすの歴史は定かではないが、帆船による手操網や機船底びき網が始められ、ニギスが漁獲されるようになった明治もしくは大正時代には存在していたと考えられる。昔は炭火の手焼きで作られ、現在は焙焼機で焼くようになったものの、昔ながらの製法で副原料も使わず、ニギスそのままの風味が味わえる製品である。
主な生産地
兵庫県但馬地域(香住)
生産の動向・消費の動向
ニギスが水揚げされる地域を見ても、焼き加工品があるのは、兵庫県日本海側の但馬地域(香住)のみであり、他の地域では主に鮮魚や乾燥製品として流通している。
香住の業者は年間45t程度の原料を用いて、焼きにぎすを加工している。近年の生産量は下降気味である。製品を地元のほか京阪神を中心に出荷している。

原料選択のポイント
ニギスは底びき網で漁獲され、日本海西部での漁獲は毎年9月から翌年の5月までとなっている。ニギスは身が柔らかく鮮度低下が速いため漁獲直後から原料の温度管理がとくに重要である。水揚げされたニギスはすぐに製品化するが、漁期以外の時期に加工するニギスは、船内で急速冷凍している。日本海西部海域で最もおいしい時期は、腹腔内脂肪が多い5月ないしは9~10月頃である。
一方、1~4月に漁獲されるニギスで胃内に餌のオキアミ類が多く入っている(「もの食い」などと呼ばれる)ものは、焼いたときに腹部が破れたり、風味が損なわれるため、あまり良い原料とされない。また、11~12月の原料も腹腔内脂肪が減少し、痩せているため好まれない。
焼き加工には漁獲サイズ(体長100~230㎜)すべてを利用し、身の引き締まった鮮度の良い原料選びが重要である。兵庫県で加工している焼きにぎすの原料は日本海西部海域で漁獲されたニギスを使用している。
加工技術
素焼きにすることで栄養成分を封じ込め、香ばしさを与える。加熱することでタンパク質の変性を起こし、食べやすくする。また、焼くことによって日持ちを良くするとともに、微生物危害を防ぐ。加工工程は単純で副原料を使用しないことから、良い製品を作るには、原料選びが重要なポイントになる。
製造工程の概略

加工の実際
- 原料 体長100~230㎜のニギスをすべて使用している(写真1)。
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- 洗浄 原料は船上で洗浄されているため、一般に改めて洗浄しない。泥などがついている場合のみ、塩水で洗浄する。
- 選別 船上で大まかに選別した原料を、串に刺すサイズ別に選別する。
- 串刺し 加熱による身崩れを防ぐため、原料の大きさに応じて1尾あたり3~4箇所に、手作業で竹串を3~5尾ずつまとめて刺す(写真2,3)。串を刺さず網の上に焼く場合もある。焼にぎす製品は内臓を除去しない。
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- 焙焼 焙焼機(遠赤外線ガスバーナー式)を用いて焼き網に載せて片面ずつ焼く(写真4,5,6)。焼く面を反転させるときは、いずれも手作業である。焼く時間は、両面合わせて約10分間である。微生物汚染を防ぐため、焼き工程管理(時間、火力等)が必要である。
- 送風冷却 扇風機などを用いて、室温で冷却する。
- パック詰め 串をつけたまま、用途に応じて浅い紙箱、木箱、発泡トレーに製品を入れる。発泡トレーに入れる場合のみ、串の先端を切りラップで包装する(写真7)。
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- 検査 金属探知機で異物等の最終確認をする。
- 梱包 紙箱、木箱、発泡トレーに入れる。
- 出荷 製品を外装梱包して出荷する。
加工に用いる機器等
焙焼機(遠赤外線ガスバーナー)、焼き網、金属探知機 等
品質管理のポイント
ニギスは鮮度低下が速いため、原料選びが重要である。焙焼の際には、魚の大きさを揃え均一に火が当たるように火加減に注意し、焼きすぎないようにする。頭や尻尾も焦がさないように工夫している。たまに、船の塗料や異物があり、ピンセットで取り除いている。
特徴的な成分
身は脂肪分が少なく、淡泊である。
製品の形態
浅い紙箱や木箱もしくは、発泡トレーに入れてラップで包装した状態で出荷している。
包装および保管方法
要冷蔵10℃以下。
調理方法および食べ方
焼きたての製品はそのまま、冷えた場合はレンジなどで再加熱して、好みに応じて醤油などをかけて食べる(写真8)。そのほか、鍋に焼にぎすとネギや焼き豆腐などを入れて、甘辛く味付け(酒、みりん、醤油など)して食べたり、炊き込みご飯(写真9)や、すまし汁にも利用できる。香住周辺では祭り用の昆布巻き芯材として用いられる。
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参考文献
・農林水産省大臣官房統計部 海面漁業生産統計調査「漁業・養殖業生産統計」(平成25年~令和4年)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500216&tstat=000001015174&cycle=7&year=20130&month=0&tclass1=000001015175&tclass2=000001068028
(著者:兵庫県立農林水産技術総合センター但馬水産技術センター 横田 智恵) (取材協力:浜貞商店)
