目次
第8章 塩辛類 第2節 その他塩辛

黒作り

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主生産地

保存方法

冷凍保存/冷蔵保存

キーワード

イカ墨/リゾチーム/タウリン

備考

Kurozukuri/伝統的加工品

黒作りとは

 黒作りはイカの塩辛の一種で、製造の際にイカの墨を加えたものである。真っ黒な外見のため、初めての人には馴染みがたいが、他の塩辛にはない独特の香りと味があり、富山県の食卓には欠かせない珍味である。1970年代頃までは各家庭で製造(手作り)していたが、最近では市販品を求めるようになっている。
 黒作りは、1990年代のイカ墨ブームによって売り上げが増加し、全国に知られるようになった。
 (本文末尾のコラム「イカ墨と黒作り」もご参照ください。)

主な生産地

 富山県

原料選択のポイント

 原料はイカの外套膜、イカ墨、食塩を用いる。外套膜は国内産のスルメイカ(写真1)を使用するが、現在ではアルゼンチンイレックスやニュージーランドスルメイカなども使用することがある。イカ墨も昔はスルメイカのものを使用していたが、現在ではモンゴウイカが主流である。しかし、肝臓だけはスルメイカのものを使用している。

加工技術

 黒作りは微生物や自己消化酵素の働きによってイカ肉を発酵させたもので、食塩によって腐敗に関与する微生物の増殖を抑制している。また、イカ墨中のリゾチームには細菌増殖抑制効果があるといわれており、イカ墨を添加することで保存性が向上する。

製造工程の概略

加工の実際

  • 原料 外套膜は国内産のスルメイカ(写真1)を使用する。アルゼンチンイレックスやニュージーランドスルメイカなども使用することがある。

  • 内臓など除去 内臓、軟骨、ひれなどを除去する(写真2)

  • 塩漬け  原料の重量の6~8%の塩を加え、1~2週間熟成させる。昔は塩濃度が15%前後であったが、現在は低塩化(6~8%)の傾向にある。

  • 細断 短冊状に細切りする(写真3)

  • 調合  昔はイカ肉に肝臓、墨、食塩を混ぜていたが、現在では肝臓、墨をそれぞれ別に塩漬けして保存したものをイカ肉に混ぜる方法になっている(写真4)

  • 熟成  昔は途中攪拌しながら1ヶ月程度熟成していたが、現在は2週間以内と短いものが多い。アルコールなどを加え保存性を向上させる場合もある。流通中も熟成が進むことを考慮して賞味期限を設定している。

加工に用いる機器等

 ロータリーカッター

品質管理のポイント

 製品の塩分濃度が高かった昔の製品は常温でも保存できたが、塩分濃度の低い現在では冷蔵保存する必要がある。

安全衛生管理のポイント

 加熱工程のない製品であるため、微生物による汚染には特に留意する必要がある。

健康機能性成分

 イカにはタウリンが多く含まれている。
(水産物に含まれる各種成分の効能については、「この図鑑の使い方」末尾の【参考情報】をご参照ください)

製品の形態

 一般的には袋詰め包装またはびん詰めで出荷される。

包装および保管方法

 一般的には袋詰め包装またはびん詰めにて冷蔵または冷凍保管する。

調理方法および食べ方

 酒の肴として、またご飯とともにそのまま食する。また、大根おろし、きざみゆず、七味唐辛子などを加えると風味が変わる。お茶漬けにして食べたりもする。その他、納豆、オクラ、ネギなどと混ぜて食べたり、茄でたパスタに和えて食べてもおいしい。
 昔、地元では、焼いた石の上に黒作りと漬物を乗せて焼いたものをご飯のおかずや酒のつまみとして食べていた。

写真5 黒作りの製品 (撮影:富山県農林水産総合技術センター食品研究所)

コラム

「イカ墨と黒作り」

 イカ墨は、イカが外敵から逃げる際に墨汁嚢から排出するもので、やや粘性のある黒い物質である。 
 黒作りは、いまから約360年前の寛文年間に滑川辺り(現滑川市)でイカを刻んで塩辛(切り込みという粗製の塩辛)を作り、冬期間の不漁の際の保存食にしたのがはじまりといわれている。その後、元禄時代にイカの胴身を細く切り、イカの墨を混ぜて「いかの墨作り」と名付けて販売してから、一般の人々にも知られるようになった。その後、藩主前田斉泰なりやす公に献上され、参勤交代の際将軍家への献上品にされ、将軍にその美味しさを称賛されたといわれている。
 なお、沖縄県でも黒作りに似た「すみイカ」というイカ加工品があり、遠く離れた地でも類似の加工品がみられるのは興味深い。

(著者:富山県農林水産総合技術センター食品研究所 鍋島 裕佳子)
(協力:有限会社 京吉)