目次
第1章 乾製品 第2節 塩干品

色もの塩干品

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保存方法

冷凍保存

キーワード

長崎俵物

備考

Iromono-enkanhin/伝統的加工品

色もの塩干品とは

 アカムツ、アマダイ、キダイ、イトヨリダイなどの色鮮やかな、いわゆる「色もの」魚種を原料とした干物のこと。色もの塩干品は長崎県の塩干品の特徴となっている。
 アカムツは喉の奥が黒いことから「のどぐろ」、アマダイは「ぐじ」、キダイは「れんこだい」や「連子」とも呼ばれ、水揚げ地で加工されることが多い。
(本文末のコラム「長崎俵物とは」もご参照ください。)

主な生産地

 アカムツは日本沿岸に広く分布し、北陸や山陰、九州で多く漁獲される。アマダイは本州中部以南に生息し、山口県や長崎県で多く漁獲される。キダイは本州中南部から東シナ海に分布し、長崎県、島根県、山口県で多く漁獲される。イトヨリダイは本州南部以南に生息し、長崎県、熊本県、福岡県、高知県、徳島県などで漁獲される。

消費の動向

 近年、消費者の減塩志向により製品中の塩分が低く、水分が多い製品が主流となり、常温ではなく、冷凍または冷蔵で流通されるようになった。

原料選択のポイント

 色もの塩干品は体表の色調が商品価値を大きく左右するため、鮮度が良く、色調が良好なものが求められている。加工向けはこれまでは以西底びき網漁で漁獲された「底びき物」が主体となってきたが、現在では長崎を代表する逸品として長崎俵物認定を受けた商品には近海産活〆キダイ、延縄や小型まき網で漁獲されたイトヨリダイを原料とする商品もある。

使用する副原料

 塩が主体であり、ミネラルをバランスよく含んだ塩など、こだわった塩が使われることが多い。色調を保持するために天然の抗酸化物質が使用されることもある。

加工技術

 塩干品の加工には「塩漬け」と「乾燥」工程がある。塩漬けにより塩味を付加し、乾燥によりうま味を濃縮させる。冷凍冷蔵技術が発達するまでは塩漬けと乾燥により水分活性を低下させ、常温保存が可能な保存食であった。

製造工程の概略

加工の実際

  • 原料 鮮度が良く、脂質の多いものが好まれるが、脂質は貯蔵中の品質劣化の要因になりやすいので注意が必要である。色もの塩干品の表皮に含まれる色素成分カロテノイドは脂質酸化の抗酸化剤として働き、酸化により退色する。

  • 前処理、開き 鱗、えら、内臓を除去して、腹又は背から開く、長崎県では「背開き」が多い。見栄え、販売先の意向、食べやすさ、製造コストなどを考慮して、鱗は付けたままとする場合もある。また、同様の理由で眼球を除去する業者もいる(写真1)

  • 洗浄 前処理した魚体は氷水中に浸し、ブラシ等で腎臓(背わた)、汚物、腹腔の黒皮などを丁寧に除く。

  • 塩漬け 塩干品に多く用いられる方法として、塩水中に浸漬する「立塩法」と原料に直接塩を散布する「撒塩法」がある。塩水の濃度や浸漬時間は、原料魚の鮮度状態、体の大きさ、脂肪含量の多少などで異なる。品温が上がらないよう、冷蔵庫中又は氷などで冷却しながら漬け込む(図1)

  • 真水洗い 品温が上がらないよう、冷水中で振り動かして洗う(振り洗い)程度で魚体表面の余分な塩分を洗い落とす。 

  • 乾燥 乾燥温度や時間は、魚体の大きさ,脂肪含量,乾燥方法などで異なるが、 20℃前後の冷風で1.5~2時間程度乾燥する場合が多い。製品の水分は食感や風味に影響する(写真2)

  • 計量、包装 計量後、包装(写真3)し、金属探知機等を用いた検品を行う。凍結後に検品等を行う場合もある。

  • 凍結、梱包、保管 急速凍結は-30℃程度で行い、梱包する(写真4)。保管は-25~-30℃程度で行われている。

写真1 開き工程(提供:㈱大畑食品)
写真2 乾燥工程(提供:㈱大畑食品)
写真3 包装工程(提供:㈱大畑食品)
写真4 梱包工程(提供:㈱大畑食品)

加工に用いる機器等

 割裁器、冷却水装置、冷風乾燥機、(真空)包装機、急速凍結機、冷凍保管庫など

品質管理のポイント

 原料や漬け込み液の状況により塩の入り込み方が異なるため、職人の経験に勘と経験に基づいて微調整されることが多い。

表1 立塩法の製造ポイント(長崎県総合水産試験場「色もの」塩干品の品質基準(2003))

安全衛生管理のポイント

 作業前後に作業場、作業台、まな板、包丁(割裁器)などを洗浄し、清潔に保つ必要がある。前処理した魚体を洗浄や真水洗いの際に、溜め水を使用する場合や塩漬水を繰り返して使用する場合は、容器内の水の品質管理にも留意する必要がある。

製品の形態

 製品の形態としては、量販店向けは1枚から数枚をポリエチレン・ナイロンフィルム包装とするか、そのままダンボールや発泡スチロールの薄箱に適宜つめて梱包する。真空包装する場合は、ピンホール防止のため、厚めの袋を使用する。セロファンで包む場合もある。

包装および保管方法

 色もの塩干品の場合、真空包装や不活性ガスの注入、脱酸素剤の封入により退色を抑制する。

調理方法および食べ方

 皮の方を先に焼き、皮目に焼き色がついたら返し、身を焼く。焼き色がついたら火を弱め、中まで火を通す。アカムツは一年を通じて脂の乗りが良く「白身のトロ」とも呼ばれ、贈答品として人気がある。アマダイの身は白く、軟らかい。キダイは祝いの席によく使われる。

コラム

「長崎俵物とは」

 十七世紀末の元禄時代、長崎港は国内外の物流拠点として栄え、海産物を“俵”に詰めて「長崎俵物」と称して出荷し、好評を博した。とくに干したアワビ、ナマコ、フカヒレは「俵物三品」として珍重された。これにちなんで復活させた「長崎俵物」は、厳格な品質基準を充たしたもののみを認定する現代の長崎を代表する水産加工品のことである。
 「長崎俵物」として認定されている色もの塩干品には「のどぐろ開き」(写真5)、「いとより鯛開き」(写真6)、「蓮子鯛開き」(写真7)がある(令和6年末現在)。
写真5 「長崎俵物」認定商品【のどぐろ開き】
(提供:長崎県水産加工振興協会) 
写真6 「長崎俵物」認定商品【いとより鯛開き】
(提供:長崎県水産加工振興協会)
写真7 「長崎俵物」認定商品【蓮子鯛開き】
(提供:長崎県水産加工振興協会)

参考文献

・長崎県総合水産試験場水産加工開発指導センター.「色もの」塩干品の品質基準(水産加工技術マニュアル)2003.

(著者:長崎県総合水産試験場  久保 久美子)
(取材協力:株式会社 大畑食品)